泣き顔
34
『友達としてじゃなくて、男として!恋愛対象として好きって事!!』
梨理に、告白された。
でも、僕の答えはすぐに出た。
「ごめん…………。僕……」
「やっぱり、里梨凜じゃなきゃダメなの?!私じゃダメ?! 」
ここは、ダメと言っていいかどうか迷った。梨理じゃダメな理由って何だろう?
「別にダメとかじゃないんだけど…………」
「じゃ、付き合ってよ。」
「いや、それは……」
「それは嫌?」
ここでも、嫌と言っていいかどうか迷った。梨理が嫌な理由って何だろう?
「嫌とかじゃないんだけど…………」
「じゃ、付き合ってよ。」
「いや、それは……」
無限ループになりそうだ。
僕は勇者じゃない。
ただの、押しに弱い奴。流されやすい奴。
そんな僕に、助けてくれるのは、いつだって廉だった。廉が後ろから追いかけて来てくれていた。
「梨理、もういいだろ。隼人は断ってるだろ?いい加減にしろ。」
「廉は黙ってて!!黙らなきゃ私、みんなにバラす!大西先生と親子だってバラしてやるんだから!」
「やってみろ!」
でも…………廉はバラされたくないんじゃ……。
そこに、佐藤さんと稲葉さんが帰ろうとして通りかかった。
「え?今の聞いてた?」
梨理が、二人の顔を見て訊いた。
「あ、うん……。」
「マジか……。」
廉は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
すると、佐藤さんは廉の前にしゃがみ込んで言った。
「あの、えっと、ごめんね大西君。私達薄々気づいてたの。でも、大西君は触れて欲しくないのかな~?って思って……」
「え!?」
さらに、稲原さんも続けた。
「学年のほとんどが気づいてるんじゃない?大西先生と大西が親子だって。だって何となく似てるし。大西の触れてくれるなオーラで、みんないじれないだけじゃん?」
「えぇっ!?俺の苦悩は何だったんだ?」
みんな薄々気づいてたんだ……。わかってて言わなかっただけみたい。結局、廉の心配は無駄だったみたいだ。
「そう思うと、今までわかってていじられてたのか?うわ~!なんか恥ずい~!!俺痛~い!!」
「まぁ、大西先生にははぐらかされるし、正確な確証は無かったし、みんなもどうしていいかわからないんじゃないかな?」
落ち込む廉を、佐藤さんがなだめていた。
「梨理、大森の話、ちゃんと聞いた方がいいよ。大森はどうしたいの?」
そこで、稲葉さんが僕に訊いてきた。
「え?僕?僕は…………」
「梨理の事、どう思ってるの?この先どうなりたいの?」
「梨理は…………友達だよ。これからも、友達でいて欲しい……。」
これで、梨理は納得してくれるのかな?僕は梨理の方を見た。梨理は…………泣いていた。
あの梨理が……珍しい。僕はその時初めて、梨理の泣いている所を見たのかもしれない。電話越しではあったけど…………転んでも、女子に無視されても、何をしても泣かなかった梨理が…………
「わかった……。」
梨理は、震えた声でそう言って去って行った。
「梨理…………」
「隼人、お前は追うな。」
僕が梨理を追おうとすると、廉に止められた。
「私、行って来る。」
佐藤さんが、梨理を追いかけて行った。
だから嫌だったんだ…………。
僕のせいで、誰かが泣くのは嫌だ。僕のせいじゃなくても、誰かが泣くのは嫌だ。誰の泣き顔も見たくなかった。梨理がそんなに想ってくれてるなんて思わなかった。
梨理の泣き顔を見て、リンの泣き顔を思い出した。
「そういえばあの時、リンも泣いてた。その時、僕はまだ小学生で……何もできなくて…………だから僕は…………」
だから……僕は…………リンじゃなきゃダメだったんだ。




