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なんでだろう?


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なんでだろう……。


なんでだろ~?なんでだろ~?なんでだ?なんでだろ~?


少し波乱の、学園祭の書道パフォーマンスが終わった。私と大西君はそのまま筆とバケツを洗いに行った。そこへ、田辺君がやって来た。


「佐藤さん、ちょっといいかな?」

「いいぞ。こっちやっとく。」

大西君がそう言うと、田辺君に手を引かれて水道から離れた。


「あ、まずは、佐藤さんパフォーマンスお疲れ様。さっき僕の事探してくれてたよね?もしかして、これ、誘おうとしてくれた?」

「え?…………あ、うん……。」

結局、見つけたけど、田辺君を誘おうとは思わなかった。


「あの、もし、このパフォーマンスの文字って…………もし、もしだねど、僕に向けられてたら……嬉しいな。」

え…………?


そのつもりだったんだけど…………私は少し大西君の方を見た。大西君はガシガシ乱暴に筆を洗っていた。


「僕、前からずっと佐藤さんの事が好きだったんだ。」

「ええっ!!」

嘘でしょ!?こんな事ってある?

「いつも、同じ電車で佐藤さんの事見てた。だから、この前駅で子供の帽子が落ちた時、思いきって傘借りたんだ!」

『奇跡は作り出し起こすもの』田辺君のその言葉を思い出した。


自分から行動して、自分で勝ち取る。それは、田辺君なりの考え方なのかもしれない。選ぶのが苦手な私には考えられない。

「もし、よかったら、付き合ってくれるかな?」


もし、ここで選択する事を放棄したら、当然yes。


本当に……yesでいいの?本当に……田辺君と付き合う?


「あ、返事は今じゃなくてもいいよ。選ぶのが苦手なんだよね。ゆっくり考えてもらってかまわないよ。」

「うん…………私、そろそろ戻るね。」

田辺君にそう言って、水道の所に戻った。


「ごめん大西君、私こっち洗うね。」

私は大西君の洗っていたバケツを奪って洗った。

「もう、それ洗った。」

大西君は水道を止めた。


ふと、大西君の顔を見たら、笑顔だった。笑顔でこう言った。

「佐藤、うまくいって良かったな!」


私、何がっかりしてるんだろう?心のどこかで、大西君が不快に思ってくれるんじゃないかって…………どこかで、そう期待してた。


大西君は……全然平気そう。その笑顔は、私が田辺君と付き合っても、何も思わないって事だよね?


なんで…………?なんで…………こんなに、胸が締め付けられるんだろう?


「じゃ、俺、筆とバケツ干して来るわ。佐藤は先に戻ってろよ。」

「…………。」

私はそのまま、水道の前に取り残された。


なんで?なんでだろ~?なんでだろ~?あれ?なんか、そんなリズムが頭に流れて来た。こんな時なのに!!


気がつくと、活動教室まで、なんでだろう?を歌っていた。

「なんでだろ~?なんでだろ~?なんでだなんでだろ~?」

「栞?どうした?」

活動教室には、沙紀と、水野さんがいた。


「なんでだろ~?なんでだろ~?好きだった人に告白されたのに、全然嬉しくないのはなんでだろ~?」

「栞どうしちゃったの?」

「それを大西君に見られて、ショックなのなんでだろ~?」

二人は私を見て驚愕していた。いや、一番驚いてるのは、自分自身。


「なんでだろ~?なんでだろ~?なぜがなんでだろ~?」

「栞、落ち着け?一旦落ち着こう。」

「え?なんでだろう?はダメ?ダメなの?ダメなの……なんでだろ~?」

「性懲りもないな!ダメって言うか、そんなに混乱してると全然笑えないから!」


私は、あまりにもショック過ぎて混乱してたんだ。やっと我に帰った。


「あれ?沙紀、元サヤに戻った?」

「戻ってないから!!」

「あれ?水野さん大森君と付き合ってるよね?」

「付き合ってないから!それ多分願望だから!酔っぱらってんの?」


これはきっと…………私が田辺君を選んだ選択ミス。


だから嫌だったの!ミス選択ミス、あんたが嫌い!!


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