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2話
山上に慰めてもらったむつは、鞄に封筒も押し込んだ。バイクの鍵を持つと、山上の方を向いた。
「どうした?」
「服とかって着替えた方が良いかな?」
いつも通りのパンツスーツに七分丈のシャツを着ているむつは、珍しくも困ったような顔をしていた。
山上はそんなむつを見て微笑んだ。
「たまには、スカートも良いんじゃないか?それに、仕事じゃなくてプライベートの時間だろ?」
「そうだけど…そうかな?一回家帰ってから向こう行こうかな…そうする‼ありがと、行ってきまーす」
変な意気込みを見せるむつを笑いながら見送った山上は、誰も居ないオフィスを見回した。
「出払った事だし…久々の勝負をしようかねぇ」
まだ退勤時間には少し早い気がしたが、誰も居ない以上するやる事もなく退屈だった。
意を決したのか、からからと窓を閉めはじめた。もう焦げ臭いにおいもあまり気にはならない。キッチンで灰皿に水を入れてから、ゴミ箱に吸い殻を捨て灰皿も洗った。
そして、上着を持つと電気を消して鍵を閉めて、エレベータで下に降りていった。




