第五話
翌日。
僕は学校を休んで自室のベッドに寝転がっていた。
学校に行ったところで特異な目を向けられる事は判りきっていた事だし、そういった干渉が僕は苦手だったのだ。
それよりも問題は別だろう。
僕の事など後回し、正直どうでもいいのだ。
問題は夏風夏奈の方。
死んでいる少女にこそ――――――ある。
いや…………。
どうすりゃ良いんだよ、これ。
死んでいる筈の彼女はどういう理屈かは知らないがあそこに佇んでいる。
あのバス亭で一人。
そして彼女が救われるにはバスがあの古びたバス亭にもう一度、訪れるしか、無い。
しかしバスは廃線化が決まっていてもう一生、あのバス亭に姿を見せる事は無い。
………手詰まりって奴か。
市役所に掛け合ってもう一度、あのバス亭にバスが来るように手配するか?
…………いやいや。
どう考えてもそれは無理だ。一市民の嘆願で如何にかなる程に市役所の手配ってのは生温くは無い。そもそも僕がどうやってお願いすればバスはもう一度動いてくれると言うのだろうか。
正直に言うか?
あの古びたバス亭で死んだ少女がバスを待っているからもう一度動かして下さい、と。
……馬鹿げている。
つーか、狂っている。
そんな事を言ったところで狂人の戯言と思われるか、それとも心理カウンセラーを紹介されるか、そのどちらかでしか無い。
大穴で有名な祈祷師を呼ばれる可能性も少なからず存在するだろうが…………、これはギャグにしかならないので割愛しよう。
結局、僕に彼女を救う選択支は存在しない――――――――――――訳でも、無い。
まあこの方法で上手く行くのかどうかは五分五分だ。
というか多分、上手く行かない。
そんな事で半ば自縛霊と化している夏風さんの『ルール』を打ち破れるかどうかは判らない。
自縛霊の『ルール』にどれ程の秩序が存在しているかどうかは判らないが、緩ければ如何にかなる、と言ったところか。
…………でも、なあ。
この方法、すげぇ馬鹿っぽいんだよな…………。
馬鹿と言うか悪足掻きに近い。
正攻法では無く、邪法。
『正しい』では無く『間違っている』。
だが物事には『正しい』の反対は必ずしも『間違っている』では、無い。物事には『正しさ』の反対にはまた別の『正しさ』が存在する場合もあるのだ。
これは夏風さん直々の言葉。
夏風さんの『ルール』。
……ならば行けるかもしれない。
いや、行ける。つーか行かす。活かす。生かす。
「……やってやんよ。但し俺の『正しい』方法で、な」
僕はそう言った後に自室のベッドから起き上がった。
…………ホント、雨と無知とはよく言ったものである。
空には暗雲が立ち込めていた。




