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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
おかえり、たいせつなひとです
71/90

5−09

読んでいただいてありがとうございます。

さて、覚醒からの恋愛の話となったのだけれど。大元の話は現れたモンスターとグラジリオスの称号変化(隷属魔法の消失)である。その話はどうなったのか、とせっちゃんに問いかけたら、今更かとなんともいえない顔をされた。けれど、説明はしてくれるようだ。

そもそも隷属魔法とはなんなのか、ということなのだが、正確にいうと隷属魔法とはただの通称である。本来の使用用途は子供が危険な区域に入らないよう、もしくは危険な魔法を使わないように、と制限するためだけの魔法。それを強めることで、逆らうことのない、隷属という状態にするものだそうだ。

そして、その制限の鍵となるのは、“一定量の魔力を纏うこと”。魔族であれば成長すれば自由に魔力が使えるようになるため、自分自身で魔法を使うとその条件を満たす。ただ、数値を高く設定するとその分、設定できる命令数が減る。魔力の絶対量の低い他種族であれば、数値を低く設定して、命令をきつくしても問題ない。

そこで、あのモンスターが出てくる。アレは魔族だけを殺すように設定されている。それは、グラジリオスに目を潰されても怒り狂うこともなく、ただただ私とせっちゃんを睨み続けていたことからもわかる。が、その血液には高い魔力が込められており、だからこそ、薄墨のような色をしていた。魔族以外の種族、つまり奴隷がモンスターを倒し、血液を浴びることで、その血液中の魔力を纏ったと判断されるようになっているのだろう、と。

魔族が隷兵(ファイター)を使うと考えた上の行動だろう。確かに狙われないのだから、当然のように使うだろう。それが、ある種当然だ。放っておいて、魔族たちが襲われるのを待つわけにもいかないのだから。その選択ができないくらいにはモンスター自体が強化されている。


「最初から、奴隷を解放するのが目的?」

「…可能性は低いですね、副作用と見たほうがいいでしょう」


私の疑問に首を振るのは、獣人のグラジリオスだ。ある意味助けられた側の存在であるはずなのに、どこか嫌悪感を浮かべて告げる。何か、彼だけが理解できることがあるのだろうか。せっちゃんも、ヴィクトール様も奴隷の解放と魔族の殲滅を測った結果ではないか、と言っていたのに。グラジリオスは目を伏せた。

深い息には怒りが込められている。


「あのモンスターは俺たちを攻撃しませんが、その理由はただひとつ。彼らが魔族以外の種族(俺たち)だからです」

「…え?」

「本当にそうだと言い切ることはできませんが、少なくとも獣人の因子は入っています」


全てではありませんが、倒した数体に同じ種属を感じました。

グラジリオスが自分自身の言葉を補足するように、獣人が血の繋がりを大切にするのは、それを感じることができるからだ、と続ける。感覚の問題らしく、どういうものだとは説明できないらしいが、例え別の種属に混じっていても同じ因子はわかるのだそうだ。だからこそ、気がついたらしい。

けれど、獣人が同じ種属の因子を感じられるというのは魔族にとっては初耳らしく、せっちゃんもヴィクトール様も驚いたような顔をして、それからなるほど、と何か納得したように頷いている。思い当たるような節があったのだろうか。そう頭のどこかで考えながらも、グラジリオスから目が離せない。

冷静な顔で、単純に事実を伝えてくる彼だけれど、本当にそれは冷静なのだろうか。グラジリオスが奴隷から解放されても私を選んでくれたけれど。それはイコールで獣人の習性がなくなる、という訳ではない。だから、彼は血を大切にする獣人であることはどうあがいても変わらないし、それを私が無視することは本来あってはならないことだ。


「グラジリオス、」


大丈夫か、と問いかけたいけれど、それは違うのだろう、と思うとただ名前を呼ぶことしかできない。無力だと自覚するけれど、だからと言って何かできるのだろうか。じっと見ていれば、そんな私の考えを理解しているのか、グラジリオスは優しく笑う。


ーーありがとうございます。ですが、姫様の顔を曇らせる必要はありません


目を細めるその表情には嘘はないけれど、私の表情は変わらないのだろう。グラジリオスは手を伸ばして慰めるように私の頭を撫でる。慰めさせてどうするのか。後悔、とまではいかないけれど、申し訳ない気持ちと、なんとも言えない重たさが心にのしかかる。自己嫌悪し始めたいのだけれど、ここでするのはダメだろう。グラジリオスに心配をかけるだけだ。

深呼吸をしてから、力なく笑う。心配そうな念話でグラジリオスが姫様、と声をかけてくる。

…すごく今更なのだけれど、なんで姫様?一応嫁だぞ?いや騎士にしたのは確かに私だけど、俺の姫様みたいなことを言われた記憶は確かにある、それか。じゃあ、私が甘えるか甘やかすかすれば、少しくらい私の気持ちが楽になるだろうか。いやグラジリオスは別に慰められたいとか思ってないかもしれないから、そうすると私の自己満だもんなぁ。


「ん…わかった」


こくん、とグラジリオスに対して頷くと、マリアさんが首をかしげる。雪白さん?と声をかけられて、パチリと瞬いた。


「何がわかったのでしょうか?」

「ん?ああ、えっと、グラジリオスとは、念話でもお話しできるから」

「…え?」

雪白()の騎士っていう称号のおかげで、私とグラジリオスは念話でお話できるようになったの、ね?」

「はい」


姫様とは続いていないけれど、そう言いそうな顔でとろりと微笑むその顔。本当に虎の顔だが、せっちゃんやヴィクトール様より表情がわかりやすいとは一体どういうことなのか。魔族の表情がわかりにくいのか、とは思うけれど、ナディアとジオールさん筆頭にレリィナさん以外の厨房組は結構わかりやすい。砦の面々もわかりやすい人が多いことを考えれば、やはり、あの辺の表情のわかりにくさは権力者だからなのか。

腹芸的な意味である種仕方ないと思えばいいのかもしれないけれど。なんかこう、同じ種族で同じ系統の顔立ちの相手よりも、全くと言っていいほど違う種族の相手の方がわかりやすいというのは、違和感が拭いきれない。


「それは羨ましいな」


少し硬い声はせっちゃんのものだ。目を細めてグラジリオスを見つめているその姿を不思議に思いながらも、モンスターと隷属魔法の関係を知ることができて満足したのだった。

人体実験

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