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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
ゆるしてください、もじょなんです
80/90

6−04

しばらく待っていると、ルナティスさんが服を持って現れた。多分待っていた時間的に一時間もかかっていない。称号とかスキルとかそれにともうなう技能とかが特化してるんだろうなぁ、と想像に難くないくらいにはこの世界の制度にも慣れてきた。彼女は楽しそうに笑って、試着室を指差す。着てみて?と告げる可愛らしい顔はきっと自分の魅力を知っている。

以前の常識で考えたら一時間足らずで作ったとはまったく持って思えないディティールに凝ったその服を纏う。それ以外はもともと店に置いてあった既製品でトータルコーディネートをされていた。まずは、可愛らしい模様の入った少しピンクがかった白のタイツ。それに四角い襟にレースが上品な生成のブラウスを合わせて、作ってくれたジャンパースカートは深い赤と生成でできている。ただ先ほどまでは完全な無地だったけれど、少し柄が入っていた、可愛い。それから同じ生地のボレロを着て、靴は可愛らしいおでこ靴。うん、正統派ってイメージだろうか。昔から着てたのなら何系とか言えたのだと思うけど…残念ながら、たまにHP見て可愛いって思ったり、友達が着てるのを可愛いねって見てたくらいだからなぁ…。正統派っていうのも完全に私の中での話だし。正直自分が着るならロリィタよりもゴシックパンク派です。

鏡を見ながらくるりと回ってみる。可愛い。私が着てるのにかわいく見えるってことはかなり可愛い。軽く化粧を直されて、髪型も綺麗に整えてもらう。自分自身の自己評価は確かに低くない方だと思う。けれど、これは可愛いと自信を持って言える。あちらでもこれなら街を堂々と歩ける。いや、いつもこそこそ歩いてたわけではないけれど。


「ヴィクトール様、お待たせしました」

「いや…」


振り返ったヴィクトール様は動きを止めた。くわっと思い切り目を見開いて、それから、優しく目を細めた。にこりと微笑むその顔は完全に甘さが増している。どきり、と肩を揺らして少しだけ距離を置いたまま、じっと彼の出方を伺う。

目の前で片膝をついて、目線の高さを合わせてくれたヴィクトール様は、手を差し出す。そっとその手に手をのせれば、出会った時の再現のように、その甲に唇が押し当てられる。柔らかな感触に顔が熱くなる。けれど、強い意志を見せる瞳でこちらを見てくるヴィクトール様から視線はそらせなくて。ごくり、と、喉がなる。以前とは違い、魔力を送り込んでは来なかったけれど、それ以上に何か、拘束されているような気がする。息が、しにくい。


「雪白」

「はい」

「…ああ、くそ」


私の手を掴んでいない方の手で、ぐしゃりと整えられていた髪をかき乱す。強い目が逸らされて、ほ、と息をついた。隙が生まれたのだろうか、ヴィクトール様は私の腕を強く引いて、そのままぎゅう、と抱きしめた。痛みさえ感じる強さだけれど、本当に力を込めたら私の体力なんて一瞬で消し飛ぶに違いない。

背後に回った手はどこか震えているようにも感じるけれど、何をいうこともない。一体どうしたのだろうか、とは思うけれど、話を聞くのにはこの場所は適さない。だったら、移動するまで。ただ、このお店での支払いは終わらせなくてはいけないから、まずはヴィクトール様に戻ってもらうことが最優先。

何の反応もないヴィクトール様の大きくてたくましい背中に手を回した。全然回らない事実。いやせっちゃんでも回らなかったから、もっと大きなヴィクトール様を抱きしめられるわけもないんだけど、なんか、悔しいな。

ぽんぽん、とその背中を叩くと、ヴィクトール様はすごく悔しそうな声をあげてから、雪白、と私を呼んだ。


「何ですか、ヴィクトール様」

「…ヴィクトールでいい。いつか対等になるのだから、今から呼び方くらいは慣れておけ」

「そういうものですか?」

「そういうものだ」

「そうですか…」


ふむ、と私が黙り込むと、ヴィクトール様の低い声が響く。そこは呼ぶ流れじゃないのか、と拗ねたような響きだが、ただ不機嫌なだけにも聞こえる。そうか、そういう流れなのか、と苦笑してから、ぎゅう、とできる限りしっかりと抱きついて、小さく呼ぶ。


「これからも、よろしくね…ヴィクトール」

「ああ」


嬉しそうな顔でそのまま私を抱き上げる。それからルナティスさんにお金を払って、店を出る。ルナティスさんが貴方がそこまでなるとはねぇ、とニヤニヤしていたのには目を瞑ることにした。下手に突っ込んだら絶対私がダメージ喰らうやつだって知ってる。ヴィクトールは私をどこへと連れて行くつもりなのか、迷いなく長い長い足で歩みを進めている。

子供抱きされている私は彼からしての背後しか見えないのだけれど、すれ違う魔族が微笑ましそうな、何とも言えない顔で見ているのが怖い。ちらりと聞こえた声には、あれが将軍様とその婚約者様だねぇ、なんていう個人情報だだ漏れの内容があった。他にもお似合いだわ、とか本当に思ってんのか、と言いたくなる内容だったり、さすが将軍デケェという事実だけを伝えてくることもあった。

なぜ私かわいそうと同情する声は聞こえないのか。いや、聞こえなくてもいいけどさ、一応ヴィクトールは特殊性癖持ち(ロリコン)として結構有名だったと思うのだけれど…まさか、貴族の中だけでなのだろうか。それならばどうして彼が結婚していないことに違和感を覚えないのかという話になる。それだけ、ヴィクトールへ民からの支持が高いということだろうか。もしくは、ロリコン相手でも私はきっと幸せになるのだという根拠のない信頼だろうか。別にどちらでもいいけれど。

思考を無理やり途切れさせて、ヴィクトールの肩に頭を預ける。ゆらりゆらりと揺れるのは心地よい。とは言え起きてそれほど経っていないから寝たりはしないよ。夕方だったら寝てたけど。


「ヴィクトール」

「何だ?」

「どこに行くの?」

「この城下に作った俺の屋敷まで」


え、と私の驚いた声に満足したらしい楽しそうな笑い声。っていうか屋敷建てたの、いつの間に、と当然のごとく反応したかったのだけれど、着いてからのお楽しみだからな、ってすごく楽しそうな声で言われてしまったら黙り込むしかなくて。

口をつぐんで、綺麗な景色をただぼんやりと見ていた。

全力で本気を出してくるロリコン

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