6−13
いつもありがとうございます。
勢いと文字数だけで書いてきたので、1月末で一旦休止して、この先の展開を少し見直します。
3月には再開する予定です。
場合によっては以前の話に修正を入れることもあります、ご了承ください。
「姫様、今日から5日間は、俺の日です」
朝、目が覚めてベッドから出たら部屋に佇んでいた旦那である獣人を見た私の気持ちを考えてほしい。部屋ってそんな簡単に入られるものだったっけ?いや、そんなはずはない。一応重要な立ち位置にいるわけだし、次期魔王の客人としてもてなされているのは間違いない。そんな相手の部屋が警備なんて知らない子ですという状況にはならないはずだろう。
つまりある程度警備はされているけれど、人によってスルーされているのか。もしくは警備している人がイコールでこの部屋の中に入ってきている相手なのか。どっちもな気がする。入ってくるのはハーレム人員だからな…大半が権力者だわ。普通に誰も逆らえない権力の塊だよね。怖い。権力も怖いけど、その中心に確実に私がいて、巻き込まれてるっていう事実が怖い。
権力には基本逆らえないからね。逆らっていいことがあるかといえばないよね。もちろん、逆らう必要があるときもあるのだろうけれど。それは本当に例外であって、正常に権力が使われているときは全く無意味だ。むしろ制裁される側になると同義でしかない。
「おはよう、グラジリオス」
とりあえず、挨拶してみれば、グラジリオスがとろけるような笑みで、おはようございます、と返してきた。うん、挨拶は大切だよね。それ以外は全てスルーをさせていただきたい。ええ、その手に薔薇的な花束を持っていたり、反対の手に白いワンピース的な何かを持っていたり、グラジリオスが何故か白い軍服っぽいの着てたりするのは全部無視しようと思う。うん、嫌な予感しかしない。しばらくスルーしていようかな。
「では姫様、本日はこちらをお召しください」
あっ…ダメだった。すっと自然な動きで差し出されたそのワンピースを素直に受け取って、わかったと頷いた。のだけれど、何故だろうか、グラジリオスが動く気配がない。つまりこのまま私の着替え中もずっとここにいるということ?うーん…諦めるか。
仕方ないので、衝立の向こうに移動…と思ったのだけれど、立ち上がって歩き始めたらその後ろをついてくる従者然とした動きで当然のごとく。え、と振り返ったら、ニコニコと微笑んで、お手伝いします、と。は?と思った私は絶対悪くないし、不可解な顔をしたとしても仕方ないと思う。
「姫様は俺に世話をされてください」
「…わかった」
色々と諦めて、グラジリオスに任せる。嬉しそうな顔で、はい!と元気に返事をした様子に絆された。下着姿になって、コルセットを締められる。なんというか、すごい器用だし、なんだろうか、ここで聖女さんとの関係を垣間見た気がした。けれど、そう思ったことがグラジリオスに伝わったのか、楽しそうな様子から一転して、違います!と言われた。うん、ごめん。素直に謝るべきだと判断して、ごめんね、と頭を下げた。
グラジリオスが、そのまま私の支度を始めてくれるのだが…シンプルなワンピースだと思っていたのだけれど、どうやらシンプルなドレスだった。なんだろう、具体的に言えばウェディングドレス的な雰囲気を感じた。
「俺たち獣人は、誓いの時に白い服を着ます。姫様を付き合わせるのは俺のわがままなのですが…」
半分くらい泣きながら告げる顔に、なんだか、申し訳なくなってくるのだが、ぜひ笑ってくれることを願う。と、なると私のできる行動は一つだけだ。
「…私は獣人じゃないけれど、それでもいいの?」
ヒュ、と息を飲んだグラジリオスは、ふにゃりと笑って頷いた。何度も頷いて、そのままグッと両手を広げてぎゅっと抱きついてきた。腰をかがめているその頭に手を伸ばしてよしよし、と撫でれば、そのまま泣きそうな声で、姫様、と囁いた。
着せてから聞くものじゃないよね、とちらりと思ったのは内緒にしておこう。しばらく落ち着くまでそのままでいてから、グラジリオスに世話をお願いする。嬉しそうな彼は素直にきっちり世話をしてくれるだろう。持っていたバラはいつの間にか部屋に飾られていた。一体いつ飾っていたのだろうか。全くわからなかったのだけれど。
すっかり着飾った状態で、椅子に座るように支持される。素直に頷いていつもナディアが世話してくれていた席につく。楽しそうに笑うグラジリオスがあの手で器用に髪をいじり始める。え、まじか、とじっと鏡ごしに手をの動きを見た。本当に器用に整えてくれている。
爪を立てないように気をつけてはいるようだけれど、編み込みも私よりも断然綺麗に作っていく。しばらく過ごして少し伸びたとはいえ、いまだにショートと言わざるを得ない長さだというのにも関わらず、それを感じさせない技術で綺麗にまとめられている。
おお、と思っていれば、次に、と化粧を始めてくれた。え、その手でできるの。まじまじとその顔を鏡ごしに見ていたからか、ちょっと不満そうな顔でこちらを見てくるグラジリオスに首を傾げる。だって、普通男の人が女の人の化粧できるとは思わないじゃん?ハーレルさんならなんとなく分かるけど、獣人のグラジリオスだよ?魔族の顔を飾るってそんなにないことのはずだし、元隷兵ってことは戦いが基本なわけですよ。
「花嫁の支度をするのは、夫の勤めです」
「練習したの?」
「ええ、顔に施すのは初めてですが…時間を見て姫様の御付きのものに聞いていました」
わざわざナディアに確認してくれたらしい。ありがとう、と笑ったらひどく満足そうな顔で、ですから、お任せください、と笑った。まあ、任せきりにしてしまっていいのだろう。このまま放っておいても良さそうだと言われるままに動くことにした。
しばらくされるがままになって、気が付いた時には、綺麗な花嫁さんがいた。すごいなほんとに。なんならナディア以上にうまいんじゃないかと思うレベルだ。…いや、ナディア以上に私の顔にあった化粧をしている、といった方がいいのだろうか。これなら自分のこと美人って言えそう。
「すごい」
「元が綺麗なお陰ですよ」
にこり、心からそう思っているような顔に少し戸惑ったが、俗に言うあばたもえくぼ的な恋の魔法というか、そういったものだろうと思うので肯定もせずにとりあえず笑っておいた。
グラジリオスのターン




