4−02
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砦に帰ってきて三日経つが、私はすっかり仕事に復帰して、全員分のお弁当を作る作業をしている。今までは作業効率上昇(究極)を付与していたのだけれど、今回からは作業効率上昇(限定)を付与することになった。先日の社畜の皆様へ思った感情を持ちながら付与したらそうなったというだけなのだけれど、限定って何、と思った私は悪くない。
限定になってしまった理由としては、効果の違いである“精神・肉体いずれかの限界を迎えたら、もっとも作業効率が上がる状態まで回復行動を行いたくなる”っていう行動指示が入ったからだろうとマリアさんとジオールさんは言っていた。さらに効率が上がる時間を一日中から続の時間指定した。文句が多く出るかと思ったのだけれど、その時間のみで言えば以前の倍以上の作業効率が上昇することがわかったので、仕事量で見ると、トントンになるらしく特に何も言われなかった。
結構無理をしていた人がいたようで、いつも通りお弁当を食べたらそのまま一日二日寝ていたなんて話もちょくちょく聞くのだけれど、本当に大丈夫なのだろうか。素晴らしい作業効率上昇がついたってマリアさんにめっちゃ喜ばれたけど、私が作るってわかったせいで変なブーストしてた人がいたのでは…?なんて、不安に思った。
「雪白さんのせいではありませんよ」
突然かけられた声に、びくりと肩をはねさせる。マリアさんはこうやって私の心を読んだようなことをいうからびっくりする。私ってそんなにわかりやすいだろうか。お国柄ポーカーフェイスはそこまで苦手ではないと思っていたのは、思い込みだったか。マリアさんを見上げると、柔らかく笑って、長い指で私の目元をくすぐった。
カッと顔が熱くなる。マリアさん美形なんだからそういうことを不意にするのは本当にやめてほしい、女の人だってわかってても恥ずかしくなる。絶対顔真っ赤になってる、と自覚をしているけれど、目の前のマリアさんが格好良くて、視線をそらせない。
「私たちが王都へ行っていた十数日という時間で無理をしたものが多数いただけですから」
そんなことない、と言い募るような気さえ起きない、完璧な角度、完璧な表情、完璧な声のトーン。私はその計算され尽くした魅力に抗うことなく、コクリと頷いた。いっそ暴力とさえ言えるくらいの完璧なしぐさだった。あれは狙いすまされていた、と頭のどこかではわかっているのだけれど、逆らえる気がしない。思えば、特徴的な片眼鏡が、キラリと光っていてその奥の目が見えなかったから余計逆らい難かったのかもしれない。
私の反応に満足したらしいマリアさんがいつもの顔に戻る。と、ほとんど同時だっただろうか、厨房にアラートが鳴り響く。かなり大きな音で、驚きと同時に一体何があったのか、と不安になる。思わず、近くにいるマリアさんとジオールさんを見た。いつも通りの顔で、パチリと瞬いていた。日本にいた頃の携帯の緊急アラートを思い出す。
「珍しいですね、モンスターアラートです」
「…モンスターアラート?」
「ええ、モンスターが近くに現れたことを教えるものです。…そういえば、雪白さんはモンスターについてはご存知なのですか?」
モンスター…確か、初老の紳士の話では、魔法の源である魔力から生まれる存在で、…ん?言われたことをできる限り正確に思い出そう。
「…世界には、魔法が溢れており、その魔法の源でもある魔力からモンスターが生まれる。モンスターを倒すため冒険者という職業がある。魔王率いる魔法にあふれている魔族と、多くの王が率いるもっとも数の多い人族、それから、獣王が率いる獣人族、各地に散らばるエルフ族に、火山に血族で集まるドワーフ族といった種族が共存している。それぞれの平和を脅かすのはそれぞれの思惑以上に、大量に発生するモンスター。モンスターのボスを倒せば、少しは平和になるけれど、普通の冒険者では倒せない。だからそのために勇者がいる、って神様から」
言われたような気がする。けれど、つまり、この説明だと、魔族がモンスター操ってるみたいな印象受けない?あとめっちゃ世界平和でモンスターだけが問題みたいな。普通に魔族対別種族って聞いてるんだけども?教育された私からすると、モンスターよりも他種族の方が怖いんですけど。
「ああ…ならば、主人も交えて話した方がいいですね。行きましょう」
「アラートは…?」
「ハーレルとカスティーリャが居れば、対処できます」
自信満々に笑うマリアさんにあの二人は本当に優秀なんだろうなぁ、と頷いて、せっちゃんの部屋へと向かう。何か書類を見ていたせっちゃんに、仕事をしている、と衝撃を受けたのだけれど、そりゃ次期魔王様だもんね、仕事くらいするよね。マリアさんが先ほど私が話したことをかいつまんでせっちゃんに説明する。パチリ、と瞬いたせっちゃんは、なるほどなと頷いて、いつものように私をソファーに案内した。
「まずはモンスターの成り立ち…いや、魔力について教えよう」
モンスターは、魔力から生まれる。それは間違いないそうだ。けれど、どんな魔力から生まれるのか、それが問題らしい。魔力はつまり生命力。ある意味では命からモンスターが生まれているということだ。けれど、
「魔力は生命力。なのに、使ってもなくならない理由はどうしてだかわかるか?」
「…回復するから?」
「ああ。けれど、どうして回復するのかが問題になる。それに、体力と魔力の違いもわかるか?」
素直に首を左右に振る。せっちゃん曰く、魔力=世界の力とも言い換えられる。生体力は肉体そのものの耐久度(自己修復機能つき)と考えるとわかりやすい。その肉体に、世界の力である魔力を与えられることで、一つの生命として生み出されるため、生きとし生けるものは全て魔力を有している。
魔法のほとんど使えないような人間がいることを考えると、魔力が尽きれば死んでしまうため、肉体がリミッターの機能も果たしているのだろうか。問いかければ、ゆったりとした頷きが返ってくる。
「魔法というものの本質は、奇跡を起こすことではなく、魔力を循環させることにある」
「え?」
「どうして魔法に限界がないのか。それは、使えば使うだけ魔力が循環するから。ではどうして、循環させるのか。それは動かさなければダメになるものだからだ」
魔力についてのお話




