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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
こんにちは、あるじです
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3−13

ハーレムの主って、強制的な称号じゃん。なにこれ嫌がらせか。狙って取れるもんじゃなさそうだし、確かに強力にはなるだろう。けど…欲しいか、これ?一夫多妻か一妻多夫を強制的に求められるって結構な精神的負担だと思うんだけど。特に一夫一妻という世界観で生まれ育ってるから余計にそう思うのだろうけど。

王族のハーレムとか、救済措置のハーレムとかはいいと思うけど、私のハーレムってなにになるの。特殊性癖に対応するハーレム?嫌だわそんなん。私にはすべての性癖に対応できるような能力はない。しかも、今現在も不名誉かつ不本意な性癖対応だ。

だが、恋人云々言っていたから、私の覚醒とやらはハーレムの主だとばかり思っていたのだけれど、違うのだろうか。恋人の数とかだったし、そうだと思っていたけれど…でも、確かに、ハーレムで伴侶が力になるのに恋人はおかしいのかもしれない。

ついでだし、私の称号の他のものも調べてみようかな。ハーレムの主以外は…孤独を知る者、魔族の少女、料理人、と(神の一族)っていう謎の称号だったよね。基本的に嫌な予感がひしひしと、戸惑って手が止まっていた私にグラジリオスさんが念話で話しかけてくる。


ーー姫様、己のことを他の婚約者たちに伝えずとも良いのですか?


口に出してくれてもいいとは思うのだけれど、使ってみたいという理由かもしれないし、もしかしたら、彼に言われたと認識するのではなく私が自発的に発言するべきことだからかもしれない。そうだよね、一応成人するまで婚約者って話だったのに、勝手に婚姻関係結んでたら怒るよね多分。気が重いなぁ…。

いやぁ、自分が悪いとは思うけど、だからこそより気が重くなる。ああ、面倒だ。


「ナディアー」

「はい」

「せっちゃんとクレイ様とヴィクトール様…と、典医様に時間があったらお話ししたいって伝えたいのだけれど…」

「かしこまりました。皆様にお伝えしておきます」


にこり、微笑んだナディアはすぐに戻ります、と扉から出て行く。ありがとう、と見送ってとりあえず重たい辞典を閉じて、机に移動させる。足が少しばかり痺れている気がするのは気のせい…じゃ、ない!

くぅ、と一人唸りながら体を固める。グラジリオスさんがどんな顔をしているかなんて知りたくない。立っているわけではないのが救いだろうか。感覚が完全に麻痺している足をゆっくりとさする。いくつか調べるだけで血流が悪くなる辞典とは一体、なんて脳内で八つ当たりをしていた。

ふ、と大きな手が私の足に添えられる。白いもふもふの毛が生えているのだが、どうやら人型の手に鋭い爪と毛皮が生えているような形に近いことがわかった。ただ大きさは私とは比べ物にならないくらい大きいし、指の太さや長さなんかはもしかしたらヴィクトール様を超えるかもしれない。


「ありがとう、グラジリオスさん」

「…あなたの騎士なのですから、どうか、グラジリオスとお呼びください」


足をさすっていた手が、近くにあった私の手を柔らかく包み込む。握り込むと表現したほうがいいのだろうか。まるで赤子と大人みたいなサイズの違いにしょっぱい気持ちになりながらも、膝をついているグラジリオスさんを見る。キラキラと期待した目が非常に近い位置にある。どれくらいの近さかといえば、私のパーソナルスペースを当然のごとく侵略してきているくらいだ。恋人同士の距離ともいえるだろうか。

近すぎるような気がするのだけれど、夫婦ならこれが普通なのかもしれない。夫婦っていう実感ほぼゼロだし、白い結婚ってことが決まってるとはいえ、さすがにもう少し自覚するべきだろうなとは思う。自覚ってどうすればいいのかわからないのが問題だろうか。

いつも通りの現実逃避中もじっと待っているグラジリオスさんをじっと見つめて見る。虎だからイケメンかどうかというのはよくわからないけれど、青い瞳は表情ーーも、かなり豊かでいつもわかりやすいけれどーー以上にわかりやすいから、ホッとする。

ただ、私に名を呼んでほしいというだけの、なんの罠も、引っ掛けも、思惑もないその真っ直ぐさがありがたい。

彼に掴まれていない方の手をそっと獣の頭に触れさせる。想像していたよりも柔らかい毛を丁寧に流れに沿って撫ぜる。フェイスマスクみたいだと思った顔はしっかりとした感触を伝えてくるし、何よりも魔族よりも体温が高いらしい。じんわりと冷えていた私の手が温まっていく。目元を擽るようにさすって、なんだかアニマルセラピーを受けているような気分になる。


「グラジリオス」

「姫、さま」


恍惚とした表情をしたグラジリオスが私に近づいた瞬間。バァン、と聞こえてきた音だけで扉が壊れそうな勢いで開けられたとわかる。苦笑しながら、視線を扉へ向けた。


「せっちゃん、話とは…そいつのことでいいのか?」

「そうだよ、せっちゃん。ヴィクトール様とクレイ様も典医様も座ってもらっていいですか?」


まさか3人が揃うとは。ナディアの後ろにはマリアさんの姿も見える。おお、みんながみんな揃った。マリアさんとナディアが椅子を準備してくれたので、マリアさんとナディアとグラジリオスの3人を除いて全員が座ったところで話を始める。さっさときっぱりといってしまったほうがいいだろう。


「色々あって、グラジリオスを私の騎士にしてしまったので、そのまま婚姻関係を結びました」

「…色々、とは?」

「簡単にいえば、貴族のお嬢様たちに絡まれた」


せっちゃんが私のために用意してくれたグラジリオスをバカにされてつい、とヘラリ、笑っておく。本当はもっといろんな要素が混じり合ってはいたのだけれど、いちいち全部を説明するのは少々面倒くさい。覚醒がハーレムの主ではない可能性を知った今では、攻略対象にグラジリオスが混ざっていた理由が異なるかもしれないという結論に至ったのもある。

はあ、とせっちゃんの深いため息が響いた。その表情は別にそこまで悪くはない、仕方ないなぁと言いたげだ。よし、せっちゃんはセーフ。そしてせっちゃんの許可さえ取れれば、私にはなんの問題もない。

だって、私の保護者はせっちゃんただ一人だけだから。

保護者に事後報告

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