接待ゲーム
6
勇者はおにいちゃん、ヒロインはマリに名前を変えて再スタートした。
ストーリー上、隣村にお使いに行く事になった。
「行かない!!」
「え…………じゃあ、最初の村で何すんの?」
「みんなで、ティーパーティーする。」
不思議の国の何とかですか?そんなの不可能だよ!これ、戦うゲームだから!
とりあえず、村中の住人の話を聞きにまわった。同じような話を延々と音読させられるという地獄……。
村中を回るなら、部屋の中を探してアイテムでも探そう。そう思って引き出しを開けたり、壺を割っていると……。
「お兄ちゃん、これ、何してるの?」
「家に入って、アイテムがないか調べてる。」
「あー!!」
それを見た母さんが突然叫んだ。
「マリちゃん、他の人の家に入って、勝手にタンスや扉開けちゃダメだからね?壺壊したり、そんな悪い事絶対しちゃダメだからね?」
母さんは猛烈に妹に言い聞かせた。
「うん。マリはそんな事しないよ?」
「お兄ちゃん!ダメ!これ、コンプラアウト!これからは他人の家のアイテム探しはNGで!」
コンプラアウトって……コンプライアンスの使い方間違ってない?
教育上よろしくないという事で、他人の家のアイテム物色はNGになった。ダンジョンはOK。城はギリギリセーフ?アウト?
妹との接待ゲームは、独自ルールができた。その1、妹の主張は絶対。その2、モラルに反する行為はしない。その3、基本、全部音読。
森で初めて敵に遭遇した。一番最弱のモンスターだ。
「どうする?戦う?」
「お友達になる。」
これ、お友達になるゲームじゃないです……。
「じゃ、ボールでゲットする。」
「それゲームが違うから。」
とりあえず、戦うを選ぼうとすると、マリが呟いた。
「やっつけちゃうの?可哀想……。」
「いや、一応これもモンスターだから。敵だから。」
少しビジュアルが可愛くて、戦えないらしい。
戦う許可が全然降りない。いや、ポケットのモンスターだって戦うじゃん!!戦ってなんぼじゃん!!
初めての戦闘は、とりあえず逃げた。とにかく逃げた。仕方がない……。戦闘は本格的に武器を手に入れてからでもいいか。
と、思っていても、さすがに遭遇率が高くなって来た。
「お兄ちゃん、モンスターいじめたら可哀想だよ!」
「いじめてないよ!むしろこっちがいじめられそうになってるよ!」
何故!?何故僕がモンスター虐待してるみたいな感じで責められる?
この、ルールその2、モラル厳守がなかなか難しい事に気がついた。そもそも、敵と戦って平和を取り戻すゲームに、平和的解決を求めちゃいけない。
お使いを終えて、自分の村に戻ると、魔物に村が焼かれていた。という語りと共に、主人公の父親が倒れていた。
「私の代わりにどうかモンスターを倒してくれ……ぐはぁ!」
「え…………お父さんどうなっちゃうの?」
確か、後々出て来たっけ?ここで死んだっけ?どうしよう……覚えてない……。
「お父さんをこのままにして行けないよ!」
確かに……!!モラル的には、ここは父親を病院に連れて行く……?ってそんな台詞ないよ!!ない!!どうすればいい……?
え~!普通に家出て来ちゃったよ!戻った所で父親は同じ台詞しか出てこないし……。
この危機をどう乗り切ればいいの?
「お兄ちゃん、早く!早くお父さんを病院に連れて行ってあげてよ!」
そうだ!!人を呼ぶふりをしよう!!僕は、無駄に村人に話かけた。妹は字が読めない。どう読んでも僕の言葉でしか判断していない。
「どうか父を助けてください!モンスターにやられて家で倒れています!」
「おお!それは大変だ!すぐに医者を呼ぼう!」
「父をお願いします!僕はモンスターを退治しに行きます!」
どの台詞も、実際にはない台詞だ。実際は『モンスターがでて困る~!』的な、どうでもいい台詞に勝手に当てはめた。これで納得だろう?
「これでお父さんも安心だね!」
妹はホッと一安心していた。なんか…………なんか…………
何とも言えない達成感!!
そんな安息の時間もつかの間……
武器も手に入れ、とうとう本格的にモンスターと戦う事になった。
「怖いよ!死んじゃうよ~!」
死なないって!開始早々死なないって!!え?それどっち?どっちが死ぬから怖がってんの?
戦闘が始まると、マリはギャーギャー言い出した。
「うるさいな~!お兄ちゃん何とかして!」
「無理だよ!戦わないと先進まないし!逃げられないし!」
だから嫌だったんだよ~!妹とゲームなんて~!