バレー部
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こんなキツイ部活入るんじゃなかった……。本当の目的は、一昨年卒業した先輩の情報収集。ただそれだけ。
バレー部員は今日も容赦なく、キレっキレのアタックを打ちまくる。受ける方の身にもなってよ……。
そんな速い球、無理無理無理!!涙は出ないけど、だって女の子だもん!!
「梨理!!あんた1年間やってて、まだボールにビビってるの!?」
「ビビるよ!怖いもんは怖いもん!!」
バチン!と音がすると、すぐに殺人的な速さでボールが飛んで来る。それを避けると…………
「コラー!!梨理!!」
すぐに怒られる。
「いやいや、経験者と一緒にしてもらっちゃ困るよ~!」
「あんた、1年からバレー部でしょ!?1年間経験者!!真面目にやれよ!!」
だって、情報収集が終わったら正直、バレー部にいる意味なんか無いもん!キツイし痛いし怖いし。みんなガチだし……。
「あ、沙紀!」
私は、去年怪我でバレー部を辞めた友達の沙紀を見つけて、体育館の外に呼びかけた。私が練習を抜けて外に出て行くと、沙紀はすぐに言った。
「梨理~こっち来なくていいから!練習!練習!」
沙紀には私の考えている事がお見通しらしい。練習を抜けられる口実があるのに、使わない手は無いでしょ?
「足……大丈夫?」
「軽い運動くらいはね。もう大丈夫みたい。」
足のどこがどう悪いのか、詳しく聞いてはいないけど……沙紀はこれ以上、バレーは続けられないらしい。
「沙紀はさ、他のどっかの部活とか入るの?」
沙紀の今後について大して興味は無かったけど、サボりついでに聞いてみた。
「大西先生に誘われたから、書道部に入ろうかなって思ってるんだ。」
「書道部……。」
沙紀のイメージとあまりにかけ離れすぎて、思わずキョトンとしてしまった。
「やっぱり、イメージと合わない?よね?」
「…………いや?新規開拓も必要じゃない?」
そう言うしかなかった。
誰よりも真剣にバレーボールをやっていた沙紀が辞めて、誰よりもやる気の無い私が残った。
「梨理はさ、まだバレーボールの楽しさがわからないのかもしれない。でも……続けてれば、少しはわかる時が来るよ!これからも練習、頑張ってね!」
バレーボールに未練があるのに、私にそう言えるその神経がわからない。
私には、バレーボールの楽しさも沙紀の気持ちも、正直まだわかりそうにない。
だから嫌だったんだ。部活なんて、バレー部なんて……