見せ泣き
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うわ~ん!バカバカバカ!自分のバカ!!『友達でいて欲しい。』そう言われる事ぐらいわかってた。
それなのに…………何焦って告白なんかしてんの!?
「バカやろぉ~!!」
「えぇっ!」
「バカバカバカバカ~!!」
私はそう叫びながら、自動販売機の近くのベンチに座った。
いつの間にか、後ろの栞が柱の影から引き気味でこっちを見ているのに気がついた。
「あ、これ、隼人の事バカバカ言ってる訳じゃないからね?」
「え?」
「今はまだフラれるってわかってた。なのに、焦って告った私がバカだった!!」
栞は少し、首を傾げて言った。
「まだ?って…………?」
「隼人には、彼女っていうカテゴリーがないの。だから、隼人がその気になるのを待って……」
栞は柱の影から出て、言った。
「待って?そのカテゴリーって、いつできて、大森君は、いつその気になるの?」
それは…………栞が、意外と痛い所をついてくる。
「あの、水野さんは大森君のどこを好きになったの?」
それって、こんなに隼人にこだわる意味がわからないって事?だったらちゃんと教えてあげよう。
「隼人は優しいの。その優しさに裏がないし、見返りも求めない。嘘。見返りを求めてないんじゃなくて、ただ私が求められてない。」
私は隼人にとって、昔から一緒にいて、妹や姉みたいな存在。それ以上でもないし、それ以下でもない。
それでも、それ以上に想って欲しくて…………
「水野さんは凄いね。」
「え?バカにしてる?」
「違うよ!そうじゃないの。私なんか、誰が好きなのかよくわからなくなっちゃって…………そうゆう、一途なのって羨ましい。」
一途…………?
「え?栞は廉じゃないの?」
「え?大西君じゃないよ?」
「え?廉じゃないの?」
「え……だから大西君じゃないって……。」
ヤバい!!また無限ループするところだった!!
「え?マジなの?マジで田辺なの?」
栞は私の隣に座って説明した。
「この前、あ、展示物を貼った時にね、大森君に言われたの。人を好きになるのに、奇跡1つあれば十分だって。私それ聞いて、その奇跡を信じてみようかなって思ったの。」
奇跡を信じるって何?私には理解できないんだけど?
人を好きになるって、相手のいい所に気づいたり、共感できる所があったり、だからもっと一緒にいたいと思ったりするんじゃないの?
そして、相手に好きになってもらえるように、好かれる努力したり、想いを伝えたり、そうゆうんじゃないの?
栞のその……空想の世界?ファンタジー?逆にそっちに引いてる自分がいる。
だって、中学の時に思い知った。いくらピュアな夢見る女の子でいたとしても、現状は何も変わらない。肉食だと言われても、自分から行動しなければどうにもならなかった。
「田辺に告ってダメだったら?それでも、告る?」
「…………うん、まぁ、ダメで元々。最初から付き合いたいなんて思ってないよ。ただ、想いを伝えたいだけ。」
「そっか…………じゃあ、私も、想いを伝えられただけ良しとするか。」
そう私が言うと、栞が少し驚いた。
「水野さんって強いんだね。もう泣いてない。」
「見せ泣きだからね。」
「見せ泣き……?え?それってつまり…………泣き真似?だよね?」
私が少し笑うと、栞も笑った。
「泣き真似じゃないよ。実際泣いてるから。ただ、見せようと思っては泣いてるから、見せ泣き。女子なら当然このテクニックは持ってるよね~?」
「あははははは!それ、持ってても実際やるかどうかは別だよ~!」
だから嫌だったんだよね……。
栞に慰められて、前向きになって、また隼人を追ってしまう。心のどこかで、いつか隼人が…………の、いつかはこのままずっと来ない。少し、そう気がつき始めたのに……。




