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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
こんにちは、あるじです
46/90

3ー10

読んでいただいて、ありがとうございます

グラジリオスさんに抱きかかえられて同じ道を帰る。私の手の中には部屋から出る前に渡された称号の辞典があるのだが…これが非常に分厚い。俗に言う自立する説明書、もしくは自立する鈍器以上の分厚さだ。広辞苑や大辞泉では太刀打ちできないだろう。立方体なんじゃないかとすら思う。

抱き上げてもらっている身の上で言うのもなんだが、これめちゃくちゃ重い。腕にずっしりときており、とても申し訳ない気持ちになる。グラジリオスさんが筋力に優れている隷兵(ファイター)だからって重さを感じないわけではないだろう。それに、この凶器レベルの辞典に軽量化の魔法がかかっているわけでもない。ただ、検索しやすくなる魔法だったり、不正な使い方ができないような魔法だったりがかかっているので、それも致し方ないのだろう。重さは後回しにしたのか、もしくは、盗難防止策なのかもしれない。この辞典そんなに数がないって言ってたし…そんなものをポンと貸してくれるあたり本当にクレイ様の人となりというか、私の重要度というかがうっすらと透けて見えますよね、こわい。


「グラジリオスさん、大変だったら降ろしてね」


どうせ敬語を使うと、そのような話し方は云々と言われるのがわかりきっているので、頑張ったのだが、何かが違う。これは部下への命令ではなく子供に言い聞かせる時の言い方ではないか。しかも頑張ってお手伝いしてくれてる子が、許容を超えていそうで心配で、それでも取り上げることができないような。グラジリオスさんは見た目的にも成人男性だから、この対応は違う気がするのだが…命令の仕方ってどうすればいいのだろう。私、上に立つのすごい苦手だから…と逃げてきたからどうにも難しい。

あと幼少期から相手の気持ちになって考えろと言われ続けた弊害じゃないかな。自分が下の立場になった時を中心に考えてしまうんだ、と言い訳をしておく。別に性格がいいわけではない。ある意味いい性格(・・・・)をしているのかもしれないけれど。自分が下になってされたくないことをしてしまったら、立場が逆転した時に何をされるかわからない…なんて。結局は自分が可愛いのが私だ。

そんな私に気づいてから、きっと気がついていないのだろうけれど、グラジリオスさんはニコリと厳つくて険しい虎の顔を穏やかなものへと変える。


「ご心配なく。雪白様は羽のように軽いです」

「…負担になっていないなら、良かった」


この反応であってる…?羽のように軽いって何、そういう例えがあることは知ってるけど、例えられたことがないから全くわからない。誰か答えを教えてほしい。教えてくれたら魔力あげるから、お願い。よくお姫様抱っこされる人とかいない?してる様が似合うのはマリアさんだけど、マリアさんに聞けば本来の答えがわかるのだろうか。でもマリアさん女の人なんだよなぁ…しかも王女様だから、むしろ本物のお姫様だよね。

私のそんな答えでも満足なのか、柔らかく微笑んだまま、おまかせくださいと頷いてみせる。まじか、あれでいいのか。なんだかこの獣人(グラジリオスさん)ってチョロイン属性の気がしてきたぞ。女の子(ヒロイン)じゃないけど、今までの行動からすると絶対チョロインだ。なんだかよくわからないけど騎士にしたら突然今までの無関心が好意にぐるりと入れ替わったのだし、それほどまでに騎士というものが重要視されているのなら、きっとせっちゃんも教えてくれていたと思う。男女間でしてはいけないこと、という中にも騎士云々というのは一度も言われてことがないのだから。ただ、唯一の気がかりと言えば、ナディアがどことなく納得している風だったことだろうか。暇なのだし、部屋にこもっているうちに聞けるだろうか。

帰り道は特に誰にもすれ違うこともなく部屋に到着した。また同じように絡まれるのだけは面倒だったので、ホッとした。グラジリオスさんと視線を合わせて、笑いかける。


「ありがとう、グラジリオスさん」

「いえ」


首を左右に振って、ただ満足そうな顔をする。随分と幸せそうで見ているこちらがなんとも言えない表情になってしまう。獣の頭をしているのに魔族の一部よりも表情豊かなのは、感情の振れ幅が大きいことで表に見える部分が大きいからなのだろうか。丁寧な動きでソファーに座らせてくれる動きは、本当に騎士様と言っても過言ではない。

細やかな気遣いも、動きの一つ一つも、優雅で無駄のない計算しつくされた動きだ。やはり、というのはおかしいのかもしれないが、貴族であったと同時に、彼は元々が騎士だったのではないか。そう確信を持って言えるくらいには、騎士として文句のつけようもないほどに完璧だ。


「雪白様」

「ん?」

「本当に、己を騎士として迎え入れるつもりですか」

「んー?ナディア、」


困った、とナディアの名前を呼べば、苦笑した彼女がいつの間に入れたのか、お茶を私の元に差し出しながら告げる。


「古の時代では主人は騎士へと信頼を預ける見返りに、騎士は主人の手足となりましたので、騎士の言葉は主人の言葉となり、同銘(おなじことば)の関係と言われておりました。また古からの意味により、魔族の騎士というのは寿命まで己を守るだけの唯一の相手と選ぶという意味でもありますので、雪白様のように“ハーレムの主”がない場合はイコールで伴侶となります。よって、現在では主従関係であり婚姻関係の一形態です」

「うわぁ…また“どうめい”シリーズ…別にグラジリオスさんが嫌じゃなければ、私が何かいうことはないよ」


どっちにしろ、私のステータス的にはもう騎士様換算されてるしな。つまりすでに婚姻関係ってことになっている訳である。そりゃ、ステータスの詳細も恋人換算しますよね。私の一方的な発言だったと思うんですけど、その辺りどうなんでしょうか。あと、なんで誰も騎士について私に注意しなかったんだろうね?ナディアの反応的に忘れてた、もしくは関係ないと思ってたって感じだけど。

っていうか、私貴族に対して、「次期魔王様が私に自分の奴隷を旦那にしろってくれたんだよー!」って発言してたってことか。黙って去りもするわな、なんて返していいかわからないもんね。奴隷を旦那にしてんのかよ、と言いたいところだが、その奴隷は次期魔王の奴隷でほとんどの相手の命令に逆らえる。しかも私がハーレムもちであることは知っているだろうから、唯一の旦那という訳でもない。あんたの旦那なんて可哀想とか言ったら、自ら望んでるヴィクトール様とクレイ様はなんなんだって話になる。ある意味、正解を選べたのだ。

気がついたら実質的既婚者

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