エピローグ
――――――そこまで書いて、僕はゆっくりとパソコンのキーボードから手を放す。
仕事をやり遂げた後に感じる心地良い達成感に身を委ねつつ、僕は息を吐きその場で身体を伸ばした。
あれから十年が経った今、僕は結局本好きと言うのが功を奏し作家業を営む事になった。
毎日、毎度、キーボードを叩く生活を続けているがこれはこれで楽しい。
趣味を仕事に持った充実感。
やはり自信を持った進路を選んで間違える事は無い。
あの日。あの梅雨の事は僕の中でしっかりと息づいていた。
僕が作家への道に自信を持って進めたのも、あの梅雨の一時が合ったからに他ならないだろう。
あの日を思い出そうとしてみれば、その幻想的過ぎる彼女の存在に笑いが込み上げ、ともすれば夢と勘違いしそうになる今日この頃だったが、自分が作家と言う現実を認識する事で僕は『彼女』を忘れないようにしている。
もしや僕はそれを忘れないようにするために作家になったかも知れない。
そんな事さえ思い浮かべる始末だ。
空いた時間にうっかり、そして出来得る限りあの日の真実を書き込もうと思い立ったものの、どう工夫しても『彼女』をリアルに描写するのは難しそうだ。
まあ、僕でさえ信じられないくらいだし。
そんなものだろう。
事実は小説より奇なり。
まったく…………良い言葉だよな。
案外、僕のような人間が言った言葉なのかも知れないと馬鹿な幻想を思い浮かべる。
閑話休題。
僕が自身に感じている湿った空気。
現在、丁度示し合わせたように季節は梅雨だった。
…………まあ梅雨だからこそ、あの梅雨の幻想を書いてみようと思い立ったのだが。
しかしてもう直ぐその季節も終わりを告げる。
新しい季節の始まり。
その始まりを予告するかのように湿った空気では無い、違った空気を纏った風が一陣、僕の部屋に吹き抜けた。
陽気な雰囲気を纏った風が彼女のようでいて何処か懐かしい。
「…………夏風の如く、か」
僕はそう言って『彼女』を思い出す。
夏風夏奈――――――大好きだった彼女の事を。
本連載はこれで以上となります。ここまで読んで戴いた皆様、誠にありがとうございます!
良ければ感想、ブクマなど戴けたら幸いです。
また、目次などでも宣伝させて戴いておりますが、現在「異世界ですがライトノベルが流行ってます。」を連載中です。本作を気に入って戴けたらこちらも是非、読んでみて下さい。
では、長々とありがとうございました。今後ともどうぞお願い致します。ではでは!




