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やった!!やった!!やった~!!また、奇跡が起こった!これからしばらく毎日リンに会える!!きっと話しかけるチャンスもきっとある!!
何だか妹とのゲームも全然苦じゃないぞ~!
「お兄ちゃん、何だかご機嫌さんだね。」
「ん~いい事があったんだ~!」
夜中に母さんにこっそりレベルあげをお願いしておいて、夕方に僕とマリで楽々クリアしていくという形を取った。こうやってゲームがサクサク進むと楽しいな~!
と、思っていたら……
「これ……やだ。」
「え?どれ?」
「可愛くない。」
もしかして…………装備変えたから?
「えーと、あの、これで、攻撃力と防御力上がるんだけど……。」
「変な格好!!」
最新武器は、デザインの関係で、マリ神に却下された。しまった……。古い武器と防具はもう売ってしまった。まさかの、一番攻撃力のある勇者が丸腰の無防備、素手!!
仕方がない……。前の武器を買いに戻ろう。
道具屋へ行って…………って金がない!!なんで!?レベル上がってるのに何故!?
すると、母が思い出したように言った。
「あ、そうそう、薬草とか沢山買っておいたから!備えあれば憂い無し!」
いやいや!憂いしかないよ!!薬草92個?毒消し草98個?どんだけ毒にかかるつもりだよ!!
「こんなにいらないって!!丸腰でアイテム大量に持って行くとかマゾなの!?ドマゾなの!?」
「だって、無くなったらわざわざ街に戻って買いに行くのめんどくさいでしょ?」
それ完全に、レベルあげるだけが目的の思考だよ!
「いいんだよ!そのうちモンスターが落としたりして手に入るから!」
母さん…………協力者かと思いきや、思わぬ落とし穴。
アイテムを売り払っても、武器か防具のどちらかしか買えない……。
「剣か服どっちかしか買えないけど……どっち買う?」
「どっちも!」
「だから~!どっちかしか買えないって言ったじゃん!話聞いてた!?」
マリはどっちも!と言い張って、引こうとしない。
「ヤダヤダヤダヤダ~!!」
もう勘弁してください。ごめんなさい。もう謝ります。古い武器も買えないビンボーな兄ちゃんを、もう許してください。
めんどくさくなった母さんが言った。
「も~!隼人どうにかしてよ!」
「無茶言うな!」
母さんはめんどくさくなると、すぐどうにかしろって無茶振ってくる。
「ねぇ、お兄ちゃんはあんなに変なの着たいの?」
「変なの?ああ、あの新しいやつ?」
そうか!新しい武器売ればいいのか!
「そっか!大丈夫!解決した!」
俺はせっかく買った新しい武器と防具を売って、古い武器と防具を買い直した。
「ほ~ら、元に戻った!」
「ホントだ!!良かった~!」
うん、良かった良かった!
これ、本当に良かったのかな?この先新しい敵に対して古い武器しか使えないというどんどん不利な現実……。
自分で自分の首しめてない?まぁ、その分母さんにレベルあげ頑張ってもらおう。
手段の為に目的を見失っているような……?いや、目的は接待だ!!目的は見失っていない!!
とりあえず武器や防具の、ビジュアルの変わる物には、マリ神のお伺いを立てなければいけない事がわかった。よし、今後は気を付けよう。
だから嫌なんだよ…………女子って、なんかやたらと見た目にこだわるから。




