笑えない
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どうして…………?なんでこうなるの?あり得ない!!
あり得ない…………事もないか……。
だから嫌だった…………この高校に来るのは。隼人から里梨凜の存在が全然消せない。消せないどころか、本物が現れた!!最悪!!こうゆう時に、人は殺意が湧くものなんだ……。
今まで、散々邪魔して来た。駅で見かけても、隼人の注意をそらしたり、先輩に話を聞いても、何も知らないと嘘を伝えたり、今まで何とかやり過ごしてきた。それなのに……
全部…………無駄?無駄だったの?私の今までの努力って、一体何だったの?
ふと、左側を向いたら、廉がざまあ!という顔でこっちを見ていた。そりゃ、そうでしょうね。私は廉を睨みつけた。
「おいおい、お前人殺しみたいな顔してるぞ?」
「え?」
廉がそう言うと、隼人が後ろを向いた。
「どこが?」
「ちょ、ちょっと~!女子に人殺しの顔って、廉ってホント最低~!」
なんとか、隼人の前で、作り笑いが出て良かった。
本当の所は…………マジで笑えねぇ!!
ホームルームが終わると、隼人が先生を追いかけようとした。私は思わず、隼人を引き止めていた。
「隼人!!待って!!」
「何?僕、今、リンの所に行かないと!!」
引き止めたはいいけど…………どうしよう。冷静になろう。少し、冷静に。そうだ……!!
「再会が嬉しいのはわかるけど、少し冷静になろう?」
「冷静…………?」
「そう、今は小学生の時に会ったリンじゃないんだよ?今は、先生。教育実習生の…………先生。」
私は、隼人にも自分にも言い聞かせるように、ゆっくりと言った。隼人は私の一言に、一気に肩を落とした。
「そっか……。先生か……。向こうの事も考えなきゃいけないね。迷惑……かけないようにしないと……。止めてくれてありがとう、梨理。」
「うん……でも、毎日会うチャンスがあるんだから……大丈夫だよ……。」
慌てて隼人を元気づけようとした。何とかフォローしたい。
でも、それ以外のフォローの言葉が全然出て来なかった。
お昼を過ぎても、隼人は元気にはならなかった。元気になるどころか、どんどん落ち込んで行った。
それでも私は、自分の猶予の時間がどうしても欲しくて、隼人に言わずにはいられなかった。
「先生と生徒じゃ恋愛は難しいよ。今はまだ迷惑かけないように遠くから見てた方がいいよ。その時が来たら、私がまた協力するから……。」
嫌な女……。
だから嫌だった…………こんな時が来れば、絶対嫌な女になる。そんな事わかってた。今までだって…………
私、凄く嫌な女だ……。




