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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
こんにちは、あるじです
43/90

3−07

することがない。暇だ。

部屋のふかふかなソファーに座ったまま、ナディアの淹れてくれた美味しいお茶を飲みながら、ため息をつく。砦と違い勝手に出歩くことはできないし、仕事があるわけでもない。ここ数日頑張って自室で耐えてたから褒めて欲しい。

たまに相手をしてくれていたせっちゃんも今日は予定があるらしい、やるべき仕事がないとやることがないは別物ということだ。せっちゃんがいないので、勉強をすることができるわけでもないし、本を借りて読もうと思えばナディアに借りてきてもらうか、この城の中を出歩かなくてはならない。となれば部屋の中にあるものでなんとか時間を潰さなくてはいけないのだけれど…緊急に用意されたこの客間にはほとんど何もない。最後に、この部屋にいるのが私とナディアとグラジリオスさんの3人であることが一番の問題だ。

ナディアに本を取ってきて欲しいとお願いすれば、ここにはグラジリオスさんと私が二人きりになるという状況になるわけだ。絶対に嫌だ。正直、グラジリオスさんはガラス越しに手を合わせてくれたし、嫌いではない。嫌いではないのだが、それとこれとはちょっと違う。

…ステータスでも確認しておこうかな。あとでクレインス様から称号の本も借りられるはずだし、その時にしようかと思ったけれど、ここまで暇なら別に構わないよね。基本ステータスに大きな違いはなく、相変わらず数値が見られない体力と魔力に辟易しながらも、詳細を開いた。


詳細

殺人 なし、基準を満たしている

暴行 なし、基準には足りていない

淫行 なし、基準を満たしている

暴食 なし、基準を満たしている

睡眠 良好、基準を満たしている

問題 自覚がない

好み 年上

攻略 セヴィア  (魔族) 友人?

   ヴィクトール(魔族) 婚約者

   クレインス (魔族) 婚約者

   フィラード (魔族) 婚約者

   グラジリオス(獣人) 奴隷

覚醒 あと2人の恋人が必要

 覚醒させますか?(必要数に足りていないので失敗する可能性があります)

 YES NO


「は?!」


なんで覚醒がこんなに近くになってるのかな?!婚約者って恋人換算なのか、確かに恋人かそれ以上ではあるだろうけど、確定なんだ?!(候補)って前付いてたのに!あとせっちゃんの友人にクエスチョンマークつき始めたんだけど、どういうことなの。友達じゃ無くなってきたって?被保護者の方が確かに正しいと思うけど、攻略ってくくりの中では嫌な予感しか感じない。あとグラジリオスさん入ってきたのは絶対おかしい。誰の策略だ。いっそのこと、ヴィクトール様とかクレインス様に聞きに行くべきかもしれない。多分過半数が認めたらどうのこうのってやつに当てはまったに違いないのだから。

これは外に出ないとか言ってられない。慌てて立ち上がって、ナディアに出かける準備をお願いする。着替えてから髪型を整えて、軽く化粧をする。可愛らしい姿に変わる自分に表情がそげ落ちるのを感じるが、いい加減慣れよう。それにこんな可愛らしい服を着られるのは若い時だけだ。そのうち変えるのだから楽しめる時に楽しんだ方がいい。よし、と気合を入れて、鏡に向かってできる限り可愛く笑ってみる。使えるものはなんでも使う方向性で行こう。

誰の元へ行くべきだろうか。せっちゃんは多分捕まらないだろうし、一番会いやすいのは、クレインス様か典医様だろうか。けれど、典医様はクレインス様よりわからない相手だ。なぜか婚約者になってしまってはいるけれど…と思ったところで気がついた。私体調悪い設定にするんだった。元気よくクレインス様に会いに行くとかできない。ええと、人に見られていなくても、体調不良な感じで歩くことにしよう。


「ナディア、クレインス様と典医様、どちらに会いに行く方がここから近い?」

「ここからですと、丞相様です」

「せっちゃんとヴィクトール様を考えても、クレインス様が一番近い?」

「はい」

「では、クレインス様に会いに行きましょう。私体調不良なので、歩くのがちょっと遅くなるかもしれないけれど」


そう言ってから、眉を下げて笑う。ナディアの手を借りて、フラフラとした足取りで部屋から出る。すぐ近くにグラジリオスさんが付いてくるのを確認しながら、クレインス様の執務室へと向かう。一番近いとはいえ、ある程度距離はある。道中絡まれないことを祈ったのだが、私の祈りは初老の紳士な神様宛でないと意味がないらしい。

ドレスを着た若そうな女性数人…多分、なんらかの事情か理由で城へ来た貴族だろうと判断する。別に彼女たちが必ずしも絡んでくるというわけではないが、目つきをみるとどうにも逃げられそうにない。ここで面倒なことになるのは避けたいのだけれど、無理かな。ちらり、とグラジリオスさんを見る。彼は私をじっと見つめていて、それから嘲るように口角を吊り上げる。笑った?彼女たちと私たちの間に立ち塞がったグラジリオスさんに、普通の女性であろう彼女たちは少し怯んだらしい。が、獣人のくせに、と侮辱するような言葉を発した。

いや、この世界的には合ってるのかもしれないし、むしろそれ魔族めっちゃ言われてるんだろうなとも思うけれど、思わず眉を寄せて彼女たちを睨みつける。なんですの、とまさかのお嬢様言葉で私を睨みつけて返してくる彼女たちに、腹が立って傷つけてしまいたいという衝動を感じる。だが、衝動のままの行動は後悔しか生まないと日本で経験している。一度深く息を吐く。


「グラジリオスさんは、せっちゃん…セヴィア様からお預かり(・・・・)している、“私だけの騎士様”なんです。素敵でしょう?」


笑え。自分に言い聞かせて、彼女をまっすぐに見つめた。獣人のくせに、とグラジリオスさんをバカにすることは、彼を奴隷としている次期魔王様であるせっちゃんをもバカにする発言なんだと、気がついてくれれば、この場はなんとか乗り越えられるだろう。そう思っての発言なのに、どうしてグラジリオスさんまで信じられないとでも言いたげな目で私を見てくるかな。そこは堂々としててくれ。が、私の気持ちは彼女たちに通じたのか、くるりと踵を返して去っていく姿にホッとする。

精神的な圧力から解放されて、額に手の甲を当てながらため息をついた。まあ、なんとかなったと言えるだろう。クレインス様のところに行かなくては、とナディアに手を伸ばすと、ふわりと体が浮かび上がった。


「え、」

「お連れいたします」

「…お願いします」


面倒なので、何をいう気も起きず、そのままグラジリオスさんに運ばれることを選んだ私は、すぐにその選択を後悔することになった。

王道の絡まれイベント!(短時間)

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