5−08
なんで青い顔してるのかと考えて、自意識過剰かもしれないが、私に淫行があったとバレたからでは?と判断する。別にそこまで気にすることでもないと思うのだけれど。そりゃ生きているのだから、そういうことだってあるだろう。
そもそも女がいたってせっちゃん言ってたし、すごい女の人だったらしいけど。そういえばその話聞いてなかったな、もうちょっと詳しく聞きたいかも。せっちゃんに言い寄る根性とかすごいと思うんです。イケメンだけど言い寄れないタイプのイケメンだよ。
「グラジリオス?」
「その、俺は…今の俺にはっ、雪白様だけです」
「うん?別に気にしてないよ?だって、そもそもせっちゃんが言ってたよね?」
確か、番が回復役の女の人だったんでしょう?と首を傾げると、絶望したような顔になる。なにその反応。ああ、もしかして番って言葉がよくないのかな。不思議に思いながらもそのまま首を傾げていれば、彼は何かを必死に否定する。あの頃の俺は愚かだったのですとか懺悔を始めたのでどうしたものかな、と思いながらとりあえず話を聞く体勢に入った。
グラジリオスの過去のパーティーは種族混合パーティーだったらしい。珍しいのか、とせっちゃんに問いかければ、数は少ないな、と肯定される。グラジリオスに視線を戻す。彼らのパーティーは人間とエルフが2人ずつ、ドワーフと獣人が1人ずつの6人パーティーだったそうだ。聖女と言われたお姫様(この人がグラジリオスの元恋人だ)にその近衛騎士(女性で世話係も兼ねていた)、エルフの魔術師と狩人が一人ずつ(見目麗しいものだったらしいが、せっちゃん曰く今はその影もないと、なにをしたのかは怖くて聞けなかった)、ドワーフは壁役で残りの獣人はグラジリオス、戦士だ。
人間以外は男で、最初は魔術師エルフと聖女が付き合っていたらしい。旅を始めたあたり。近衛騎士は途中からドワーフと恋人関係になって、最終的にはドワーフと折り重なるように眠ったぞ、とはせっちゃん談。聞きたくなかった。魔王強すぎかよ、いや次期魔王だけど。チートだと存じ上げていますけど。旅の途中で、グラジリオスが聖女の世話になることが多く、そこで距離が縮んだそうだ。まあ、前線で戦うのが戦士だから生傷も絶えないだろう。治癒の力を持つのが聖女だけなら、それは仕方ないことだ。
そういえば、と聖女について問いかける。時折一つの魔法に秀でている存在は魔族以外で生まれるらしい。魔族は基本どの魔法も100使える。他の種族が全部の魔法合わせて50使えるとすると、一つの魔法を比べ100に対して10〜15くらいになるそうだ。けれど、たまーにその割合が偏っている存在がいる。聖女は回復魔法に特化したタイプと。どうでもいいが、性別が男だったら聖人と呼ばれるそうだ。大抵の割合が偏っている存在は討伐に借り出されて、短い生を終える、と。
さて、だんだんと距離の近くなったグラジリオスと聖女は、まあ、いわゆるそういう関係になったそうだ。ちなみにこの段階でエルフ魔術師と別れてない。やばい、聖女やばい。どの辺が“聖なる女”なのか全力で疑問を投げかけたいくらいにはやばい。“性なる女”かな?とか思って自分の脳内のおっさん具合に絶望したので、それもこれも聖女のせいだと責任転嫁した。グラジリオスも案外豪胆だな、と感心したら泣きそうな顔になったので表情を無に戻す。
二股かけられたエルフ魔術師は、そりゃもう怒ったそうだ、特に手を出したグラジリオスに。そうなるよね、だってエルフ魔術師と聖女が付き合ってたの知ってたんだし。そんなギスギスパーティー嫌です、と思ったのだけれど、実際のところ、エルフ狩人とも聖女は仲良しだったそうだ。ぜひ深読みしてほしい。
で、そんな奔放な彼女は、森に着く頃にグラジリオス一人に絞った(と思われる)。一番彼女自身の生存率が高くなりそうな相手を選んだんだろうなぁ、なんて思うけれど、その辺は彼女のみぞ知る。けれど、運命(笑)に出会ってしまった。そう、せっちゃんだ。
せっちゃんを自分のものにしようとしたら、せっちゃんが取引を持ちかけた。ほぼ100%嘘だろと言いたい内容だったが、彼女は信じて、そしてパーティーは崩壊。ドワーフと近衛騎士と聖女以外は奴隷となった。その3人についてはいうまでもない。とはいえ、多分そのギスギス具合であれば、ほぼ確実にせっちゃんが手を出さなくても崩壊していたんじゃないかと思う。
「まあ、いいんじゃない?そういうこともあると思うし」
よくわかんないけど。私、リレントでは誰と付き合うとかなかったから。っていうかまだそんな付き合うとか認められる年齢じゃないらしいからそんなこと彼らも知ってるだろうけど。まあ、成人っていうのが魔族では家族が決めるから、具体的な年齢はない。とはいえ、16歳はまだまだ子供だ。平均すると40歳くらいになるそうだ。
と、いうか、そうか、グラジリオスは私が地球で一応色々経験して生きていたということを知らないのか。まあ生きた日数的にはこちらの16歳となんの変わりない。多分初老の紳士が生きた時間数で換算して体を変えたから私16歳になってるんだなーって、王都にいたすごく暇なときに計算してみたらそうだったっていうだけなんだけど。つまり実際私はこの世界では16歳なのだ、なんか大人な気持ちでいたけど、君は子供なんだよって言われた気がして、そっからだいぶ開き直ったよね。
「雪白様…」
情けない顔で私の名前を呼んだグラジリオスになあに?と首をかしげる。泣きそうな顔になるのでなんとも可哀想なのだが、どうしてそうなったのかな。と思いながらも、純粋に気になるので問いかけてみる。
「そういえば、初めて会った時にせっちゃんに食って掛かったのもそれが理由だった、よね?」
「…はい」
「あれって、やっぱりトラウマ的な?」
ぐっと黙り込んだグラジリオスをじっと見つめていたのだが、沈黙が続いた後にせっちゃんがやめてやれ、と悲しそうな顔で首を左右に振った。え、と周りを見回すと、なんというか、子供の発言を諌める良識のある大人みたいな反応されてる。疑問に思いながらもグラジリオスに、ごめんね、と謝った。
より彼の表情の悲壮感が増したような気がしたが、私としてはな状況が理解できていないので何をすることもできなかった。
元カノ(聖女)




