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足なし宰相  作者: 羽蘭
第3章 内政
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46話 チェルノー孤児院再び

やーっとここまで来ました。

もうすぐこの章は終わります。

終わっちゃいます。

登場人物のまとめしてなくてヤバいなーと時間ないなーどうしようかなーという気持ちです。

もしかしたら章が終わって少し時間が経ってから登場人物紹介は更新することになるかもしれません。






「あっ、ティーリ様!お久しぶりです。」


その声の主へとシュリルディールはにっこりと微笑みかける。


「チェルノー婦人、こちらこそお久しぶりですわ。ここの孤児院はもう大丈夫かしら?」


そう答えたディーの格好は茶がかった金色のロングヘアーにペパーミント色のワンピースドレスだ。

ここはチェルノー孤児院。最初に潜入調査した孤児院であり、国からの補助金を減らされて困っていた孤児院だ。

すぐにこちらに気付いたチェルノー婦人は扉を開けて中へと招き入れる。その対応が素早いのは今現在雨が降っているからだ。

ディーに雨が当たらないギリギリの所でオセロは屈み、ディーを降ろしたあと開いていた傘を閉じてオセロも後から続いて中へと入る。

流石にディーを抱えたままで傘を閉じるのは難しい。


「はい、お陰様で国からの補助金額が増えまして今では食事に困ることもございません。ありがとうございます。その前に届いきました包みは匿名でございましたがティーリ様からでございますよね?」


一瞬お陰様でという言葉にディーの眉が動いたが、すぐに感情の揺らぎを消す。

(流石に僕が役人だとは思ってないだろうし、間接的に何かが動いた可能性を考慮しているだけだろう。)


「えーっと、そうね。バレバレでしたかしら?」


おどけたように首を小さく傾げて苦笑する。


「私達の院に援助して下さるような方は他におりませんものですから。」


「それにしても国からの補助金が増えたのですか?」


「はい。数日前にお役人様がいらっしゃって、それまでの補助金に足りない額と迷惑料を直接下さいました。」


「それは良いことですわね。私の家からのものは好きに使って下さいな。」


そう言いながらチラリとオセロを見上げる。

現在ディーは再びオセロに抱き上げられているためもの凄く至近距離だ。オセロとディーの視線がごく至近距離で一瞬かち合った。

オセロからの視線に含むものはなさそうだ。


(オセロが動いたからすぐ反映されたのか。ダメだなぁ…)


もっと視野を広くしてアフターフォローもキチンとしなければ。ディーはそこまでの考えに至っていなかったし、援助金を出しているからそこまで急がなくていいだろうと思ったが、元に戻ることと他から補助がある状況では精神的な観点から考えると前者の方が良い。

オセロはおそらくディーが動かなかったことについて気にしていない。まだ総部省に入って数週間であるし、教えられたことをキチンとできれば充分ということだろう。


(…いつまでも甘えてられないし、言われたことだけしかやれないと思われるのも嫌だな。)


どうすれば良かったか、そのような考えは基本的には後悔であり、考えても意味のないことである。そう思われがちだ。しかし、そのことを考えて次回似たようなことに活かせるのなら、それは無駄ではなく、意味のあることだ。

今回の件はマクベスとオセロの手伝いの意味合いが強く、ディーが情報をちゃんと掴んだ時点で残りは事務作業以外ディーに求められていなかったとしても。

そんな思考の海に沈みかけた頭は次の言葉で現実に引き戻された。


「それは…宜しいのでしょうか…?」


どうやら数秒しか時間が経っていなかったようだ。ディーは現実に引き戻されて僅かに開いた目をそっと細めて取り繕う。


「ええ。もうそれは貴女方に渡したものですもの。」


「では、ありがたく使わせていただきますね。…あら、つい話し込んでしまい申し訳ありません。前回お通ししたお部屋にご案内いたしますわ。」


そう言って頭を下げたチェルノー婦人はこちらが頷くのを確認してから歩き始める。


「こないだ来てたおねーちゃん!」


部屋に到着する直前、可愛らしい高い声がすぐ傍から発せられ、一行は足を止めた。

すぐさま反応したのはチェルノー婦人だ。少女の視線に合わせるように屈む。


「ティーリ様と呼ぶのよ。」


そう言ったのだが、後から来た子供達が見事にそれを台無しにした。


「おねえちゃん知ってるー!」

「おひめさまだ!」

「おひーさま!」


子供達がおねえちゃんからおひめさまに呼び方を変えていくのを見て小さくため息をつくと、チェルノー婦人はこちらを向いて申し訳ございませんと頭を下げた。


「気にしませんわ。ですが、私はお姫様に見えるのかしら?」


今の格好はどう見てもお姫様と言うよりお嬢様なのだが。高価な素材を使ってはいるがフリルもレースも殆ど付いていないし、街中にいてもおかしくはない格好だ。


「この子達にとってはティーリ様は今までお会いした中で一番お綺麗でいらっしゃいますから。」


「えっと、ありがとうございますわ。」


ディー自身は庶民感覚は抜けていないと思っていたが、そうでもないらしい。この服は子供達にとっては綺麗で手の届かないお姫様の着るものと位置付けられたのだろう。最も貴族王族然とした顔の造りのせいもあるだろうが。

加えて、お姫様と呼ばれても嬉しさは残念ながらなかった。性別がそもそも異なるし、本物の王女を目にしてしまっているからこそ…という悲しい理由により。


本日は小雨のため、この間のように外で遊んでおらず室内で遊んでいたのだろう。楽しそうな声に連れられて子供達が後から後から集まってくる。


「おひめさまがきてるんだよ!」

「かわいーの!」

「お姫さま?って!ちょっ引っぱるな!」


物理的に連れられて来ている子供もいるようだ。

そう思って声の先を見たディーはピクリと身体を揺らした。

いるのは分かっていたし、会うこともあるだろうと思っていたが何となく前回いなかったから今回もいないだろうと思っていたのだ。


「ヴェルドにーちゃー!はやくー」


ヴェルドが小さい子達に袖を引っ張られながらやって来る姿に、微笑ましさと懐かしさとが混じってディーの顔に笑みが(こぼ)れる。

ヴェルドはディーにとって初めて友達になりたいと思った人物だ。

友達になろうと言ったわけでも言われたわけでもないし、会った時間は数時間だけで、場所も場所だったが、勝手にディーは心の中だけでヴェルドを友人認定していた。もう会えない友達と勝手に思っていたが、この間チェルノー孤児院に来た時にユーリ達を見てヴェルドに会えるのではないかと密かに胸が踊っていた。

ベリルアグローシュとは初めての友達と口にしたが、彼女とは打算が混じり過ぎ…いや、打算以外の何物でもなくて本当に友達だとは思っていなかった。誰が見てもあれが友達とは言えないだろう。


(こんな風に友情を弄んでも左程罪悪感も感じないから同年代の友達なんて出来ないんだろうな。

まあ、ヴェルドは僕の事を友達とは思ってないだろうし、そもそもこんな格好じゃ気付かないだろうけどね。)


そう微笑みを浮かべながらディーは少し悲しい色を瞳に宿す。前世でも友達は少なかったと言うのに、こんな身分制度のある世界で精神年齢だけが大人なディーは一生同年代の友達なんて出来ない気がしたからだ。

同年代と先程から言ってはいるが、子供にとっては大きい3歳差な点は気にしない。本当に同い年だと会話すらまともにできない気しかしない。

ぼーっと考えていたディーを現実に引き戻したのはヴェルドの驚愕した表情。

途端にすごく、ものすごく嫌な予感がディーの脳裏をよぎる。


その予感は的中した。


「は…?ディール?」


その言葉にディーは笑顔のまま固まった。










次回の更新は7月8日21時です。

通常の更新周期に戻りましたが、未だ忙しい為、感想は閉じたままとしております。

多分最短でも8月末までは閉じたままです。



いつのまにやらPV10万超えていました!ありがとうございます!!

評価して下さった方々もありがとうございます!!!

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