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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
ただいま、とりでのなかまです
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4−09

フィラード様は暫く私の膝の上に頭を置いて、目を瞑ったまま黙り込んでいた。何をいうでもなく、何をするでもなく、ただ休んでいるようだ。なので私から何をすることもできないような気がして、彼の様子をただ見守っていた。ずっと茜色の光が差し込んでいると、なんか時間の感覚がわからなくなる。

ぼーっとしながら、フィラード様の髪を撫でていたら、突然、ぱちっと目が開いた。肩が跳ねると、悪戯が成功したかのように破顔した表情が目に入る。


「そういえば、どうして僕の目の色が反転してるか知っていますか?」

「…え?理由があるんですか?」


問われた内容に質問で返してしまった。けれど、知らない、ということは的確に伝わっただろうか。苦笑したフィラード様はそのままニコリと笑って自分の瞳を指差した。


「“魔眼”」


かっこいい…!多分私の目はキラッキラと輝いていたことだろう。“想像していなかった反応をされた人の顔”とはこういう顔なのだろうと思える表情をしているフィラード様に、にっこりと笑ってみせる。ずい、と顔を近寄せて覗き込んだ。

これが…魔眼。地球(あちら)リレント(こちら)の常識は違う。だから、私の思っている魔眼とは違うかもしれない。けれど、魔眼であることに違いはない。中二心をくすぐる魔眼、闇の魅力を備えた魔眼、神秘の力を秘めた魔眼…!心の中で歓喜しているのが多分顔にも出てると思う。ポーカーフェイスは得意ではないのが私だからな、と心の中で自虐しつつ、反応のないフィラード様を見下ろす。

深い深いため息をついたフィラード様は軽く手を上げて、私の顔に触れた。かなりの近距離のまま、意地悪く目を細めたその顔は、甘い顔立ちとは正反対にひどく男臭かった。言い換えればおっさんの顔だ。それでもドキッとしてしまうのだから、整った顔は羨ましい限りだ。

私の身の回りにいるのが、イケメンで強くて地位のある人ばかりだとしみじみと思うのだけれど、深く考えると恐ろしいので考えないでおく。というか、深く考えなくても恐ろしいのだけれど、解決方法が皆目見当もつかないので、後回しにしていた。


「雪白さんを操れるんだよ?」

「マリアさんのやつみたいにですか?」

「マリア様の?って何?」

「自分に見惚れた相手を見つめてる間操るっていう」


それでダンスの練習をしたんですよ、と笑いながら答えると、なんともいえない顔をされた。眉を顰めているわけではないけれど、微妙な感じだ。決してポジティブな印象は受けないのだけれど、正面から喧嘩を売られていると思っていいのだろうか。喧嘩はあまり買わないのだけれど、買うべき?いや、勝てる要素はないからやめておこう。自問自答してから、フィラード様を見つめる。

脱力した様子で、彼はゆっくりと体を起こした。呆れたような顔から一転、挑発的な顔になる。瞳が煌めきを増す。一瞬意識が遠のいた。

けれど、何かが弾かれるような感覚があって、すぐに意識を取り戻す。パチパチと何度か瞬いて、フィラード様をじっと見つめる。伸びてきた手が頰に向かってくるので、指を絡めるように繋ぐ。


「え、」

「ん?」

「はー…流石、主神様のお気に入りですね。魔眼を弾かれるとは」

「弾いたんですか」

「言うより体験するのが早いかと思いまして」


ニッコリと全く悪びれずに笑うその顔に殺意を覚えるが、私のためにやってくれたことなのだろうと思い直す。笑顔だが、残念そうな表情とは器用だ。変なところに感心したまま、魔眼を弾いてしまったことにちょっと残念な気分になる。魔眼にかかると言うのはちょっと楽しそうだったんだけどなぁ…。

と思ったところで気がついた、医務室に誰もこないけれど、今日は何もなかったのだろうか、作業効率上昇じゃなくなったので怪我はちょっと増えるようになった。生死に関わるような大きな怪我は、今の付加効果でも防げるからいいのだけれど、骨折くらいの怪我は残念ながら治らないから、医務室の利用は増えているはず。

なのに、今日は誰一人としてやってきていない。ここ3日は時々訪問者がいたはずだけれど。何故かあるロココ調のカウチソファーとそれに座っているロココ調のドレスを着た次期魔王の客人に完全に驚きを隠せない様子でいたのは言うまでもない。私は常に無表情にそれを見送っていた。完全に人形に徹していた、じゃないとやっていられない。

かからなかった魔眼だが、一体どんな効果があったのか知りたい。教えてもらえないのかな?とフィラード様の目を見た。態とらしく視線を逸らしてから、立ち上がる。大きな体のせいですっかりと私が影になった。

言葉を待っていたのだが、何を言うでもなく、医務室の扉へ向かう。締め切られていたはずの扉は少しだけ開いていて、あれ?と思っているうちにフィラード様が勢い良く扉を開けた。

ごろり、と怪我人が数人転がり込んでくる。軽い怪我で、あっさりと治せそうなものばかりだけれど、どうして部屋に入ってこなかったのか。治療は早く済ませるべきだ。万能な魔法は確かに回復魔法もかなり便利だ。それでもやはり時間の経過した怪我は治しにくいーー治らないわけではないーーし、ばい菌が入って病気になったら回復魔法はあまり使わないことが推奨されている。一番の理由は、場合によっては菌も活性化してしまうことがあるのと、魔法で病気を治していると、生命活動に必要な魔力がどんどんと増加していってしまうから、らしい。万能で便利な魔法もいろいろ複雑だ。

開けっ放しになっている扉からせっちゃんが歩いてきているのが見えた。もうお迎えの時間だろうか、と医務室にある時計を確認する。こう言う時やはり外の明るさで時間がわからないのは不便だ。

時計はもう終の1時を示していた。もう見回りは砦の物見台からのグループ行動に変わっている。せっちゃんも迎えに来てくれるはずだ。グラジリオスは物見台のグループ行動を取り仕切っているため、なかなか会えない。一応旦那様なんだけどね。


「…今日は怪我人が多かったのか?」


せっちゃんの言葉に、怪我人が首を左右に振った。一度に来たのなら確かに多い人数だが、3日間の流れからいくと逆に少ないくらいじゃないだろうか。不審そうな顔をしたせっちゃんに、怪我人たちは顔を赤らめて視線を外す。嫌な予感がした。申し訳なさそうな顔で、中心の男が告げる。


「その…雪白様と婚約者であるフィラード様の邪魔はできないと言うことになりまして…」

中二病ヒロイン

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