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ゲームオーバー


18


し、死んだ…………。やっちゃった!!つい、うっかり?ゲームオーバーになってしまった……。


「死んだ……。お兄ちゃんのバカぁ~!うわぁ~ん!!」

「あ、マリ!!」

マリは泣きながら母に報告に行った。報告というより、多分チクりに行った。


梨理からの電話の事で…………頭がいっぱいで、ギリギリのレベルで敵と戦う事ができなかった。


「ごめんね…………。」

どうして梨理が謝るんだろう?


珍しく……と言うより、初めてかもしれない。梨理が泣いていた。電話中ずっと、ごめんね、ごめんねと…………何度も言って謝っていた。


別に、梨理のせいじゃない。梨理にはずっと協力してもらってたのに、謝らせる事になってしまって……こっちが、ごめん。


そもそも、リンに恋人がいるかどうかなんて事、考えもしなかった。ただ会いたくて、それが好きなんだと勘違いした自分が悪い。僕の初恋は完全に、これでゲームオーバーだ。


僕は、ゲームをコンテニューして、みんなが生き返ると、マリを呼んだ。

「マリ~!時間を戻したよ~!またみんな生きてるよ~!」


現実世界でも…………復活できたらいいのに。


じゃあもし、復活する事ができたとして、レベルも低くて、お金も武器もなくて、僕に何ができる?


早く気がつくべきだったのかもしれない。


何度生き返っても同じ。前と同じように、レベルの低さに悩んで、ずっと苦しくて、レベル上げに腐って、そしてまたすぐ死ぬ。


今度こそ…………リンの事は諦めよう。そう思った。


しばらくすると、母さんとマリが戻って来た。

「死んでしまうとは何事!?」

「いや、つい……。今は一応、生き返ったよ。」

「本当だ!!やった~!生き返った~!!」


マリは、何もかも元通りで、喜んでいた。ゲームでは、死んでもこの世の終わりじゃない。ゲームはいくらでも続けられる。続けられない場合もあるか。もう一度、初めからやれば良かった?


…………初めから?


いや、今までの時間が無駄になる。


それでも、僕はもう、このゲームを続ける気がしなかった。


「マリ、もうやめようか…………?」

「お兄ちゃん、マリとのゲームつまらなくなっちゃったの?」

「違うよ!そうじゃないんだよ。こっちのゲームに変えよう!こっちの方が動物達とお友達になるやつだから。」


そうだ!ゲームを変えればいい!ゲームソフトを変えるみたいに、相手を変えればいいんだ!


相手を…………変える…………?


変えられる…………?


僕は涙が出そうになったのをぐっと堪えた。妹にいらない罪悪感は抱かせたくないし、母さんにいらない心配もかけたくない。


「やだ!!やだよ!だってマリ、まだ魔王やっつけてないもん!!お兄ちゃんとマリで平和を取り戻すんでしょ?」


誰か教えて欲しい。一番簡単な魔王攻略方法……。


「そっか……。まだ、魔王倒してない……倒してない……」


誰か教えて欲しい。誰も傷つかなくて、みんなが平和で、いつでも楽しくて、苦しくなくて、辛くもなくて、涙が…………出ない方法。



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