何もできない
17
ババアが帰って来るなり、怒鳴りつけて来た。
「廉!!何で書道部来なかったの!?」
「毎回行くなんて言ってねーよ!」
「隼人君と水野さんはちゃんと来てたのよ?」
隼人と梨理は行ったのか……。
俺はあれから、何だか書道部に行きづらくて…………行くのをやめた。
「あのさ、佐藤、書道…………書いてた?」
「佐藤さん?書いてないけど?」
やっぱりぃいい~!!やっぱ俺のせい!?俺のせいなのか!?
「佐藤さんどころか、稲葉さんも水野さんも、女子は全員それどころじゃないってくらい険悪で……」
…………え?険悪?
「喧嘩でもしたのかしら?女子三人に何があったか知ってる?」
「知らねーよ。」
三人が喧嘩?全然知らなかった。
そんな事より、俺の一言のせいで、佐藤が書けなくなったらどうしようと気が気じゃなかった。けど…………それどころじゃないようで少しホッとした。
ホッとして、ソファーに寝転ぶと、玄関で何やらババアと誰かの話し声が聞こえた。
「あ、お待たせ!汚い所だけど入って入って!」
「すみません、お邪魔します。」
「あ、荷物適当に置いてそこら辺座って~!廉!どけ!」
こんな時間に客?
何だよめんどくせ~と思って、自分の部屋へ行こうとすると、そこには、見た事のある姿があった。
嘘だろ…………?
里梨 凜…………!!
え、何で家に?うわっ!テンパる!!ど、どうすればいい?俺、どうすりゃいいの?
「廉!何動揺してんの?挨拶くらいしなさい!」
「な、なんて?」
こうゆう時、どうすりゃいいの?誰か教えて!!教えてくださ~い!!誰か~!!誰か助けてください~!!世界の中心で叫んでみた。
「え~?廉、もしかして、凜に一目惚れ~?年上好みとは意外~!」
「違うわ!ざけんなババア!」
色んな意味で無理だ!4つも年上だし、見た目も好みじゃねーし、将来教師候補とかマジ無理!!
いやいや、そうゆう事じゃないって!!隼人の好きな人だから!!
選択肢は3つ
それとなく隼人の事を聞いてみる◀️
連絡先を聞く
何もしない
「大森 隼人……」
「大森君がどうしたの?あ、お友達なんだよね?大西先生から聞いたよ!」
「え、あ、はぁ……。」
そりゃ知ってるわな……。
連絡先を聞く◀️
何もしない
よし、隼人のためにここは一肌脱ごう!!
「あの、電話番号聞いてもいいですか?」
「えぇ?!廉!本気なの?」
「いや、あの、これは違うんだ!!違う違う違う!!」
ダメだ!!勘違いされる!!いや、もうされてる?
何もしない◀️
「…………。」
俺…………コイキ○グ?
昼間のババアの授業を思い出した。
no、no!
何もしない×
何もできない○
you understand?
うわぁあああ~!!誰か何とかして~!!今すぐ俺を異世界に転生させて特殊スキルを身につけさせてくれぇえええ!!
特殊スキル、現状打破!!出ろ!!出ろ!!
俺がクッションに頭を打ち付けていると、里梨先生が遠慮がちに話しかけて来た。
「大西君、取り込み中申し訳ないんだけど……ちょっといいかな?あの、もし、できたら……大森君にそれとなく伝えて欲しいんだけど。」
「え…………?」
「私には、お付き合いしてる人がいるし、大森君の事……全然覚えてないの。ごめんなさいって。」
えーと、ごめんなさい?ん?ごめんなさいってどうゆう事?
あれ?それって…………告白して、ダメだった時の台詞だよな?あれ?隼人告った?
いやいや、待て待て、隼人まだ告ってないよな?告ったなら、俺がそれとなく伝える必要はない。告ってもないのに…………
振られた!?
いやいや、待て待て!それを…………それとなく伝える?俺が?隼人に?どうやって?
そんな、引導を突きつけるみたいな事、俺にできるわけがないだろ!?
俺は砂になりながら、自分の部屋に戻った。隼人に電話をかけてみたら、全然つながらない。話中のようだった。ベッドの上で、隼人に話す事を整理しようと考えた。
だから嫌だったんだ…………隼人と友達…………
そんな事は絶対にない!!
だから嫌だったんだ…………チャンスがあっても、何もできない自分が!!
いや、待てよ?隼人が告ってなかったとしたら…………?何故振られる?
冷静になって考えたら…………おかしくないか?どうして隼人が里梨先生を好きな事を、里梨先生自身が知ってるんだ?
それは…………誰かが…………
俺は慌ててリビングに行った。それならすぐ確認できる!!本人がすぐそこに…………
「里梨先生は?」
「凜ならもう帰ったよ~?」
遅かったか!!
1人の女の顔が頭に浮かんだ。多分、あいつなんだろうな……。




