すんのか~い!
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先週の地獄のような空気が一転、今日の書道部は和やかな雰囲気で活動出来た。
「出来た~!」
「ちょっと廉!いや、みんな?!」
先週と違うのは……何だろう?大西君?大西君がいるからかな?
「家内安全、一攫千金、恋愛成就……。みんな…………半紙は絵馬じゃないのよ?」
大西先生が呆れ気味で、みんなの字を見て言った。
5月の学園祭に向けて、書道部として何か展示をという相談をしながら、習字をしていた。
「安産祈願って一体誰のよ?」
「あ、それ私のです!」
意外にも、稲葉さんが手を挙げた。
「え?!稲葉さん子供……?!」
「いやいや、普通そっちじゃないでしょ。」
水野さんに突っ込まれて気がついた。また勘違い。選択ミス。
「私のお姉ちゃんの安産祈願を私が書いたって事。」
「あ、そっか、普通そっちだよね!」
「あはははははは!佐藤って天然なんだな~!」
大西君が話を聞いて笑っていた。
て、天然!?天然ボケ?
「隼人、お前、家内安全ってオカンか!?」
「展示する文字決まらなそうですね~」
「スルーか!スルーすんのかい!」
大森君と大西君のやりとりは何だか…………
「オカンじゃないよ。息子だよ。」
「スルーせんのかい!すんのかい!せんのかい!すんのかい!せんのかい!」
何!?新喜劇?!二人とも楽しそう……。
「学園祭……パフォーマンスとか、できたら楽しかったのかもしれないね~。」
「パフォーマンスって?」
「そう、私が中学生の時ここの学園祭に見学に来た時にね、おっきな紙におっきな筆で文字書くパフォーマンスやってたの。あの時の学園祭楽しかったな~!」
中学の友達と、学園祭をまわった記憶を思い出して、楽しい気持ちになった。
「それ、やりたい。」
水野さんがそう、つぶやいた。
「梨理もそう思った?私も!」
稲葉さんも乗っかった!
「パフォーマンスか~!いいじゃない!悪くないね!」
大西先生までそう言い出した。
すると、みんなが口々にやろうと言い出した。ええっ!!みんな!?
「無理だよ!5人しかいないし!」
私がそう言うと、大西先生が笑顔で言った。
「違うよ佐藤さん、5人しかいないじゃなくて、5人もいる。」
5人も……いる?
「どうするんだ?部長は佐藤だろ?佐藤がやりたくないなら、止めれはいい。」
やりたくないわけない……でも……。
「やるのか?やらないのか?」
大西君に、やるかやらないか迫られた。
5人じゃやれない。
「やれない。」
「せんのか~い!」
ふと、周りを見渡すと、みんなが期待を抱いた顔でこっちを見ていた。
「あ、やっぱりやる!」
「すんのか~い!」
だから嫌だったんだよね…………部長なんて!私が決めるなんて……
「佐藤さん、佐藤さんが決めたとかじゃないから。勘違いしないでよ?これは、私のいつものワガママなんだから。」
帰り際、水野さんがそう言って帰って行った。水野さん、気を使ってくれたのかな?




