1話
「よく、こんな心霊写真張れますよね」
「まぁ…問題ないでしょ。そんな事、気にしてたら祐斗との写真が1枚もなくなるし」
そう言われ、嬉しくなり振り向くとむつはすでに玄関の方に向かって歩き出していた。
「そろそろ、戻るよ」
ちょっと残念だが、仕方ないか。ゆっくり写真を見るために来たわけではないのだから。今度は、ゆっくり過ごす為に招待されたい、と祐斗は思いながら部屋を出た。
「むつさん、むつさん、今度遊びに来ても良いですか?」
エレベータを待っている間に、何気なく言ってみると、むつは少し首を傾げたものの、特に何も思わなかったのか、いいよ、とだけ言った。
「そう言えば、まだ今の部屋に人を入れた事ないな」
「そうなんですか?宮前さんも?」
「しろーちゃん?…引っ越しした事、言ってない気がする。社長は知ってるけどね」
冬四郎には、何でも話していそうだと思っていただけに、祐斗は驚いていた。
「じゃあ、俺が1番っすね」
「そうね。今日すでに入ったしね」
むつは、くすくす笑いながらエレベータを降りていく。出張とは違う、泊まり込みの仕事だが、あの笑顔を見ると何だか楽しい仕事になりそうな気がして、選ばれて良かったとさえ思った。




