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せっちゃんたちの恋愛事情  作者: くい
はじめまして、ゆうしゃのいけにえです
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1ー08

可愛らしい部屋に併設されていたシャワーを浴びて、せっちゃんから渡された高価そうなーー手触り的にはシルクだーーパジャマを着て、マリアさんに魔法で髪を乾かしてもらってから明るい中、眠りについた。

本当にベッドの天蓋を下ろすと、レースのように見えるのに、ベッドの上は光の一筋も入らないような暗闇になってびっくり。けど、ふかふかなベッドに飲み込まれてそれ以上の何を考えることもできずに眠った。


「おはようございます、雪白様」


見知らぬ女性がいる。首を傾げて彼女をじっと見つめる。薄い黄色の獣の目をした女性が身に纏うのはエプロンドレス。クラシックなロングタイプだ、とても清楚。長い水色の髪をひっつめているが、とても穏やかそうな表情をしている。


「本日からお世話をさせていただきます、ナディアと申します」


お見知りおきをと、穏やかな声が告げる。つられて一緒に頭を下げたら、ギョッとしたような声で止められた。どうやら私は次期魔王様の客人という扱いになっているようなので、そんな人に頭を下げられると困る、ということだった。謝りそうになったが、きっとそれもいけないのだろうな、と口を開けたところで気がついた。

一度口を閉じて、少し悩んでから眉を下げて、深呼吸。


「以後気をつけます…ただ、私今まで人の上に立ってなかったから、間違えることも多いと思います。だからその時は、また教えてください」

「…かしこまりました」

「ありがとう」


渋々、といったような沈黙ではあったけれど、笑ってくれたからよしとしよう。顔を洗って、ハーレルさんが用意してくれたというゆったりしたタイプのワンピースを着た。昨日の夕食と同じしっとりふわふわのパンとスクランブルエッグとベーコンといったこれぞブレックファーストって感じの食事を食べてから、歯磨きをしたところで、マリアさんが迎えに来てくれた。


「おはようございます、よく眠れましたか?」

「はい!ありがとうございます」


お礼を言ってから案内をしてもらって、厨房へ…と思ったのだが、廊下にせっちゃんがいて思い切り後ずさった。び、びっくりした…突然目の前にツノが現れて、しかも刺さりそうな勢いで命の危機すら感じたのだから仕方ないと言い訳をしたい。マリアさんがため息をついた。

と、顔を上げたら悲しそうな顔のせっちゃんがいた…多分。悲しそうな顔なのか、恨めしく睨みつけている顔なのかわからないのが問題だと思うけど、纏う空気がジメジメしてる気がするから多分悲しんでると判断する。


「おはようございます、せっちゃん。ツノにぶつかりそうになってしまって、ごめんなさい」

「…そうか。私から逃げたわけではないならいいんだ。おはよう、せっちゃん」


うわぁ、友達に飢えすぎだろ。ひくりとほおを引きつらせて、いやで300年もぼっちだったらこうなるかもしれない、と思い直す。本当に300年ぼっちだったのかなんて知らないけど。

じゃあ一緒に行きましょうか?と問えば、顔に似合わぬキラキラを発して、首が取れそうなくらいに頷く。外見的なキャラとは全く違った、本当にいい加減にしてほしい。

嬉しそうなせっちゃんに手首を掴まれて、食堂へと連れて行かれる。当然せっちゃんは厨房には入れないので、食堂でお留守番…ってほど離れてるわけでもないけど、お留守番だ。なぜか早く帰っておいで、と頭を撫でられた。妹的な何かも含まれているのだろうか、と不思議に思いながらもまあいいかと、それを甘んじて受け入れる。別に友達に妹扱いされたことがないわけでもないし、っていうか主に性別:出水扱いのせいで、女友達にも男とも女ともつかない扱いされてたし…まあそんなことはどうでもいい。

ジオールさんにおはようございます、と挨拶してから、他の厨房の方達に頭をさげる。よろしく、とほのぼのと笑ってくれる皆さんにお願いしますと返して、忙しい厨房の中を動き回った。多分1時間もしないくらいにジオールさんに雪白ちゃんこっち!と呼ばれた。

洗い物を途中で抜けて、ジオールさんの元へ行くと、お弁当箱と中に入れるおかずが並んでいた…あっ、私がお弁当詰めないとダメなのか。ちゃんと一人前ずつ、すでに分けられてるあたりすごい。


「付与効果は…疲労回復とか、そういうのがいいかな?」

「頑張ってみます」


やったことないんだけど、と思いながらも、想像(妄想)しながらやればいいのだというのはなんとなくわかっている、ので色々考える。疲労回復みたいなの…えーっと、作業をすると考えると、いっそのこと、作業効率が上がる方がいいんじゃない?一気にものを運べるとか、そもそも疲れないとか、魔法使うなら魔力消費を抑えるとか。あ、あと、怪我しないとか大切だよね。なんて思いながらお弁当を次々と詰めて、とりあえず全部を出来立て状態で停止させる。

できた端からどんどんと渡されて行くお弁当を見る間もなく、最後の一つを詰めきった。

お疲れ様ーと厨房にいた方達と話をして、自己紹介と身の上話を少し。全員魔族で、料理系スキルの持ち主らしい。ジオールさんと私を除いて3人。女性が1人に男性が2人だったが、どうやら、魔族の男女比は7:3くらいで男の方が多いーー正確にいうと、男女大体半々の出生率だが、女性の方が魔力が少なかったり、出産による魔力流失によってなくなる場合があるーーらしく、ここで働く魔族たちも基本と変わらないようだ。女性は主にメイドや治癒魔法を使える方達が連れてこられている、という理由もあるのだろう。

それからすぐに夕食用のパンをいっぱい焼いて、保管庫ーー当然のように空間停止・時間停止魔法がかかっているーーにしまって、保存。今日の仕事は終わりだーとジオールさんが嬉しそうに笑った。


「また明日、同じ時間にお願いしてもいいかな?」

「はい!」


全力で頷いたら、はい、と厨房係の女性ーーレリィナさんという濃いピンク色の目をしたクールビューティーだーーお弁当のおかずとお弁当箱が2人前渡された。不思議そうに首を傾げたら、顎で食堂を示される…あっ、せっちゃん用か。

次期魔王様にお弁当でいいのか、と疑問を抱きつつ、美味しく食べて欲しいと思いながら詰める。出来上がったお弁当を持って食堂に行けば、せっちゃんは飼い主を出迎えた犬のような笑顔で私を手招きした。

男女比の偏りは基本

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