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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
どうも、じきまおうのちじんです
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2−07

ナディアが天蓋を開けてくれるまで十二分な程に心地よい眠りを体感していたのだが、起こされてからはトントン拍子に話が進んでいった。

いつもより長い時間をかけた身支度をして、朝食をとって、そして、せっちゃんと将軍、マリアさんとナディア、それから私の5人で王都へ。ハーレルさんとカストさんは砦の残って指揮系統を一手に引き受けることになっている。移動魔法の世界が回る感覚は言うならば、水中で回転するようなイメージだろうか。あまり得意ではないけれど。

せっちゃんに右手を差し出す。と、左手を将軍に取られた。じゃあ将軍が連れていってくれるのだろうか、と右手を戻そうとすれば防がれるようにせっちゃんが掴む。まるで夫婦の間に挟まれる子供のような身長差である。子供身長な私を中心に手を繋いでいることがより一層家族感をかもし出す。

マリアさんがナディアと手を繋いでいるのを見た瞬間、ぐるり、と視界が回る。気がついたときはひどく煌びやかな室内。移動魔法は室内から室内も移動できるらしい。


「お待ちしておりました、次期魔王様、将軍様」


年若い少年が綺麗な一礼をしてみせる。執事といった感じではないから、近侍と言うやつだろうか。魔族の狼の目…では、ない?尖った耳は、魔族の特徴ではない。これは、エルフの。私の思考に気がついたのか、せっちゃんがあとで教える、と腰を折って耳元で囁いた。わざわざそうする必要はなかったんじゃないかな。でも、知りたいことだから感謝はする。

なんとも言い難い気持ちを押さえ込んだせいで、多分情けないようななんとも言えない顔のまま感謝を告げる。せっちゃんは楽しそうにニヤリと笑った。怖いなぁ。

エルフだろう少年が、前を歩きどこかへ案内してくれる。マリアさんとナディアもいつのまにか私たちの後ろにいた。魔法を使った移動は音もしないとかすごいね、本当に魔法は万能だ。


案内されたのは、大きな扉のある、赤い絨毯がひかれた場所。扉の向こうって謁見のための場所じゃない?え、王様ってこんな直接的に会いに行くものじゃないよね?もっとこう、順番を待って、長い時間かけて許可されて、みたいなものじゃ?思わず足を止めて首を傾げるが、両腕が引っ張られたことで足が出る。と同時に理解する。

次期魔王様に将軍様じゃぁ、どんな理由より先に謁見できるよね。身支度も長い時間をかけるわけだよ。

豪華な重鎮二人にエスコートしてもらった扉の先には、3人いた。

まずは、20代半ばくらいの中性的な男の人。魔族だとは思うけれど、本当に綺麗としか表現できない。光を吸収しているような紫色の長い髪は重力に逆らうことなく服の上を滑るように落ちている。今の時期の空を思わせる茜色の瞳は切れ長で、静寂と知性を湛えている。鼻筋はすっと通っていて、薄い唇は真一文字に結ばれているのに、受ける印象は柔らかい。せっちゃんが着ているのと同じようなローブらしき服がオフホワイトだからだろうか。彼自身と装飾や中の服が映えている。自然の雄大さを美しいと思うような調和した美しさだ。

次に、10代の半ばほどの少年。先ほどの少年とは違うが、彼もエルフらしい。尖った耳に、輝く金色のショートヘアを編み込んでいる。目は若草を思わせる鮮やかな緑色。冷たい印象を与えるが、かなり整った顔をしている。どこかで聞いた情報を元にするなら、左右対称に整っているからか。ただ、少しだけ困るのは、目のやりどころのない服装だ。薄く、透けるような布地を何枚重ねた踊り子のような衣装。一見少女にも見える彼を一瞬で男だと判断できた理由は、察してもらいたい。

最後に、中央の玉座に座る迫力のある美女。金と銀の肉食獣だと、そう思った。銀髪は長く、褐色の彼女の肌に沿うようにして魅力を引き出す。黄色の目は恐ろしいほどにギラついて輝いた。豊満な肉体 (わがままボディ)はきっと、特殊性癖を持つ男性以外は引き寄せられるに違いない。布面積が妙に少ないのも、もしかしたらそう言う理由だろうか。一見すれば妖艶な女性で終わるのだろうが、瞳の強さがそれを許さない。王だ、と感じた。恐ろしい人だ、とそう思う。


「おいで?」


褐色の手が私を誘う。爪までもを綺麗に整えられているのが、離れているここからでもよくわかる。せっちゃんと将軍の手が離されている。これは、近づいていいのだろうか?下手に近づくと不敬罪とか言ってきられない?大丈夫?

不安になって、せっちゃんの顔を見上げる。不機嫌そうなワイルド系イケメンがいる。私の方を見ていたらしいのだが、目があった途端驚いた顔をする。


「せっちゃん、どうした?」

「魔王様に挨拶なしで近づいたら不敬罪とか言って斬られたりしない?」


困った、と思いながら、小さな声で問いかける。本当はこれもいけない気がするけど、これくらいなら許してほしい。せっちゃんは目を丸くして、私の手を取った。心底楽しそうにくつくつと笑い始める。悪役の笑い方だ。ワイルド系な顔立ちが愉悦に歪んでさらに悪役っぽい。


「俺の勝ちだな、ダリア」

「そこでヴィクトールじゃなくて、お前に確認するあたりが憎いな」


魔族の女王はからりと笑って、大丈夫だ、と私に告げる。せっちゃんも私の腕を引くように女王へと近づいた。今日はハーレルさんの選んでくれた少女趣味なロリィタなのだが、靴がリボンで留められているせいでつい足元を見て歩いてしまう。

ふ、と左手が取られたので、将軍が今にも転びそうな私に手を貸してくれたのか、と顔を正面に上げる。キラキラした目の綺麗な人がいた。ひゅっと息を飲む。本当に綺麗だ。肌の色までも計算されているかのように。目を見開いて踏鞴を踏む。ふわりと抱きとめられた。


「理想的だ」


せっちゃんよりも高いだろうかーーもちろん男性の声域なのだけれどーー先ほどの綺麗な人がそう呟いた。現実に引き戻される。なぜこうなっているのだろうか。そもそも理想的、とは。もしかしたら、この綺麗な人も女王様(グラマラス)に興味のない特殊性癖(ロリコン)なのだろうか。綺麗なのに勿体ない。

そう思っていたのだが、どうやら少しばかり様子が違う。


「細い四肢、折れてしまいそうな薄さ、そして何よりも低身長!にも関わらず健康体の歴とした教養のある女性!」


恍惚とした声に一瞬で空気が凍った。

魔王様は女王様

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