4−05
すみません、ちょっと遅れました
「雪白ちゃん…」
唖然としたようなハーレルさんが、私の顔をまじまじと見つめる。それから確認するように自分の体を触った。怪我は治っただろうか。咄嗟のこととはいえトランス状態になってたし、無意識のうちに健康の追求使ってた感覚があったから、本能的には大丈夫だと判断している。けれど、初めてやったことだから、という理由で理性では心配している。
「どこか痛いところはないですか…?違和感のあるところとか」
「大丈夫よ。大丈夫、ほぉら、もうこんなに元気なんだから泣かないの」
ぺたり、とひんやりしている手のひらが私のほおを覆う。身長に見合って大きな手をしているハーレルさんには、さほど小さくない私の顔も小さいものに写っているのかもしれない。なんて思えるほどに、覆われた範囲が広い。少し硬くなっている手のひらがゆっくりと動いて、私を安心させるように撫でる。なのに、ハーレルさんは泣きそうな、それでもどことなく嬉しそうな、だけどやっぱり痛みを堪えているみたいな、複雑な顔をしている。
当てられた手に手を添わせて、ちゃんとハーレルさんが生きていることを確認する。ほらほら、とハーレルさんが私の目元を拭うから、ようやく私が泣いている、と言われていたことを思い出した。いつから泣いていたのだろうか。多分、そんなに長い時間は泣いていないと思うのだけれど。
私の体温が移ったのだろうか、ゆっくりと温まってきたハーレムさんの手のひらにもう大丈夫だと、へらりと笑う。と、そこへカストさんとせっちゃんが入ってきた。驚いたような顔をしているせっちゃんと今にも倒れそうなカストさんで、ヒッと悲鳴をあげてしまうほどのカストさんだった。ボロボロじゃないか、と説教したくなるほどの怪我だ。ただハーレルさんと違って、目立つ怪我は見えない。近寄って確認しようとしたのだが、動けない。
おかしいな、と思うのは、明らかにハーレルさんが関係ないところからも掴まれていることだ。振り返ると、眉を寄せたフィラード様がいる。
「ダメだよ」
「え、」
「もう一回同じことをしたら、君の魔力が生存域を切ってしまう可能性がある」
フィラード様が怖いくらいに鋭い視線でこちらを見ている。普段の穏やかそうな顔からは想像ができない顔に驚く。生存域を切るってことは、かなり量が減るってことだよね?いつのまにかそんなに魔力を消費していたとは、気がつかなかった。
そんなに力を使っていただろうか…不思議に思って、ステータスを開いて確認する。案の定と言えるだろうか、魔力の部分には多少消費している、というどれくらいなのかわからない答えがあった。これは…さすがに困る。どうしたらいいのだろうか、いつか魔力切れて不意に死ぬんじゃない?
魔力の数値がわかるように、あえてジワジワと使っていくのはアリだと思うけどそれには誰かに協力してもらわないといけないのだけど…グラジリオスあたりなら協力してくれるかな。一応旦那様という存在に当たるわけだし。全く実感ないけど。私が成人してないっていうのもあって俗にいう白い結婚だし、そもそもが魔族と奴隷っていう関係だからね。完全に女性優位だし、その私が特に夫婦的なものを求めていないからこそ、余計何も起こらないよね。
完全に夫婦とは?ってなってるから。当然のように護衛対象と護衛っていう関係の方がしっくりくる。別にいいんだけどね。恋愛とかそういうの考える余裕ないし。私の思考がいつも通り変な方向に向かっていたのを止めたのは、ハーレルさんだった。
「雪白ちゃん、だめ」
「ハーレルさん」
「あれはだめ、卑怯すぎる」
私の肩をがっしりと掴んでいた。少しだけ視線を私からそらしているのは、何か気まずいことでもあるから?でも何よりも気になるのは卑怯よばわりされたことなんだけど。なんで?何がどうなって私が卑怯だったの。首を傾げているが、別に何を反応してくれることもなく。多分私を見てないからこそ反応がない。
「彼は僕が治療するから、雪白さんは待ってて」
「フィラード様…お願いします」
頭を下げて、その場所で足を止める。フィラード様がせっちゃんとカストさんに近づいて、カストさんを椅子に誘導する。これくらいはいいだろうと、遠くから生活魔法の一種でその体の汚れだけ落とす。あ、と気がついて、ハーレルさんに魔法をかけて彼の服についていた血液の汚れを落とす。
綺麗になったその姿に満足して頷く。ハーレルさんがなんとも言えない顔をして、私の頭を撫でた。フィラード様のため息が響いて、え、と振り返ろうとした、のだけれど。ハーレルさんがぐい、と私を引き寄せて、はぁーと深々とため息をつく。
「雪白ちゃん」
「なんですか?」
「…素直よね、もう、いやになっちゃうわ」
「え、突然なんですか」
私の言葉に、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくるだけのハーレルさんに首を傾げていたのだけれど。ふと瞬いたその隙に見える景色が変わっている。ん?と見上げると、そこには独特のツノ。うん、そうか、そういうことか。
「せっちゃんは、怪我ない?」
「…」
「えっ、まさか怪我したの、どこ?」
移動魔法を乱用しているせっちゃんだけれど、怪我してるなら、魔法とか使わないで欲しい、心配するじゃないか。ぐるり、と体の向きを変えて大きな体のせっちゃんを見る。服が黒いから血が出ているのかわからない。触ってみれば濡れた感覚があるだろうか、と手を伸ばす。
肩や腕は大丈夫そうだけれど、もしかして後ろとかなのだろうか。手を伸ばして、背中に回した。両手を回したところでハッとする。これ完全に抱きついた状況になるんじゃね?まあいいか。別に抱きついたところで問題はないだろう。保護者だし、友達(的な何か)だし。考え事をしながら触ってみるが、濡れた感覚はない。つまりは、別に出血していないということだろう。
「血は出てないみたいだけど、どっかぶつけたの?」
「…もう大丈夫だ」
「あ、もう治療済みだったの?」
なんだ、と手を離して距離をとろうとするが、残念ながら離れられない。がっしりと掴まれているからなのだけれど、別に怪我してないなら離してくれてもいいんじゃないかな。顔を見上げる。
「せっちゃん、一体何をしたんだ?」
修羅場は一瞬




