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誰のため


39


「いいのか?あの二人を二人きりにして。」

廉は移動最中、何度も何度も里梨先生と隼人の方を振り返った。


「うるさいな!こうするのが隼人のためなんだから仕方がないでしょ?」

「隼人のため……?俺、その言葉、うわべだけじゃなくて、本心で梨理から聞いたのは初めてかも。」

廉はそう言って休憩スペースのベンチに座り込んだ。


「お前、本当に隼人が好きだったんだな……。」

はぁ?今さら何言ってんの?

「いつも隼人の事が好きと言っときながら、梨理は結局いつも自分の事が一番だった。多分、梨理はただ隼人の興味を引きたいだけなんだろうって思ってた。」

それは、そうだけど…………


「必死で邪魔して、里梨先生と隼人を出会わせないようにしてたけど……それって結局自分のためだけだろ?」

なんであんたにまでそんな事言われなきゃなんないの?里梨凜にも言われた。


さっき、隼人と廉が来る前の事…………


「知らないふりって言うのは…………大森君に対して不誠実な気がしてきちゃって。大森君のためを考えたら…………やっぱりちゃんとふってあげた方がいいと思うの。」

じゃあ……何?私が貴方の追い求めていた。里梨凜ですって言うつもり?


「約束、破る事になってごめんなさい。でも、黙ってるのが大森君のためだって思ってたけど、本当は自分が楽だからだって気がついたの。水野さんも、そうだよね?」

そうだよ?だからって、隼人の事を本当に考えているのは誰なのか……そんな事考えてさせないでよ。


そんな事を思い出していると、廉が廊下を歩きながら、背伸びをして言った。

「なんか、三人仲良く、揃いもそろって三人とも失恋とはな~!」

三人とも?私と隼人はわかる。廉は…………?

「いや~田辺が佐藤に告るとは思わなかった~!」


人の事散々言いやがって…………自分は何、守りに入ってんの?チキッてんの?チキッてんのか?え?

「はぁ~!?お前はバカか?さっさと栞に告れ!!」

「おいおい、佐藤はあの田辺に告られたんだぞ?」

「だから何?」


自分より田辺の方がふさわしいとか思って言い訳か?

「わざわざフラレるために告るバカがいるか?」

いるんだよ!これが!!今あんたの目の前にいるんだよ!!悪かったね!!


「そもそも、佐藤は田辺が好きだったんだから、佐藤が田辺を振って俺を選ぶ訳がないだろ?それこそ選択ミスだ!」

廉を選んだら、選択ミス…………?私は逆だと思ってた。田辺の方が選択ミスだよ。


「だからって、自分の気持ちも伝えないで、栞の気持ちも聞かないで諦めるの?」

戦いもしないで尻尾巻いて逃げる方が、あり得ない!

「それって、栞のためとか言っといて、本当は自分が傷つくのが怖いだけじゃん。」


そこへ、肩を落とした隼人が通りかかった。

「あ、隼人!どうだった?」

そんなの聞かなくても一目瞭然だよね。


「多分……これでゲームオーバーだ。」

「バッカじゃないの?」

せっかく…………私が我慢して、隼人にチャンス作ったのに……。


「一度や二度と相手にされなかったぐらい何?もっと根性見せなさいよ!そうゆう所がムカつくの!!…………好きだけど、ムカつく!!」

「ごめん、梨理。ありがとう。」


だから嫌だったのに……。


ごめんとか、ありがとうとか……隼人からそんな当たり前の言葉が欲しかった訳じゃない。

私は、もっと…………もっともっと特別な言葉が欲しかったのに……。


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