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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
ゆるしてください、もじょなんです
83/90

6−07

衝撃のヴィクトール初日から数日。

本日は、なんとフィラード様の日だ。ちなみに昨日と一昨日もフィラード様の日だった。ずっと着せ替え人形になってた。なんなら寝てても着替えさせられてた。冷めた目で見つめたけどにこりって笑われるだけで終わって嘘だろ、って唖然と呟いた事は忘れない。忘れたいけど忘れられない。年齢的にはまだまだ子供かもしれないけど、寝てる間に着替えさせるのは無しだと思う。

とりあえず、不機嫌です、とアピールしているのだが、全くなんの足しにもならない。不機嫌な私ににこにこ笑いながらドレスを差し出してくるフィラード様には一体何をどうすればいいのか。ハーレム人員って除籍みたいなことできないの?


「雪白さん、機嫌を直してください」


ね?とあざとく首をかしげるフィラード様。魔族の美人は自分の魅力を知っていなくてはならない規律でもあるのだろうか。みんながみんな自分の意見を通すために自分を一番魅力的に見せてくる。いっそのこと警戒心しか生まれないのだけれど、それに気がついていないのか。

私の視線が全く変わらないことに気がついたのか、フィラード様が苦笑して、ごめんね、と少しだけ反省した様子を見せる。


「もう寝てるときに勝手に着せ替えて遊ばないでくれますか?」

「うん、約束するよ」

「なら、いいです」


へにゃっと笑う。そんな私の反応に彼は魔眼をパチリと瞬かせて、それから手を伸ばした。私の頭を何度か撫でて、嬉しそうな顔をしている。まあ、満足そうな顔をしているのなら、私の着せ替えが始まることもないだろう。そう思って、話を振ることにした。


「フィラード様は、どうして典医様になったのですか?」

「ん?僕が典医になったのは、監視のためだよ」

「え」


私の動きが止まったのをこれっぽっちも気にしないで、フィラード様が私の隣に座った。ソファーが少しだけ軋んだ音を立てた。アンティークだからだろうか。彼は何でもない顔をして、あのね、と話し始めた。

曰く、彼は実は女王様の異母兄弟なのだそうだ。衝撃だった。まさかの、とその顔をしみじみと見つめてしまったが、にこりと笑われて終わる。なんか失礼なことをした気がして、俯いた。けれど、下ろしてある手をそっと取られて、その手を追って視線を上げると柔らかな表情でフィラード様がこちらを見ている。


「魔王様が生まれたときに、魔眼持ちも生まれた」


詳しく伝えてなかったけれど、僕の魔眼は人を操ることに長けているんだ、となんでもないことのように告げる。その人を操る、というのはマリアさんのものとは違うのだろうか。そう思ってどういうことですか?と問いかければ、それは操るというよりも、洗脳といってしまっても問題ないくらいのものだった。完全にその人の意識を自分へと向けるのだそうだ。

長い時間、色々試した結果、制御できるようになり、副作用としてか、魔力ですら人を操ることができるようになってしまったそうだ。一番効果的なのが、彼自身が煎じたり、調合したりする魔法薬に魔力を混ぜ込むことらしい。後遺症も副作用もない媚薬として大人気だよ、という発言は全力で聞かなかったことにしたい。ちょっと意識に働きかけるように魔力を組んでるだけだから、とこれっぽっちも安心できない発言をする。やめて。


「とにかく、魔王様を魔眼持ちが操ったら大変だろう?異母兄弟だから、会おうとすれば会えるしね」


肩をすくめて、だから、僕は小さな頃から城に閉じこもっていたんだ、と。グラジリオスといい、ヴィクトールといい、重い過去多いんじゃないかな。クレイ様も女の人に襲われたっていってたし、そのせいで変な特殊性癖発症してる?ふふ、と上品な笑いをフィラード様がこぼす。女性らしい笑い方なのに、声は一切それを感じさせない。

そういう行動の節々に男らしさを感じさせるのは、そう意図しているからなのだろうとは思う。じっとフィラード様を見つめた。彼はいつも通り優しく微笑んで、私の頭をさらりと撫でる。


「雪白さんには効かないけれど、なかなか危険だからね、仕方ないんだ。今は昔ほどじゃないし」


別に、フィラード様を哀れんでいたわけではないけれど、そう見えてしまったらしい。否定するのもどうかと思って、小さく笑って返した。フィラード様も満足そうに笑うから、この反応でよかったのか、と不思議になる。けれど、そんなこと考えてもいられないくらいに、フィラード様がぐいっと近づいてきて、私に体をピタリと寄せる。

寸分の隙間もない。拘束されている訳ではないのだけれど、動き難いくらいには距離が近い。さりげなく腰に回された手で動きをほとんど制限している。空いた手でそっと私の足を撫で上げた。おい、おっさん。エロオヤジの行動だぞそれ。と冷めきった目で見つめてやれば、不思議そうに首を傾げてみせる。

童顔寄りの甘い顔立ちを全力で利用してきているのだが、そんなのに騙されるつもりはない、と目を眇めてフィラード様を見た。ぐいっと近づいてきた彼は、私の耳元でそっと囁く。


「ヴィクトールには許したのに、僕には許してくれないの?」

「っ?!」

「ね、だめ?」


徐々に込められていく体重に焦って体を起こそうとするが、腰に回されている手でそれが阻止された。足を撫でていたその手がするりと体の向きを変えさせて、ふかふかのソファーの上にごろり、と横にされた。ぽふんと間抜けな音がして、柔らかくて気持ちのいいクッションがちょうど頭のところに。

完全に押し倒された状態になって、動きを止める。艶っぽく目を細めたフィラード様が、私の眼前で、ねえ、と声をかける。本当に近い。ひゅっと息を飲むほどに、その顔は本気で、そして、見たことのないものだった。俗に言う、男の、雄の顔と称されるものだ。


「…ぁ」

「怖い?」


ふるふる、と首を左右に振ることしかできない。怖くはない。けれど、そういった欲求を向けられると今まで思ったことが無いせいで、どう対応していいのか、わからない。けれど、同じ婚約者同士で差をつけてはならないと言うのならば、私はフィラード様とクレイ様にも唇を許す必要があるし、なんなら伴侶であるグラジリオスにも許さなくてはならない。ハーレルさんは恋人であるから、全く同じにする必要はないのだと思うけど…そうなると問題はせっちゃんか。

思考の渦に落ちていたから、と言うのは言い訳だけれど、気が付いた瞬間にはもう反転した瞳しか目に映らなかった。

重い過去(あっさり味)

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