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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
どうも、じきまおうのちじんです
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2−06

「ダメな理由って、ありますか?」


もう一度念押しで告げる。悪鬼邪神でも見たような真っ青な顔をした次期魔王の部下3人は勢いよく首を縦に振った。身分や性別を無視して寄り添うように互いの体ごと自分自身を抱きしめる様子は酷く滑稽だ。滑稽であるからこそ、私には理解ができない。一体何が問題だというのか。

もうお城も城下もほぼほぼ完成と言って過言ではないから、厨房で魔法を使う役割も終わった。何もせずにいるのは嫌だから、今も継続でお手伝いしているけれど。せっちゃんが求めるのは友情であり、別に色恋沙汰じゃないからどこにいてもいい。同盟と同命の言葉遊びについては、この際気にしない。


「それに、将来を約束された次期魔王様の知り合い?友達?よりも、特殊性癖を持つ将軍様の嫁の方が身元を確立させやすいし、面倒ごとに巻き込まれないでしょう?」


次期魔王様の周りなんて、精査されてなんぼ(・・・)だ。今は砦だからいいかもしれないけれど、王都には貴族がいるのだ。警戒しすぎるほどにしておいて損はないだろう。同命についても神様にお願いすれば、なんとかなりそうな気がしている。

逆に、特殊性癖を持つ将軍様の“嫁”であれば、やっと将軍が身を固めることができた(・・・)とどちらかといえば歓迎されるだろう。同時にチャンスを逃せば要職に就く将軍はほぼ確実に独り身だと想像だに難くない。若干後ろ暗くてももうすでに将軍様のものになっていれば、文句はそのまま将軍様へ向けられたと同意。加えるなら、若返った私の体はわからないが、以前は別に生娘なわけでもなかったから、奥さんとしての役割もちゃんと果たせるはずだ。

つらつらとメリットを考えていれば、目の前のマリアさんが驚いたように目を見開いている。どうしたのだろう、と首を傾げた。


「考えられているのですね」

「流石に考えますよ」

「雪白ちゃんってただぼーっとしている訳じゃないのね」

「…そんな風に見えてたんですね」


そうですよね、子供に見えるってことはぼーっとしてたり、考え事しているように見えなかったりして、大人っぽさを感じられないってことですよね。やさぐれた気持ちになりながら、話題を変える。

現状の3人が面倒臭かったから、というのもちょっとあるけれど、ほんのちょっとだ。本当だよ?


「まあ、嫁に行くかどうかはおいておくとして。男性からのアプローチって、どんなものがあるんですか?」

「食事に誘ったり、二人きりになろうとするのは当然として…魔力を流し込むのは完全にアウトよ」

「本来なら痛みを伴うはずなのですが、雪白さんはそれがありませんから…ふとした拍子に流し込まれでもしたら大変なことになりますからね」


次期魔王(せっちゃん)的な意味でも将軍(ロリコン)的な意味でも、(流し込んだ相手が)大変なことになるってことですかね。怖いです。

自衛はしっかりしましょうということは心に刻んでおこう。ナディアにもあまり露出のないように調整してもらえば、素肌が触れ合う必要のある魔力交換は行い難くなる、それで大分防げるはずだ。

他には?とナディアに視線を向けると、彼女は眉を下げて、泣きそうな顔で告げる。


「男性側ではないのですけど…こちらを威圧している相手に対して笑いかけるのはおやめください」

「…まさか」

「主人の側にいることが裏目に出たのか」


ハーレルさんとマリアさんが天を仰いだ。すごい、これはもう、“お手上げだ”ポーズに違いない。2人はフラリと立ちあがり、明日は早いから寝ていなさい、と私の頭をそれぞれが撫でて部屋を出て行った。

完全に子供扱いして行ったんだけど。なんで最後に爆弾落としたの?別にいつも通りおやすみ、で終わりでよかったよね。なんてナディアに訴えかけたのだが、呆れたような暖かい目で、シャワールームへ押しやられた。

滞りなく準備されたお風呂の時間に駄々をこねるのは、本当に子供になってしまう気がして、言葉を飲み込んでお風呂に入る。お風呂から出れば、ナディアが髪を乾かしてくれて、そのままベッドにさり気なく誘導されて、寝かしつけられた。


「おやすみなさい、雪白様」

「…おやすみ、ナディア」


茜色が差していたベッドの上が、天蓋を閉じられることで真っ暗闇になる。ふかふかのベッドは私を包み込むようにじんわりと温めてくる。ああ、考えなくてはいけないのに、頭が働かない。

ズブズブと飲まれていくように、私の意識はすぐに落ちて行った。


「んん…ん?」


ふかふかベッドに包まれたままぼんやりと目を開く。にぃ、と弧を描く悪いオオカミみたいに大きな口。髪が丁寧に梳かれている感覚がある。果てまで晴れ渡ったような深い色には星が浮かんでもきっとおかしくないね、とぼんやり口にした。


「もう少し眠っていろ」


バスよりのテノールで、心地よい声。振動するような響きに誘導されるようにゆっくりと瞼を落とす。いい子だ、と頭を撫でられたような気がするが、気のせいだったのかもしれない。

次にはっきりと目が覚めたのは、ナディアの悲鳴が響きわたったからだ。はね起きるように勢いよく体を起こして、あたりを確認する。

ベッドの上を移動して、少しだけ開いている天蓋から外を覗く。茜色が差し込む向こうで、怒っているナディアと駆けつけたらしいマリアさん。それから優雅にお茶を飲んでいるせっちゃんと将軍。

…ここ、私の部屋、だよね?彼らが座っている椅子も、ティーカップの置いてある机も、視界に入るドレッサーも、ハーレルさんが選んでくれた白と桃色の空間だ。あの二人の似合わなさやばい。現実逃避していると、マリアさんの女性らしい高さの怒号が響いた。


「嫁入り前の雪白さんの部屋でお二人とも何をされているんですか!」


ああ、これ面倒くさいやつだ。

天蓋を少しだけ開けている私にナディアが気がついて、閉めるようにと軽いジェスチャーで伝えてくる。怒られたくないし、まだちょっと眠いから、言うことを聞くことにした。そっと天蓋を抑えていた手を離して、真っ暗な空間に戻る。瞬間的に静寂が訪れる。どうやら、この天蓋は光だけでなく、音も遮断してくれるらしい。

だから、いつもナディアが開けて声をかけてくれていたのか。いつも熟睡できて、日本でも欲しかったなぁ、とベッドに四肢を投げ出しながら考える。私が3回くらい転がっても落ちない大きなベッドなんて、きっと私の部屋になんて入らなかっただろうけど。

自分の想像がおかしくなってクスクスと笑っているうちに、もう一度夢の世界へと旅立った。

恋愛よりも自己保身

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