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ガチ説教?


29


だから嫌だったんだよ!!付き合ってるふりなんて!!


何で俺が巻き込まれなきゃいけないんだよ!


3日前までは…………


「わぁ~!袴姿、カッコいいね!!」

佐藤にそう言われて、少し照れ臭くなった。学園祭まで残り1週間、その日は衣装合わせをした。白い着物に黒い袴を履けば、何だかそれなりに、それっぽく見えた。


「大西君、袴姿似合うね!いいよ!」

「そ、そうか?佐藤も……似合ってると思う。うん……まぁ、女子にカッコいいって言っていいか、わかんねーけど…………」

本当は、いつもと違う佐藤の姿に少し動揺した。でも、それ以上は何も言えなかった。


それは…………この人がいるから。


「廉~!佐藤さん!いいじゃん!!いいじゃん!!二人とも似合ってる~!」

うるせ~ババア!!これぞ、親が教師の特権と言わんばかりに、ババアは写真を撮りまくっていた。


「佐藤さんも一緒に、ほら二人ももっとくっついて!」

ババアは無理やり俺達を引き寄せて、二人の間を詰めた。悪いな佐藤……うちのババアが……。

「いいね~!あははははは!!」

やめろババア!!パー子か!!

「廉~!顔!しかめっ面やめなさい!!まぁ、いつまでも佐藤さんとくっついていたいのはわかるけど~」

「うるせ~な!!」

「あははははは!」


佐藤は笑っていた。笑っていたけど…………ほぼ、ぶっつけ本番みたいな本番に、少し不安そうだった。

「段取り全部覚えられるかな?」

「俺もまだ完全には覚えられてはない。」

「それに、天気予報……」


こうゆう時、ババアの能天気な一言が、意外と助かる。

「大丈夫!あと1週間あるし、天気予報は雨だけど、廉は昔から晴れ男だから!」

「昔から?」

「あ、いや、それに、ほら、佐藤の作ったゴルゴてるてる坊主、あれがいるから大丈夫だろ~!」

こんのババア~!!バレるような事言うな!!


なんて、ヒヤヒヤしながらも平和にやっていたのに…………


そこに、梶原が血相を変えてやって来た。梶原は入り口に立って言った。

「大西!!沙紀の事で話がある。」

「え?は?廉、佐藤さんじゃないの?」

何故かババアが混乱していた。いやいや、違うから!色々違うから!


「はぁ?あ、いや、その話はまた今度、今は…………」

今ババアを構ってる場合じゃないんだよ。

「大西、お前、誤魔化すつもりか!?」

梶原は俺の肩を掴んできた。お前、既に頭に血が上ってないか?


「いや、お前少し落ち着けよ。」

「何やってるの?」

このタイミングで、稲葉がやって来た。

「梶原、止めて。大西はあんたには関係ないでしょ?」

「あ~!!あの、そろそろ部活始まるから、今日の所は、ね?」


そう言って、ババアが止めて、その場は何とかやり過ごした。

「私、今日は帰ります。」

稲葉はそう言って、その日は帰って行った。


稲葉が教室を出て行くと、俺はため息をついて言った。

「だから嫌だったんだよ。付き合ってるふりなんて。」

「だったら…………大西君がはっきり嫌だって断ればいい事でしょ?」

それは…………確かにそうだ。けど、佐藤にそう言われるとは思わなかった。


「それなのに、だから嫌だったなんて、他人のせいにして後悔して…………大西君からそんな言葉聞きたくなかった。」

意外だった…………。え?何?ガチ説教?もしかして佐藤、怒ってる?

「あ、悪いな。佐藤にも迷惑かけて……」

「別に。私、着替えて来る。」

そう言って、佐藤は活動教室を出て行った。


あれから…………何だか佐藤とも気まずい。正直、他人の修羅場に参加して、傍観してる場合じゃないんだよ。


「聞いてるのか?大西?」

「え?あ、聞いてなかった。悪い。お前らの痴話喧嘩に興味無いんだよ。めんどくさいから、さっさと元鞘に収まれよ。」


窓から、佐藤と隼人が渡り廊下で展示物を貼っているのが見えた。


だからこの二人と教室に残るのは嫌だったんだよ。こんな事なら、さっさとあっちを手伝いに向こうへ行けば良かった。


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