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シンプルに


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大西君は、少し苦手。元々男子は苦手だけど、第一印象が最悪だった。第一印象が怖いと感じてしまったからか、大西君と二人きりは少し緊張する。


それでも、今日の放課後、田辺君に一緒に相談に行ってくれるらしい。

「とりあえず、企画書と体育館の空いてる時間訊く事……できるよな?」

「うん。」

大西君の話を聞いて、私は大きくうなずいた。ちゃんと上手く話できるかどうか心配だけど……。


大西君は、頼りになるのかならないのか、ちょっとわからない。

「俺、こうゆう時、アシストとかどうやればいいかわかんね~!」

「…………。」

しばらく二人で黙ってしまった。気まず……


「あの、田辺君…………」

「そうだ、田辺…………」

二人、同時に話始めた。


「あ、お先に……」

「田辺って佐藤のクラスだっけ?放課後、俺がC組行くまで田辺ひき止めておいてくれ。」

「うん、できるだけやってみる。」


田辺君って、大西君とサッカー部で一緒だったんだよね?そう訊こうと思ったけど、訊けなかった。


「あの、水野さんって…………」

「あと、梨理が…………」

また、同時だった。

「あ、先に……」

「今度はそっち。」


「じゃあ、水野さんって……大森君の事……」

「やっぱりわかるよな?」

「あの、大森君へのガードが半端ないって言うか……」

私が大森君と話していると、水野さんの目が、不動明王のようで…………大森君の事を好きになったら消すよ?という目をしていた。


「梨理が最近急に忙しそうにしてる理由ってわかる?」

「うんん。倒れるまで一緒にいたけど、聞いて無い。わざと忙しくしてるとは言ってたけど……どうしたのかな?失恋でもしたのかな?」

部活で、稲葉さんが、里梨先生の名前を出した時、大森君と水野さんの空気が少し変わった気がした。


「意外と佐藤ってボケッとしてるようで、色々考えてるよな。」

「え?そうかな?もし仮に、色々考えたとしても、選ぶのはいつも……ミスばっかり。」

「それって…………選択肢が多すぎるからじゃないか?色々考え過ぎて、答えまでたどり着かないんじゃねーの?もっとシンプルに考えろよ。」


シンプルに?


「シンプルって言うか…………フィジカルに?」

「えっと…………フィジカルって?」

「肉体的。頭じゃなくて、体で直感的に考えろって事。」


そういえば…………大西君にはこう言われて、頭の中がパニックになった。

『佐藤って……いつも迷ってんのに、文字書く時は迷わないんだな。』

それからしばらく、何をやっても迷った。自分が今まで、何をどうやっていたのか頭で考え過ぎて、何も行動に起こせなかった。


「怖がってないで、足踏み入れてみろよ。意外と強気で行けば、勢いで押し切れる事もあるぞ?」


そう言って、田辺君を押し切ろうとしたけど…………ダメだった。


「ごめん、体育館はバンドやダンスでいっぱいなんだ。」

「そこを何とか!!」

「どこかのグループが途中で止めない限り、もう空きが無いんだ。しかも、時間内でパフォーマンス終わる?最大20分だよ?」

最大20分…………セッティングから撤収まで、もう少し時間欲しいかも……。


結局、田辺君を前にして、私は何も話せなかった。大西君が田辺君と交渉してくれた。


どうしてもと二人で頼み込んだけど…………時間になったら、田辺君は『もう少し時間に都合のつく場所を探した方がいい。』と言って、実行委員会の会議に行ってしまった。


「ごめん……私が言い出さなければ……」

また…………失敗だった。そもそも、私が今さらこんな事言い出したから……。


「は?何で謝るんだ?提案したのは佐藤だけど、やるって決めたのは俺達だ。俺はまだ諦めて無い。どこか別の場所、探すぞ?」


やっぱり…………大西君は、頼りになるのかならないのかわからない。


わからないけど…………大西君といると、だから嫌だった…………とは言わなくて良さそう。


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