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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
ゆるしてください、もじょなんです
86/90

6−10

やばい、と凍りついたままの顔でせっちゃんを見上げる。にっこりと微笑むその顔に、これは理解しているな、と把握できた。なんだこれ羞恥プレイか、やめてください、死んでしまいます。心の中では大きく叫ぶのだが、それを口にすることができずにいる。変に声を上げると、つまりこちらから色々な情報を開示する事になるわけで。


「せっちゃん?」


優しく笑うその顔が、確実に嫌がらせにしか思えない。だって、絶対手の感覚とか、なんなら私宙に浮かんでたわけだから、私の服装知ってるわけでしょう?見たよね?絶対見たよね?ってやつだ。ジト目でその顔を見ていると、うっそりと笑って、すっと私の背中を撫でる。ゾワっとした感覚があって、知ってて行動してるのだとわかった。ジト目から完全に睨む方向にシフトした。

が、体の隙間を埋める様に抱きしめられているので、体が徐々にポカポカしてくる。どうやらせっちゃんも比較的薄着の様だ。今思い返してみれば、確かに普段着ているコート的なローブ的なものは着ていなかったし、多分インナーのハイネックとズボンだけだろう。露出している素足に、柔らかな布地が触れている。触れてるだけならいいのだけれど、残念ながら思いっきり絡められているせいで身動きができない。

そして私は睨みつけているはずなのに、せっちゃんは睨まれている人の顔ではない。いっそのことトロットロな惚けた顔だ。いやいや、おかしいよね?私睨んでるし、なんなら敵意だよね?敵対視してるわけでもないけれど、私結構怒ってるよ?だって、これ、着てるのベビードールだよ?あの防御力がかけらも感じられない服装の筆頭じゃないかな、次点でキャミソールっぽい形の服の上に着るアレ…なんて名前かわからないんだけれど、あれも同じくらい防御力低いよね。


「せっちゃんなんて、きら」


い、という前にミシッと体の骨が軋んだ音がなった。顔が威圧感のある無表情になっている。つら。なにこれ、え、なに、そんなに大ごと?子供みたいに嫌いとかいうだけなのに?お子様同士のよくある魔法の言葉『絶交するもん!』さえ使えないんじゃないの、これ。関係ないけど、絶交って結構難しい言葉だよね?なんで幼稚園くらいでみんな覚えるんだろうか。とまあ、現実逃避をしたくなるくらいにはミシミシいってる。多分、これ体力徐々に削られていってるんだろうな、っていうのがわかる。確実にダメージ入ってきてる。


「い…だ、ぃ」


言いながら、ステータスを開いてみる。いつもの体力の部分が、赤字で肉体崩壊の危険!と警告を出している。まあそうですよね。ステータスをせっちゃんにアピールする。ちらりと視線を向けたせっちゃんが焦った様な顔をして、腕の力を緩めた。けれど、グデっとしたままの私は動けそうにない。死にそうになるってこういうことか、と今全身で体感している。

ぐったりとしたままヒューヒューと呼吸を繰り返す。次期魔王マジ次期魔王なんだけど。なんだよ、ギュってされただけで死にそうって。こちとら防具も武器も装備できないんだからな。素とか裸とかいう数値しか持ってないんだからな。絞め殺されるかと思った。視線だけをせっちゃんに向けて、弁明を求める。

焦ったような顔をしたままのせっちゃんだが、力を込めていないだけで、私を拘束していることには違いない。強くない力ではあるが、今の体力の限界値ギリギリの状況では抵抗することもできやしないし、抵抗したところでまた絞め殺されるんじゃないかと不安にすらなる。あれか、せっちゃんはペットを可愛がりすぎて殺すタイプなのか。ああ、うん、前からその傾向っぽいのはあったような気がするけれど…それでジオールさんとかはすっとせっちゃんから離れてるんだな。把握した。


「すまない、せっちゃん、大丈夫か」


無言で返すと、せっちゃんは私を引き上げるようにして、目線を合わせる。申し訳なさそうな顔をしているけれど、その顔が明らかに不機嫌な顔にしか見えないあたり、強面の弊害だな。すいっと持ち上げられたと思ったら、仰向けになったせっちゃんの真上に乗せられる。ヴィクトールとクレイ様ほどではないにしろ大きい体をしているので、人間ベッド状態だ。

どことなく楽しそうにしているあたり反省していないのだな、と理解する。体力回復に一番なのは寝ることだ。このまま放っておいて寝てしまえばいいだろう。薄手の毛布だけがかかっていたのだが、それでは足りないな、と手を伸ばすが、手が届かない。


「ふとん、かけて」

「全部だろうか」

「ん、全部」


魔法を使ってくれたらしいせっちゃんが、ふわりと柔らかく私の背中に布団をかけてくれる。敷布団が筋肉質で硬いことさえ除けば、安心しやすい人肌だし、ポカポカしてくる。体力の限界だ。諦めてなかなかに鍛えられているその胸板に頭を預ける。まあ、殺されはしないだろう。

私が死にそうになってすごく焦っていたし、殺したいわけではないだろう。怯える必要はないだろうが、気をつけてもらう必要はある。どうすればいいのか、と微睡み始めた脳内で考える。簡単に許してしまっては、私が自分自身の生命を軽く見ているということに変わりないわけで、ただ、明確な殺意ではないということも考える必要がある。

ちょうどいい懲罰とか、いい塩梅な采配とか、そういうのすごく苦手なんだよなぁ。流石に死んだらまずい。死んだらどうなるのかは知らないけど…せっちゃんに聞いてみる?私死んだらどうなるの?って、かなりの当てつけな気がするんだけど、それくらいならセーフ?っていうか事実死んだ後の話とか聞いておきたいんだよね。ほら、よくわからない神の一族っていう称号があるから余計にね。


「せっちゃん?」


低い声が振動と共に伝わってくる。私が上に乗ってるのになんの息苦しさも感じさせないせっちゃんはどこか不安を滲ませて私に声をかけてくるのだけれど。完全に睡魔に襲われている私としては、せっちゃんをどう許すべきか、許すためには何を求めればいいのかという思考ですらうまく考えられない。

時折ハッとするように目を開けるのだが、気がつけばすでに目を伏せてぼんやりとしている。うん、諦めよう。


「お、やす…み」

「…ああ、おやすみ、いい夢を」


ぽすん、と頭に手が乗せられたのを感じながら、私はゆっくり眠りについた。

エージーエンディングワード:嫌い(ネクストコナンズヒントの音程で)

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