誰がやる?
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たかが文字書くだけなのに…………
文字書くだけなのに…………何でこんなに決まらないんだ?!
「筆でこうとこう書いて…………」
「沙紀、それなんて読むの?」
「これ?丸棒?」
え?マル暴?稲葉は半紙に筆で、丸の中に二本のたて線のある絵を書いた。
「なんだか、これ土俵みたいだね。」
隼人がそう言うと、稲葉は立ち上がった。
「正解!!土俵を書いて、相撲取るの!」
「それ、もはや相撲!!」
それ、書道パフォーマンスじゃなくて、ほぼ相撲だろ!?
「それ、誰がやるんだ?」
みんながこっちを見た。
「え?俺?何で相撲?」
稲葉はまだまだ続けた。
「じゃあ、リュウグウノツカイの魚拓!!」
「どっからリュウグウノツカイ手に入れるんだよ?」
それでも稲葉は諦めない。さすが元バレー部、体育会系の根性だ。それがウザイ!
「じゃあ、人拓!!人でやればいいんだよ!」
「それ……誰がやるの?」
梨理がそう言うと、みんながこっちを見た。
「何で俺なんだよ!!」
そんなに体張らなきゃダメ?ダメなのか?いつから俺、若手芸人のようなキャラになった?
今度は佐藤が意見を出した。
「じゃ、マル秘とかは?」
「それ、大きな紙に大々的に書く必要あるのかな?」
隼人の言う事が正解。隠したいなら小さく書け。いや、人に見せる物に書くな!
「じゃ、マル大?」
「それ大丸?……デパートの宣伝?」
「じゃ……丸……丸……」
佐藤、どうしても丸を書きたいんだな……。
「じゃ大…………」
今度は丸の方を諦めたな。
「大好き?とかは?」
大好き?紙にでかでかと?
「告白?!誰の?!」
「みんな?みんなに?もし、自分が言えなくても、これ見てくださいって言えば好きって伝わるよね?」
まぁ、伝えるという意味ではある意味潔いか。
書道パフォーマンスで告白……!?
「それ、いいね!!好きな人に伝える文字!!」
「え?それ決まり?そもそもそれ、誰が書くんだ?」
みんなはこっちを見た。
「だから何で俺!?」
好きな人いないのに!!
「そうゆうのは、好きな人がいる奴がやれよ!!」
みんなはこっちを見た。
「いやいや、俺いないから!!」
「緊張しないから逆に、いない人がやった方がいいんじゃない?」
みんなはこっちを見た。
「結局俺かよ!!」
どうやらどう転んでも、こいつらは俺にやらせたいらしい。
「こうゆうの、女子とかがデカイ筆持ってやるのがいいんじゃねーの?」
「じゃあ、男子は大西、女子は梨理が……」
「私パス!」
え?俺がやらないという選択肢は無いの?
「私は膝が心配だし……残るは……」
「ええっ!私!?」
「いいんじゃん!佐藤さん、字上手いし!」
いやいや、梨理お前佐藤に押し付けてねーか?
「わかった!その代わり…………みんな、ちゃんと想いを伝えてね?」
「え…………?」
「私と、大西君で書くから、他の人はちゃんと、好きな人に伝えてね!」
佐藤の一言に三人は言葉を濁した。
「え……あ、うん……。」
「それは…………いや……」
「うん…………まぁ…………」
だから嫌だったんだよ…………こいつらみんな、こじらせてる奴ばっかで。
佐藤は…………?佐藤は書道パフォーマンスで、田辺に想いを伝えるんだろうか?少しだけ、それが気になった。




