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1話
しばらく、のんびり仕事をしているとふいにドアがノックされた。
祐斗が席を立ち、ドアを開けると大柄な男が立っていた。大柄で強面な男は、黒いシャツを着ていて、一般人のようには見えなかった。
そんな男の急な来訪に、何も言えず祐斗は固まったままだった。
祐斗の失礼な態度を気にするでもなく、男は軽く頭を下げてきた。
「突然、申し訳ありません。こちら、よろず屋さんですよね?」
大柄で強面なわりに声は優しげだった。固まっていた祐斗は、慌てたように頭を下げた。
「あ、は、はい。失礼しました…どうぞ中へ」
ドアを押さえ祐斗は、左側に避けた。男は少し頭を下げてドアをくぐった。颯介も長身ではあるが、頭を下げてドアをくぐる事はない。
「…ん?」
男が入った後、ちょこちょこと小さな女の子が手を引かれて一緒に入っていくのに気付き、祐斗は少し首を傾げた。
オフィスに入った男は、ぐるっと辺りを見回して、祐斗に視線を戻した。
「こちらに、玉奥むつさんがいらっしゃると伺ったのですが…今日はいらっしゃらないのでしょうか?」
祐斗は颯介と山上の方を見た。