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1話
何事なのかとむつも京井の後に続いて部屋から出ると、やってきた颯介とぶつかった。
「あぁ、むっちゃん…良かった。あの女の子が」
「どうしたのさ」
颯介と共にパーティションで仕切られている、来客用ソファーの方に行くと琴音が肩を小刻みに揺らしながら、低く唸り声を上げていた。
「どーしたの?」
琴音と管狐が睨み合っている間で祐斗が、おろおろとしていた。
「元々、狐と犬の仲があまりよくはなくて…それで喧嘩になってるんだと思いますが」
祐斗の代わりに京井が、申し訳なさそうに言った。そして、琴音を管狐から離そうと抱き上げると、京井の大きな手にがぶっと噛みついた。
「いっ‼」
思わず手を放してしまい、頭から床に落ちるかと思ったが琴音はしっかり足で着地した。
「凄いね。子供とは思えないね」
むつが感心したように言うと、颯介も琴音の様子を興味深そうに見ながら頷いた。
両手も床につけ、犬のように歩き回り唸り声を上げる琴音は、とてもじゃないが人らしくは見えなかった。
「むつさんも湯野さんも感心してる場合じゃないですよ。喧嘩になっちゃいますって」




