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4話
しばらく、ちゃぷちゃぷと水槽に手を入れて遊んでいたむつは、楽しそうにしていた。
「あいつ…この後、むつをつけてくつもりなんだろうな」
「うん?」
「何でそこまで必死なんだろうな。そりゃまぁ子供を保護したと思ったら紙っぺらじゃ困るけどさ…俺もどうするかな」
水槽から手を上げたむつと冬四郎は、魚の生臭い臭いのする手を石鹸で念入りに洗った。むつが渡したハンカチで冬四郎が手を拭くと、むつも手を拭いて鞄にしまった。
「しろーちゃんはさ、子供の保護より犯人挙げるより、沼井が許せなかったのね」
触れ合いコーナーから出るともう展示物もなく、土産物売り場に出た。二人ともぐるっと見て回った。
「そうだな…とりあえず、大人しく尻尾振っといてみたけどな。そろそろ、その必要もないな。あれはダメだ」
「正義感が強いのね」
むつは大きなぬいぐるみをふかふかと触りながら、くすくす笑っていた。その笑みは、からかうような物ではなかった。
「買ってやろうか?」




