飽きた
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とうとう妹が飽きた。そろそろ魔王を倒すための武器も揃って来た所で、妹のマリが飽きた。
「いつも同じでつまんな~い!」
「じゃ、やめよっか?」
「やだ!!」
つまんない。でもやめないって何!?やめりゃ良くない!?
それを見ていた母さんが言った。
「何とかしてよ~!隼人~!」
「無理だよ!」
僕、ドラ◯もんじゃないよ!それ、ホント無茶振り!!
「本当はマリ自身が楽しむ方法を考えるべきなんだろうけど、まだ小さいから。隼人がマンネリ化を工夫して解消してやってよ。」
そんな事言われても……。
「攻撃最中は全裸で逆立ちとか、変顔で息止めるとか」
「やだよ!それ無理だよ!普通にゲームやらせてよ!」
母さんの解消法はリスクが高過ぎるよ。それじゃゲームどころじゃ無くなるし。
「幼稚園は毎日楽しいのに……。」
「それはさ、先生工夫してくれたり、マリの楽しいものがいっぱいあるからだろ?このゲームには無いなら止めればいいんじゃないの?」
「お兄ちゃんは毎日楽しい?」
突然、マリにそう聞かれて、考えた。
忘れようとしてるのに、リンと毎日会う。それは辛いけど…………
「楽しいよ。今、学園祭に向けて、今準備してるんだ。」
すると、母さんに詳細を訊かれた。
「隼人のクラスは学園祭何やるの?」
「クラスは着ぐるみカフェ。書道部はパフォーマンスしようって話になったんだ。」
母さんとマリは首を傾げて言った。
「パフォーマンスって?」
「パフーマスって?」
「おっきな紙に、おっきな筆で文字を書く、書道パフォーマンスだよ。」
マリはともかく、母さん見た事無い?僕も最初から最後までしっかり見た事は無いけど……。
「お姫様は出て来る?」
「出て来ない。」
「じゃ、猫は?」
「多分出て来ない。」
「忍者は?」
「出て来ない。」
「ふーん…………。」
ああっ!!マリの興味が一気に失せた!
「じゃあ、ゲームの方がきっと面白いね。」
マリ…………そんな事言うなよ。すると、母さんまでこんな事を言い出した。
「パフォーマンスって面白いの?書道って地味じゃない?静か~に黙って書いてる姿、身内以外が見て何が楽しいの?」
「いやいや、静かじゃないし!見たらきっと楽しいよ。」
「ホント?!マリ、パフーマン見たい!」
何だか…………こうなったら、マリのために絶対成功させたい!!
と、思っていたのに…………
「できない!?」
次の日学校へ行くと、廊下で佐藤さんに呼び止められて、申し訳なさそうにそうに許可が降りなかった事を伝えた。
「そうなの……。体育館イベントいっぱいで、使えなさそうなんだって。」
「そうなんだ…………」
「ごめんなさい!私が今さらパフォーマンスやろうなんて言ったから……」
僕があからさまに落ち込んでいると、佐藤さんも落ち込んだ。
「…………。」
「おはよう。二人どうした?暗い顔して。」
そこに、廉が来た。
「体育館使えないんだって。」
「ああ、その事か。別の場所探すしかないだろ。」
「別の場所?」
佐藤さんと僕で思わずハモった。
そっか…………ダメだってわかったら方法を変えればいいんだ。どんどん合うものを探せばいい。
僕は今までリンの事ばっかりだったけど、他にも大事なものはある。今は目の前にあるものを大事にしよう。
「隼人、おはよう!」
「おはよう、梨理。」




