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足なし宰相  作者: 羽蘭
第4章 教師
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57話 詠唱魔法

更新が遅くなり申し訳ございません。






「えいしょー?」


フェリスリアンは首を傾げて目をパチクリとさせる。


「はい、詠唱魔法とは言葉を使う魔法のことです。ほら、僕はこうやって魔法使ってる時に言葉を使ってないでしょう?」


それでもよく分からないようで傾いた頭は元に戻らない。シュリルディールは少し考えてから手元の本に目を落とす。


「言葉を使う詠唱魔法は…₢₯(水よ)ᖻᏫᏐᑭ(球となり)Ꮼᘔᘜ(飛び出よ)


その言葉通り威力の弱い水球がディーの手から放たれた。リアンは思わずと言ったように手をパチパチと合わせて拍手をする。


「…と、まあこのようにとある言葉を言うと魔法が使える人は魔法を使うことができます。これが詠唱魔法です。」


「ディーのつかってるのとちがう…?」


「はい、僕が使っている魔法は無詠唱魔法ですね。無とはないという意味を指します。つまり、先程のような言葉を言わないで使える魔法です。」


「ことばはいらないの?」


「言葉はなくても魔法は使えます。ですが、言葉を使った方が簡単に魔法が使えるのです。」


実際にやるのが手っ取り早いだろう、そう結論づけたディーは「早速リアンも水魔法を使ってみますか。」と言って微笑んだ。


「えっ!いいの?」


「はい、リアンは詠唱魔法と無詠唱魔法どちらをやりたいですか?」


「ディーとおなじ!」


質問した途端打てば響くかのように即座に答えが返ってくる。その答えに笑みを浮かべつつ口を開く。


「では、まずは言葉を使わない魔法を使いましょう。

手を出して下さい。そうです、手の平を上に…そして僕が出していた水を頭に思い描いて下さい。」


「うん。みず、みず…」


魔法は案外簡単に使える。

魔力がどうこうとか身体の中の力がどうこうとか色々な事を考えずとも使うことはできる。自分にはこの属性が使えるのだという自信と確信があれば使えるのだ。

その自信と確信の為に属性を測定する道具が存在している。だからもしかしたら使えないかもしれないという想いを抱いていたら魔法を使うことは一気に困難を極めることとなる。


「その水はリアンの手の上に出てきます。」


「でてくる……」


数秒程でリアンの手の上に水の塊が現れる。形は不恰好だが確かにそれは水だった。


「でてきた!」


そうリアンが嬉しそうに声をあげた途端、その塊は形を失くしてリアンの手が水浸しとなった。


「こわれちゃった…」


本当に悲しそうにそう呟く。その姿があまりに悲哀に満ちていたためにディーは思わず噴き出す。


「リアン、初めてで水を出せたことは凄いことなのですよ。僕も初めは全然水出せませんでしたから。」


「…そうなの?」


「はい。それにもう一度水を出した時にはきっともっと長く崩れないでいられると思いますよ。」


先程ディーは水が集まりやすいように霧のような細かな水の粒をリアンの手の上周辺に発生させていた。乾いた砂漠のような場所で水魔法を使うのと、瑞々しい場所で水魔法を使うのでは難易度に大きな差がある。

ディーが初めてやった時はそのような補助はなく、2回目で20秒程時間をかけてようやく成功したのだ。

魔法を使えるようになる過程は自転車に乗れるようになる過程と似ている。一度できれば2回目以降はスムーズに出来るようになる。仕組みはしっかりと分からないが、無意識に感覚を掴んでいるのだろう。


「じゃあ、もういちどやってみる!」


やる気に満ちた声でそう告げてリアンはもう一度同じ体勢になり水水水と呟く。

今度はディーは一切手出しをしない。

それでもリアンの手の平の上には同じように水の塊ができる。

10秒程でまた壊れてしまったが先程より断然長く保ったことは計らずとも明らかだった。


「できた!…けどディーみたいにはできない…」


「そうですね。僕は何度も練習してますから。リアンも僕と同じくらい練習すれば同じくらい水魔法を使うことが出来るはずですよ。」


そう話せば笑みを浮かべるかと思ったが、リアンは驚いた表情を浮かべた。


「なんかいもれんしゅうしたの?」


「はい。すぐに完璧に出来ることなんてありません。そんな人もおりません。何回も何回も練習して時間をかけて完璧に近づけていくのです。僕もまだ近づくための練習をしている途中です。」


「かかっていいの?」


ああ、と思わずため息が出そうになった。時間がかかっていいのかとリアンは聞いてきたのだ。時間をかけずにすぐに出来るなんて余程の天才だ。

ディー自身、カメラアイという能力と記憶力の良さ、そして転生者という点から決して凡才ではないことを自覚しているが、それでもすぐに出来たようなことではないのだ。


「もちろんです。2人でたっぷり時間をかけて練習するに決まってるではないですか。」


「うん!」


「ですが…」


途端に喜びに溢れた顔が不安そうなものへと変化する。それに対しディーは悪戯っ子っぽい笑みを浮かべた。


「僕の…これと同じ水の球を作るのは今すぐにでもリアンにもできますよ。」


「ど、どうやって…?」


「それが詠唱魔法です。₢₯(水よ)ᖻᏫᏐᑭ(球となれ)と唱えれば…ほら!」


そう言って見せたディーの手の平の上には綺麗な水の球ができていた。


₢₯(水よ)!」


リアンも真似をする。ただ全てではなく前半のみであったため、水が空中に現れすぐに地面に落ちることとなった。


「リアン、先程と同じように手の平の上に水ができると考えながら言ってください。」


「うん、水水…₢₯(水よ)。」


今度は伸ばした手の上に水が生まれた。それは先程と同じように形など作ることなく重力に伴い下に落ちていく。


「はい、上手くできましたね。₢₯(水よ)の後に続く言葉はᖻᏫᏐᑭ(球となれ)です。」


「ᘔᏫᏐᑭ?」


「最初のところをもう少し舌をこうやって上顎に当てるようにしてみて下さいᖻᏫᏐᑭ(球となれ)って。」


「うーんと、ᖻᏫᏐᑭ(球となれ)?」


「そうです!」


「じゃ、じゃあ、水水…₢₯(水よ)ᖻᏫᏐᑭ(球となれ)


リアンの手の平の上に綺麗な水の球が出来上がっていた。それはリアンが非常に喜んでいる表情でディーと目の前の水球とを交互に見ている間も崩れず形を保っている。


「リアン!よくできましたね!」


「うん!できた!!かんたんにできるのがえいしょーまほうなんだね!」


「よく分かりましたね。その通りです。ですから魔法に慣れるまではまずは詠唱魔法から始めた方が良いそうです。簡単なものができるようになってから難しいものに移っていきましょう。」


「うん!」


そう素直に頷くリアンを見ながら、ディーは心の中で自分は最初から無詠唱を教えられたけどねと思わずにはいられなかったが。










ここのところはほのぼの回で特に事前に何か内容を決めているわけではないのでどんな内容にするのか悩みながら書いてます。ほのぼの回のせいか何となく内容も薄く短くなります。

もう少し経ったら新たな出会いが出てきます。


次回の更新は9月16日21時です。

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