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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
こんにちは、あるじです
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3−02

ヴィクトール様とクレインス様、典医様は当然のごとく仕事がある。名残惜しそうな顔を向けてきたが、笑顔で見送った。別に私行かないで欲しいとか言ってないし、むしろ社会人としては私にかまわず仕事していて欲しい。しかも、ナンバー2と命に関わる職だ。他の仕事が大切じゃないというわけではないが、重要度というものは何ごとにも存在している。ただ、婚約者(候補)の二人が婚約者として、とお小遣いを渡してきたのは素直に受け取った。先立つ物がないと何もならないし。

せっちゃんはいいのか、という話になるが、次期(未来の)魔王は基本的に仕事が存在しない。と、いうのも今までの魔王は体力的に衰えを感じ始める頃に次代の魔王が生まれていた。今の女王様はまだまだ現役だ。あと数百年は彼女が統治するだろうし、そうするべきだと言われている。だからこそ、せっちゃんには仕事がない。あるとすれば、砦と城の防衛くらいのものだが、それは今カストさんとハーレルさんが行なっている。

と、いうわけで、私とせっちゃんとマリアさん、そしてナディアの4人で移動することになった。城から商業地区への移動は移動魔法ではなく、浮遊車(フローチ)と呼ばれるもので行うらしい。車のような座席のついたものなのだが、一番の違いは宙に浮いていることだろうか。ふよふよと、乗り込むときは地面から数十センチくらいの高さを、走り始めるとだいたい3メートルほど上空を飛ぶ。歩くこともできるが、なかなかの距離とのことなので、今日は浮遊車を使う。

ちなみに、浮遊車を使う場合、一人は駐車場的な場所で待っている必要があるらしく、今回はマリアさんがその係を買って出てくれた。ナディアはメイド仲間と家族にお土産を買います!と意気込んでいたので、是非とも楽しんでほしい。

乗り込んだ時の浮遊感は、意外と感じないもので新幹線くらいの振動だった。ホッとしたのはいうまでもない。


「雪白様は、何を買う予定ですか?」

「とりあえず、ヴィクトール様とクレインス様にお礼。ハーレルさんとカストさんにお留守番のお礼とジオールさんとレリィナさんにお土産…かな?」

「随分と買う予定なんですね」

「まあ、出るのは全部ヴィクトール様とクレインス様にもらったお金だけどね」


苦笑して告げれば、婚約者なのですからそれくらいは当然なのですよ、とナディアが教えてくれた。既に(候補)という存在がまるで消えていて泣きたい。嫌な予感がするのでステータスについてはしばらく見ないでおきたい。ステータスまで(候補)が消えてたらと思うと、現実逃避しかできない。

なんて会話をしているうちにどうやら、商業地区へと到着したようだ。当然のごとく音も慣性も感じさせず止まった浮遊車を降りた。同時にせっちゃんに逸れないとようにと繋がれた手を諦める。買い物さえできればそれでいい。ある程度の開き直りと無駄なポジティブさを持たないとこの世界ではやっていけない。


「せっちゃん、案内お願いしてもいい?」

「ああ、任せておけ」


目を細めるだけの笑顔とは言い難い表情だが、これが自負の顔であると私はしばらくの付き合いでわかっている。彼がそういうからには任せてしまっても問題ないのだろう。せっちゃんが案内するままに文房具屋だったり、武器屋だったり、本屋だったり、小物屋だったりと様々な店を見て回った。そのそれぞれどれもが、見たことのないようなものと、あちらと同じものと、異常に性能が上がっているものを売っていて見ているだけでも楽しかった。

お金の使い方はせっちゃんが実地で教えてくれました。既に紙幣が中心となっているこの世界では、物価とそれぞれの金額を習うだけでよかったのが助かる。勉強したからこそ、ぽん、とポケットから軽く出された金額が実質異常だと知ったのはきっともっけの幸いと表現できるのだろうか。


「ナディア、ここで待て」

「かしこまりました」


突然、そうナディアに命令したせっちゃんは、おいで、と私を誘う。かなり大きな建物の入り口には、武装した魔族が二人。せっちゃんを見ると、どうぞ、と扉を開いた。置いて行かれないようについていくと、一人の身なりの綺麗な…それでいて何処と無く胡散臭い人が立っていた。顔の半分が仮面で隠れているのが、とても特徴的だ。大げさなほどに一礼して見せた後、中性的な声で笑う。


「いらっしゃいませ。本日は何をお探しで?」

「何も。ただ、連れに別の種族を見せておきたくてな」

「なるほどなるほど。ではこちらへどうぞ」


くるりと踵を返した支配人らしき人物は、大きな部屋へと通してくれた。テレビで見たことのある刑務所の面会室のような場所だ。別の種族を見せる、というからには奴隷を紹介する施設なのだろう。席に案内されて、不安からせっちゃんを見上げる。政府が奴隷を管理しているのだから、ここは公的な施設だとわかっているのだが、奴隷という存在が身近ではないし、彼らは基本的に魔族を殺そうとしてやってきた相手なのだ。『種族として殺されそうになる』なんて経験は今までないからか、自分に置き換えてしまって、恐ろしさを感じてしまう。

ふ、とガラスらしきものの向こう側から尖った耳が特徴のエルフが現れる。次に特徴のない人間、背の低いドワーフ、最後に様々な獣の頭を持つ獣人。ただ、獣人は種属が多いのだろうか、うさぎの頭だったり猫の頭だったり、様々な獣の頭をしている。獣人については何人かが出てきたけれど、最後には一人だけが残っている。

彼らの目は、私たち魔族と違い人間のものと等しい。

はっきりと種族が分かれているのを見ると、初老の紳士と会ったあの場所にいた少女はきっとエルフで、少年は人間かドワーフだろう。


「奴隷は必ず耳に装飾品をつけている」


言いながら、せっちゃんが指し示したのは、エルフの耳に開く3つのピアス。そして人間の耳は左右合わせて2つ、ドワーフも同じく2つ、獣人は1つ。個数にも意味があるのだろうか、そう思いながらせっちゃんを見上げれば、心得ているというように説明してくれる。

どうやら何用の奴隷なのか、ということに対応しているそうで、エルフの3つは役隷(レイバー)、人間とドワーフは農隷(ファーマー)、獣人は 隷兵(ファイター)だ。

奴隷用(政府公認)の耳飾りは奴隷専用の店でしか購入できない特別仕様だと聞いて、間違えることはないのだとホッとした。

奴隷と面会

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