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4話
「何があった?」
欠伸を噛み殺しながら颯介が、まだ起ききっていない目をむつに向けている。
「あの子が弱ってる…いや、憑き物の方かな?とりあえず、弱ってる」
むつは近くにあった山上のタバコに手を伸ばした。そして、くわえると指先に炎をともして火をつけた。
「うーん…小さいのなら何も言わなくても出来るのに。マジシャンみたいじゃない?」
「そんな暢気な…で、京井さんは?」
「付き添ってる。ありゃ、憑き物を別の器に移す事を考えてるみたいだわ」
「京井さんの監視も必要か?」
唇が尖らせたむつは、頷いた。
「それにしても…バレてないのが不思議」
「向こうの様子は?」
「真っ暗な部屋に閉じ込められてるっぽいかな。視覚としては何も見えないから」
むつと颯介が話をしてる間にも、やかんの蓋がかたかたと言い出した。お湯が沸いてきたのだろう。むつは、立ち上がった。




