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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
ただいま、とりでのなかまです
54/90

4ー03

「魔力がダメになる…?」


首を傾げてせっちゃんに問いかけると、一度ゆっくりと頷いた。私をじっと見ながら、少し考えたような動作を見せる。


「一番簡単に理解するなら、世界(リレント)を人体、魔力を血液と想像した方がいいか」

「うん」

「魔力が循環するというのは、血液が身体中をめぐるようなものだと考えれば、血流の止まった場所はダメになるだろう?」


なるほど、と頷いた。一番簡単に、ということは多分、細かいことを言うと違うのだろうけれど、循環させないと悪くなると言うことはしっかりと理解できた。さっきの説明だと最終的に世界が滅びる気がするけど…実際モンスターを放置していたらそうなるのだろう。マリアさんも“カストさんとハーレルさんがいれば対処できる”と言っていたのだから。

つまり、二人以外は対処できないのだ。二人はせっちゃんの代わりに砦に残って指示するくらいの地位にいるだけではなくて、カストさんは大規模魔法を行使することができるし、ハーレルさんだってせっちゃんに合わせて移転魔法を展開できるくらいの魔法を使えるのだ。かなり能力的には高いはずで。

そんな二人がいてやっと対処できるようなモンスターが溢れたら、ほぼ確実にこの世界はーー正確には文明の方がいいのかもしれないけれどーーなくなってしまう。なるほど、確かに種族間の争いでも文明は消えるかもしれないけれど、モンスターは戦争(それ)以上の問題だ。

私が理解できたことを認識したのか、せっちゃんが続ける。


「停滞した魔力が、その場に留まり続け形を成す。それがモンスターだ」

「なら、モンスターに肉体はないの?」

「あるにはある。ただ、魔力で構成された物質だからこそ、全種族のようなストッパーがないし、仮の肉体を形作るために核を作る必要がある」


それがモンスターを倒すと現れる魔核と呼ばれるもので、魔核を浄化し、新たな魔力を入れることで魔石となる。蛇足で伝えておくが、魔石も魔力を循環させる仕組みの一つだ。

せっちゃんは静かに、私の様子をじっと見ながら話す。多分、私がちゃんと理解できているか確認してくれているのだろう。伺うような金色は小さな動きさえも見落とすことはなさそうだ。今まで教えてもらった時も丁寧ではあったが、これほどまで繊細に教えてもらっていただろうか。私が気が付かなかっただけかもしれないが、今日の話は、いっそう注意深い。

魔力は生命力。ただの力には善も悪もない。だからこそ、魔法にも使えるけれどモンスターにも変わる。けれど、モンスターを形作る魔核も最終的には魔石となり世界のために力を巡らせる一部でしかない。…結果的にモンスターも倒せさえすれば、世界のためになるようにできているのか。もしそうだとしたら、モンスターさえ、ある意味では魔力の循環のための方法ということになる。


「モンスターって、何をするの?」

「己にない器を得るために他人の器を食らう」

「じゃあ、モンスターには体力ってないの?」

「そうだな、核を保護するための障壁を体力と表現してはいるが、全種族と同様の意味での体力はない」


なるほど、と答えてまた沈黙する。考え込むとついつい黙ってしまうが、そんな間もせっちゃんは私のことを確認しているようで、特に何を口出ししてくることもない。せっちゃんの後ろに立っているマリアさんは、時折こちらを見ている。表情はせっちゃん同様私を伺うもので、きっと感情も同じく私の理解度を図っているのに違いない。後からわからないことが出てきてもマリアさんに聞いたらなんとかなりそうだ。


「意志はあるの?」

「ボスと呼ばれるものになれば大抵は。何かしらを食っているから、外見も人型に近いし、知能もある程度高くなっている」

「それは食べたものによって変わるの?」

「そうだ。他にもその場の環境に適応した特徴も兼ねそなえることが多いな」


人型に近ければ近いほど、能力の高いモンスターということか。そして、外見だけでなく、中身も人に近づいていく。形を作る魔核に変化が起こって魔力の質にも変化があるのかもしれない。

ボスは普通の冒険者には倒せなくて、モンスターは魔力そのもの…と、いうことは。


「モンスターって、魔法攻撃が効かない、とか?」

「一定のレベル以下の魔法は、そうだな。障壁は物理攻撃に弱いから、通常の冒険者は物理攻撃が多い。冒険者の魔法使いと言われる者たちが大抵エルフやドワーフなのはその二種族が魔族に次いで魔法を使えるからだ」

「魔族の魔法なら、モンスターにも攻撃できるってこと?」

「ああ。ボスに対しては魔族以外の魔法はほとんど効果がない。同時に保護障壁もかなりの硬度になるせいで普通の冒険者では歯が立たず、神から特殊なスキルと魔力を貸し与えられた勇者が台頭する」


つまりは、勇者様っていうのは、世界の循環機能の一つ。送り出されるときに願いを叶えてもらえることを考えると、それは報酬だったり、与えられる特殊スキルだったりするのだろう。それを使って、循環を助けるのが勇者の役目ということか。

なら、もしかして、私も魔力はたくさん使ったほうがいいのだろうか。痛みなく大量の魔力を受け取れるということは、循環に回す量をリスクなく増やすことができるということだし。ただ、誰かに与えられたり、神様にお祈りしたりしないといけない…。


「あれ?私の神様へのお祈りって、本来の循環にすごく近い?」


だって、神様に私の魔力を思いっきり渡しているわけで。一気に回復しているのが、神様の力なのか世界の魔力なのかわからないけれど…私に与えられるのが神様の力であったとして、奪われた側には通常の魔力回復が行われるわけで…それはつまり、魔力が巡っているということでは?


「そうだろうな。奇跡の対価に魔力を差し出し、そしてすぐに循環前の魔力で満たされる」

「魔法が奇跡なのはわかったんだけど、差し出した魔力ってどうなるの?」


一切なくなるのだろうか、奇跡を起こすのは付属だって言ってたから、魔力=奇跡ではないはず。難しくて理解が止まり始める。こちらをじっと見つめていたせっちゃんがマリアさんを見上げると、マリアさんはすぐにお茶を淹れて私の前に置いてくれた。


「一息入れよう。このままではきっと混乱するだけだ」

「世界の理の一部を理解しようとしているのですから、ゆっくり時間をかけましょう」

「…ありがとうございます、マリアさん。せっちゃんも、ありがとう」

説明回が続いております

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