1ー13
「さらに付け加えると、神になれる“種族”にも決まりがある」
戦の神である長兄神は人間で対応しているのは攻撃魔法、農業の兄神は自然と共に生きる獣人が、魔法は回復魔法に対応している。商売の長姉神はドワーフと定められていて付加魔法を司っており、愛の姉神は限られた中で生きているエルフで障壁魔法に。旅の弟神は魔族で移動魔法…とはいうけれど実際は空間・時間魔法に対応している、知恵の末娘神は全ての種族がなれる唯一の神だけれど、一生に得られた知恵からその地位につくせいか魔族かたまにエルフがなるくらいらしい。当然、生活魔法に対応しているのは最後の知恵の神だ。
ということは、やはり種族によって得意不得意があるのだろうか。もしくは使用可能不可能とか…魔族はその括りに入らないのかな…他の種族の10倍前後の差があるって言ってたよね。
前に言われたことを脳内で復習しながら話を聞く。少しずつでも繋げていかないとすっかり頭から抜けてしまいそうだ。
「神様たちと種族と魔法には関係があるの?」
「基本的には種族固定の魔法だな、人間なら必ず攻撃魔法が使える…とはいえ他の魔法が使えないわけでもない」
「なんとなくわかった…魔族が圧倒的に魔法を使えるのはどうして?」
「簡単に言ってしまえば、魔力と魔法への理解の問題だ」
だから時折、人間やエルフにも大魔法使いと言われるような存在が生まれてくる。そう続けられた言葉に、イレギュラーはあるらしいと判断する。きっと神様の種族が定められているということも、ハーフの存在が何があっても生まれない、という状況に繋がるのだろう。
…待って、もしかして、だけど。
「魔族が嫌われてるのって…神様の数?」
「ああ、よくわかったな」
そう言って、せっちゃんはなんともないような顔で優雅にお茶を飲んだ。カップを持っているのと反対の手を伸ばして私の頭を撫でる余裕さえ見せて、軽く肩をすくめた。
一定して全ての種族が選ばれる専用の入り口がある、けれど、残り一つの末娘神は、まさかの自由枠だが…基本は魔族ばかりで時々エルフなんていえば、ほぼ魔族固定と変わらない。そうなると、弟神と末娘神は魔族で、神の中の三分の一は魔族。そこに魔神と主神を加えるとーー主神は魔族ではないけれど、それ以外の種族でもないのだから、明らかに魔族が多い。
まるでそれは種族としての優越を表しているようで、確かにそれは反感を買うだろう。しかも魔力が多くて寿命も長い、魔法という点ではほぼ100%勝つことができない。そんな相手がいたら、確かに迫害の対象になってもおかしくはない。
とは思うけれど、よくよく考えたら、魔法の力が弱いのは彼らが魔神を拒絶したから…じゃなかった?彼らも魔神を信じていれば、魔力と寿命に関して大きな差は生まれなかったのではないか、と考えると、魔族の種族的な特徴は魔法じゃない可能性もあるのでは?それとも、魔族の信仰すら神話は予言していた?
なんて考えてもわからないことをとりとめもなく考えるのは、楽しい。けれど、今はそれは重要じゃない。本当に私に必要なのは、知ることだ。この世界の常識を、そして知識を。
そう思って、せっちゃんに向き直る。緩やかに微笑んだせっちゃんは、私の意思を読み取ったように、魔法について話してくれた。それぞれの魔法でできることを話してくれているうちにお昼になって、二人でお弁当を食べる。
食べ始めた段階で、マリアさんがやってきた。
「お食事中に失礼致します」
「マリアか」
「はい。雪白さん、本日も作業効率上昇をかけていただいたということで間違いありませんか?」
「今日は、とにかく作業効率が目一杯上がれと思いながらでした」
「なるほど。結果として、本日の方が明確に作業効率は上昇していました」
「じゃあ、明確に効果を考えた方がいいのかもしれない、ですね」
目的を持った方が無駄がなくていいということだろうか。私の考えを肯定するようにマリアさんが頷いた。様々な内容をあれもこれもと追加していくよりも、作業効率を上げる、という明確な目標の中身が決まっていたものの方が、ロスなく効果を発揮できたのだろうと。
す、と伸びてきたマリアさんの手が私の頭を撫でて離れる。ふわりと戸惑ったように、それでいて柔らかく撫でて離れたその手を唖然と見つめる。表情は硬いままで、戸惑ったようにも見えるけれど、なんとなく彼女の気持ちが伝わるような気がした。感謝と、それから、少しの心配。へにゃり、と力の抜けきった顔で笑う。
マリアさんがびくりと肩を震わせて、一気に私から距離をとった…ツンデレだろうか?さっきの感じからすると悪い感情を抱かれているわけではなさそうだった、前せっちゃんが言っていたことも考えると、多分うぬぼれじゃないと思う。
「せっちゃん、ありがとう」
「うん?」
せっちゃんが言葉とともに後ろから私の頭を丁寧に撫でる。まるで髪の毛を撫で付けるようにしているのかもしれないと思えるほどに髪の流れに沿って、ゆっくりと丁寧に。マリアさんの時には伝わってこなかった手の温かさで、体の力が抜ける。
突然の浮遊感に身体中がこわばった、と思えば、いつの間にかせっちゃんの膝の上に座らされていた。…おかしいね?思わず、ほぼ真上にあるその顔を見る。
「ありがとう。部下のために、そして私のために」
「…べ、つに、ここに置いてもらうから」
まっすぐ見られて告げられたお礼に冷静な自分を保っていられなくて、告げた言葉は、まるで照れ隠し。ああ違う、こういう時は冷静にどういたしましてとか、こちらこそありがとうとか、そういう言葉を返すべきであって…。自分の対応に頭を抱えたくなったのだけれど、そんなことさせない、と言わんばかりに膝の上に置いてあった両手はせっちゃんの片手で抑えられていて、もう片手はしつこいぐらいに頭を撫でている。
マリアさんがため息交じりに私とせっちゃんを見て、少し考えるようにしてから、告げた。
「あまりしつこくすると、逃げられますよ」
「大丈夫だ。…せっちゃんは、逃げない、な?」
「あっはい」
いろいろと込められた“ね?”に反射的に返事をする。今の気持ちを一言で表したい。
次期魔王の圧力こわい。
続・説明回




