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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
ただいま、とりでのなかまです
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4−04

本質的な理解は、もしかすると学者とか研究者くらいにならないとできないんじゃないだろうか。そう思うほどに魔力は複雑怪奇に感じてしまう。1つ理解したと思ったら、疑問が2つ出てくるような感覚だ。ああ、もう頭の回転が悪くて嫌になってくる。

ナディアの淹れたものとは味の違う美味しいお茶を飲みながら、はあぁと深いため息をつく。紙にでもじっくり書いておきたいのだけれど、と思いながら、ふと思い立った。もしかして、おばあちゃんの知恵袋で理解できるのでは…?おばあちゃんは森羅万象を知るって確か書いてあったよね?テラとかヨタとか知ってるおばあちゃんがいるのだから、魔力とは何かを知ってるおばあちゃんもいる可能性があるんじゃないかと。でももしかして、知ることができるのと理解できるのは違うのかな?

もう一口お茶を飲んでから、よし、と決めた。カップをソーサーに戻して、深呼吸をする。意識を集中した。


魔力とはーー


あっ、これダメなやつだ。おばあちゃんたちが知っている情報がまとめられたらしいのだが、あまりの情報量に一瞬で気が遠くなった。断片的に理解できたのは、魔力は流れらしい。世界から生命力として全種族へ。全種族から魔法と形を変えて神々へ。神々から恵みとなって世界へ。形を変えながら巡っているということ。それゆえにどこかで停滞すると、せっちゃんが言っていたようにダメになってしまう。

とはいえ、一番停滞するのは全種族から神々への移動で、だからこそ、地上からはモンスターがいなくなることがない。多分、生命力と形を変えていたとしても元々は神々の恵みだからか、耐えられる器が少ないせいだ。魔法にあふれている魔族でさえ、魔力に負けてしまう個体がいるのだから、魔力が“ない”と称される人間なんて、少しでも多かったらそれだけで負けてしまう(アウト)

だからこそ、大量に神々の恵みを受け入れられる勇者や魔王ーー場合によっては魔族も含むーーと言った存在がいる。最後に、モンスターと魔族は無関係であり、むしろ魔王含む魔族はモンスターとは対極に位置している、と知った。

私が理解できなかった部分にはそれ以降の魔族がどういった存在なのかとか、もっと概要さえ理解できなかったものも多くあった。

そのあたりは無視してしまってもいいだろう。今回は理解しなくていいことだ。そんなところにまで手を伸ばしてしまっては、本当に理解したいところだって理解できなくなってしまう。好奇心と知識欲をぐっとおさえつけて、深呼吸。


「…とりあえず、今までの話はなんとなく理解できた、と思う」


私の唐突な言葉に、パチリ、と一度瞬いて、せっちゃんは私をまじまじと見つめる。マリアさんはふと何かに思い至ったように頷いて、なるほど、と告げる。そういえば、マリアさんは私のスキルを知っているはずだ。きっとそれで理解したのだろう。せっちゃんにも説明しておこうか、と口を開いた、直後だ。


「せっちゃん、ちょっと待っていてもらってもいいだろうか?…マリア」

「どう…いえ、かしこまりました」


唐突に立ち上がったせっちゃんがマリアさんに呼びかける。マリアさんは疑問符を浮かべたが、目を見開いてから首を左右に振った。少しばかり慌てたように扉から出て行くせっちゃんに嫌な予感がした。けれど、マリアさんが私に動かないように、と目で伝えてくるから、何を言うこともできずにせっちゃんを見送った。

何かあったのだろうか。マリアさんの表情がいつもより硬いのが気になる。せっちゃんが出て行った扉からすぐにグラジリオスが入ってきた。(ここ)に慣れるように私から離れて見て回っていろと、せっちゃんに命令されていた彼が私の元に帰ってくる。それはつまり、その命令をせっちゃんが下したと言うことになる。

グラジリオスを私のところへ戻すのは、まさか。


「…マリアさん、」


思ったよりも硬い声が出た。もっと軽い雰囲気で聞くつもりだったのに。そうは思うが発した声は戻らず、その声の硬さから私が気がついたと認識したのだろう。彼女は、私を立ち上がらせて、案内する。

案内された先は、医務室。フィラード様がいる部屋だ。いつもより低い声のマリアさんが静かに声を放つ。


「失礼します」

「どうぞ」


中から聞こえたフィラード様の声も低い。開かれた扉の中、さらにその奥のベッドに治療を施されている途中のハーレルさんがいた。モンスターは獣の形でもしていたのだろうか、それにしてもかなり大きい。ハーレルさんについている歯型が、すごく大きい。私の腕だったら、ひと噛みで引きちぎれてしまうに違いない。

だらり、と赤い血が流れているその様子を見ているのだが、脳内では現実として処理ができていないらしい。フィラード様がポワッと淡い光を放ってその歯型の一つを治した瞬間、ぞわり、と身体中を悪寒が走る。

血は、回復しない。傷は塞げるし、内臓も治せる。骨折だって。だけれど、回復魔法にも限界はある。

顔色の悪いハーレルさんが、服で隠れていた腹部を見せた瞬間、ブワリ、と身体中を力が巡った。うっすらと白い、あれは骨だろうか。骨が見えるはずもないのにどうしてか見えている。ダメだ。そんなの、死んでしまう。

どうすればいいのかなんて、調べればすぐにわかった。

悲鳴をあげる暇さえ惜しい、と近づいて手を伸ばす。

傷口に直接手を触れると、濡れた感覚が伝わってきた。

深く考えたら、きっと動けなくなる。

回復魔法は、使える。

だけれど、それだけでは体力しか回復しない。魔力を回復させるには、魔力交換の要領で一方的に与えることができればいい。


「ハーレルさん、痛かったらごめんね」

「え、」


直接彼に触れた手のひらから魔力を流し込んで、反対の手を重ねて回復魔法を発動する。

回復魔法の方は勝手に決まった量の魔力が持っていかれるから楽だけれど、魔力を流し込むのは、彼の魔力量や流れを見ながらでなくてはならない。

じっとその顔を見つめながら、少しずつ少しずつ、魔力を流し込んでいくが、やはり、痛みがあるのだろうか。唸るような声と、苦しそうな呼吸が聞こえてきた。

それでもしばらく続けていけば、ハーレルさんの体はほとんど元に戻っており、肌や服についた血だけが、惨状を教える。顔の血の気が戻ってきているのを確認してから、そっと両手を離した。

舞台は医務室

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