ガチ説教?
廉
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だから嫌だったんだよ!!付き合ってるふりなんて!!
何で俺が巻き込まれなきゃいけないんだよ!
3日前までは…………
「わぁ~!袴姿、カッコいいね!!」
佐藤にそう言われて、少し照れ臭くなった。学園祭まで残り1週間、その日は衣装合わせをした。白い着物に黒い袴を履けば、何だかそれなりに、それっぽく見えた。
「大西君、袴姿似合うね!いいよ!」
「そ、そうか?佐藤も……似合ってると思う。うん……まぁ、女子にカッコいいって言っていいか、わかんねーけど…………」
本当は、いつもと違う佐藤の姿に少し動揺した。でも、それ以上は何も言えなかった。
それは…………この人がいるから。
「廉~!佐藤さん!いいじゃん!!いいじゃん!!二人とも似合ってる~!」
うるせ~ババア!!これぞ、親が教師の特権と言わんばかりに、ババアは写真を撮りまくっていた。
「佐藤さんも一緒に、ほら二人ももっとくっついて!」
ババアは無理やり俺達を引き寄せて、二人の間を詰めた。悪いな佐藤……うちのババアが……。
「いいね~!あははははは!!」
やめろババア!!パー子か!!
「廉~!顔!しかめっ面やめなさい!!まぁ、いつまでも佐藤さんとくっついていたいのはわかるけど~」
「うるせ~な!!」
「あははははは!」
佐藤は笑っていた。笑っていたけど…………ほぼ、ぶっつけ本番みたいな本番に、少し不安そうだった。
「段取り全部覚えられるかな?」
「俺もまだ完全には覚えられてはない。」
「それに、天気予報……」
こうゆう時、ババアの能天気な一言が、意外と助かる。
「大丈夫!あと1週間あるし、天気予報は雨だけど、廉は昔から晴れ男だから!」
「昔から?」
「あ、いや、それに、ほら、佐藤の作ったゴルゴてるてる坊主、あれがいるから大丈夫だろ~!」
こんのババア~!!バレるような事言うな!!
なんて、ヒヤヒヤしながらも平和にやっていたのに…………
そこに、梶原が血相を変えてやって来た。梶原は入り口に立って言った。
「大西!!沙紀の事で話がある。」
「え?は?廉、佐藤さんじゃないの?」
何故かババアが混乱していた。いやいや、違うから!色々違うから!
「はぁ?あ、いや、その話はまた今度、今は…………」
今ババアを構ってる場合じゃないんだよ。
「大西、お前、誤魔化すつもりか!?」
梶原は俺の肩を掴んできた。お前、既に頭に血が上ってないか?
「いや、お前少し落ち着けよ。」
「何やってるの?」
このタイミングで、稲葉がやって来た。
「梶原、止めて。大西はあんたには関係ないでしょ?」
「あ~!!あの、そろそろ部活始まるから、今日の所は、ね?」
そう言って、ババアが止めて、その場は何とかやり過ごした。
「私、今日は帰ります。」
稲葉はそう言って、その日は帰って行った。
稲葉が教室を出て行くと、俺はため息をついて言った。
「だから嫌だったんだよ。付き合ってるふりなんて。」
「だったら…………大西君がはっきり嫌だって断ればいい事でしょ?」
それは…………確かにそうだ。けど、佐藤にそう言われるとは思わなかった。
「それなのに、だから嫌だったなんて、他人のせいにして後悔して…………大西君からそんな言葉聞きたくなかった。」
意外だった…………。え?何?ガチ説教?もしかして佐藤、怒ってる?
「あ、悪いな。佐藤にも迷惑かけて……」
「別に。私、着替えて来る。」
そう言って、佐藤は活動教室を出て行った。
あれから…………何だか佐藤とも気まずい。正直、他人の修羅場に参加して、傍観してる場合じゃないんだよ。
「聞いてるのか?大西?」
「え?あ、聞いてなかった。悪い。お前らの痴話喧嘩に興味無いんだよ。めんどくさいから、さっさと元鞘に収まれよ。」
窓から、佐藤と隼人が渡り廊下で展示物を貼っているのが見えた。
だからこの二人と教室に残るのは嫌だったんだよ。こんな事なら、さっさとあっちを手伝いに向こうへ行けば良かった。




