これからもよろしく
40
学園祭の数日後、大西君に校舎裏側に呼び出された。まるで告白するみたいな、ベタな場所……。
ここで告白されるんじゃないかという淡い期待が湧いてきて、自分で自分を諫めた。そんな訳ないよね。笑顔で良かったなって言われたし。
きっと、女じゃなくて、男が好きとかいうカミングアウトとか、田辺君と幸せに~とか言われるんだ……。田辺君は、もう断った。
「あの、田辺君……」
「あの、田辺……」
お互いに、同時に話し出してしまった。
「そっちから。」
「うんん、そっちから、どうぞ。」
「じゃあ…………フラれる覚悟で言うけど…………」
はぁ?!フラれるってどうゆう事!?
「ちよ、ちょっと待って?フラレる覚悟って何?」
「そっちこそ待て。俺はまだ何も言ってない。」
「え?あ、ごめん。」
大西君はまだ自分の番だと言わんばかりに私が動揺するのを抑えた。
そう言ったクセに、独り言のような事を言い出した。
「やっぱり……こんな事言うべきじゃないかもしれない。もし佐藤が血迷って、選択ミスしでかしたら俺のせいだ!」
「選択ミス?」
「だって、もし田辺じゃなくて…………俺を選んだら選択ミスだろ?」
何それ!!
「違うよ!今度こそ、正解だよ!ちゃんと、正解にたどり着いたもん!!私、大西君がいい!大西君が好き!!」
「いやいや、佐藤よく考えろ。ルックス性格、学力、運動能力、どれを取っても俺は人並みだ。田辺ほどのスペックは無い!!」
「大西君は、私がミスしなきゃいいと思ってる?それが一番大事?」
なんか……なんか腹立つ!!大西君の態度に何だか腹が立った!!だったらなんでここに呼び出したの?なんで私に期待させるの?
「私が、その選択ミスをすればいいとは思わない?少しも?」
どうして田辺君より、自分を選べって言わないの?
「正直…………ミス…………すればいいと思ってる。」
「じゃあ、このミスは大西君のせいだね。この選択ミスは私のせいじゃない。良かった。」
「俺が……そのミス…………できる限りフォローする。」
大西君は改めて、手を差し出して言った。
「だから、俺と付き合って欲しい。」
私は、その手を握って言った。
「喜んで。」
嬉しい!嬉しい!!何だか、大西君の顔を見たら笑えた。お互いに何故か顔を見合せて笑った。
その時の大西君の笑顔は、この前の笑顔とは違う気がした。
「あれ?私、好きって聞いてない。ねぇ、大西君!」
「廉。もう、廉って呼べよ。俺も佐藤の事、栞って呼ぶから。」
「待って?ごまかしてない?」
それからも、大西君に笑顔でごまかされ続けた。
「ずるい!私は言ったのに!!」
「また今度。」
そう言って、大西君は中庭の方に歩いて行った。私は後ろについて歩いた。
「また今度っていつ?」
「いや、今はマジで無理!!」
「どうして!?」
そして振り返ると、大西君が校舎裏に向かって大きな声で言った。
「隠れてるのはわかってんだからな!!」
その後すぐに、カシャッっと脚立に何かが当たる音がした。
「にゃ~お!」
「猫か~!…………ってなるか!!」
すると、曲がり角から水野さんと、大森君と、稲葉さんと、梶原君が出て来た。梶原君まで……。
「バレたら仕方がない!私達、猫忍にゃ、ニャニャン!!」
そして、何故か三人でポーズを取った。
「え?あ、俺は?」
梶原君が困っていた。
「何だよそれ!!」
「今、幼児に大人気の猫忍者ニャニャンだよ?知らない?」
大森君が詳細を教えてくれた。
「立派な忍ニャになったニャンとニャオの兄弟が敵をやっつける子供番組だよ?」
「知らねーよ!!猫の三姉妹の怪盗とか、猫の地縛霊とか、猫型ロボットしか知らねーよ!」
それ、確かに猫だけど……。
「廉~!ちゃんと好きって言いなよ~!」
「いや、言うよ言うけども、何でお前らの前で言わなきゃいけねーんだよ!」
「あ、ギャラリー足りない?何なら全校集会の前にやる?」
水野さん、そんなに人前で言わせたいの?言われるこっちも恥ずかしいんだけど……。
「うるせ~な!言うときは言うよ!佐藤が望むなら屋上からだって叫んでやるよ!あ、本当に望んだりしないでください!お願いします!」
大西君は私に拝んでいた。
何だか…………まだまだ波乱は続きそう。それでも…………
だから嫌だった……。
なんて言わせないでね。これからもよろしく、廉。




