曖昧な過去の記憶
そこは翔汰のマンション。一人の女の人が翔汰の家の前に立ち、鍵を開けて中に入った。
家の中に入ると、女はリビングへ行った。荷物を置くとそのまま風呂場に行って、シャワーを浴びた。
「もう、どこか行くんだったら電話かメールしてくれればいいのに! そうだ、プリンでも食べようかな。昨日から冷やしておいた私のプリン。」
女は、冷蔵庫からプリンを取ろうと開けと、いつもあるプリンが一つも残っていなかった。
「はっ! 私のプリンがない。なんで、翔汰には食べないでって言っておいたのに・・・・・・そんな」
「ガチャ!」
すると、玄関が開いた。女は、急いで玄関に行った。
「お帰り翔太。何処行ってたのこんな時間まで」
「ただいま愛美。ごめん、琢磨と遊園地に行ってたんだ。」
翔太は心なしか疲れているように愛美には見えた。どうやら、アヤメ自体は見えていない。
「琢磨君と? もう今度からはしっかり連絡してよ! 」
「うんごめん。すぐに晩ご飯作るから、ゆっくりしていてよ。」
「そうだ、思い出した。翔太、私のプリン知らない? 冷やしておいたのに、冷蔵庫に入ってなかったのよ・・・・・・」
怒っている愛美を見て、しまったと思った。
「あープリンね。そういえば、今日午前中にお隣さんが来たんだ。そこで、出すのなかったからプリン出したんだ。うん」
「本当に? せっかく楽しみにしていたのに・・・・・・」
「わかった。ご飯食べた後に買いに行くよ。俺も、買うものがあったからちょうどいいし。それでいいだろ?」
愛美は少し考えたが、急に笑みを浮かべて・・・・・・、
「今、コンビニで大人気の超高級プリンでいいよ。しかも、食費からじゃなくて翔汰のお小遣いから出す事。それなら許してあげる」
「えっ、自腹。でも、俺のお小遣いも結構限界で・・・・・・。」
「ん、なんか言った。」
「買ってきます。」
「よろしい、じゃご飯作って。もうお腹空いちゃったよ」
翔太は、寝ているあやめをベットに寝かすと台所へ行き料理をし始めえた。
「ねぇー翔太、今日の晩ご飯はなに?」
「今日は、翔太特製低カロリーハンバーグ。一昨日考えたんだよ。愛美が最近体重気にしてたから」
「やったー。本当に料理上手な旦那さんでよかった。わたし、料理とか全然出来ないから」
「よし、出来たよ。食器用意して」
「はーい。わー美味しそう。」
愛美は、漆器を並べながら言いずらそうに機嫌を気にしながら言った。
「ところでさ翔太、お願いがあるんだけどいい?」
「何?」
「明日ね、私含めて4人で女子会するんだけど、翔太のことを話したら翔太の作った料理が食べたいって言うのよ。だめかな?プリン我慢するから・・・・・・」
「明日? いいけど、買い物行かないと何にも材料無いよ」
「ありがとう。明日の11時ぐらいに3人くるからそれまでにお願いね」
「じゃースーパー行ってくる、先に寝といていいよ。今日のうちに順したいものもあるし、楽しみにしといてよ美味しいの作るから」
「楽しみにしてる。食器はわたしが洗うから、先におやすみなさい」
「うん、おやすみ」
翔太は、部屋に戻りかばんを取った。寝ているあやめを起こすのもかわいそうだから、置いて行こうと思い、家を出た。
「出来れば早く言ってほしかったな。でも、プリンの件がなくなったからよかった。あいつ、プリンのことになると起こるの忘れてた。」
そう言って、スーパーへと自転車で行った。買い物をしていると、卵が1パック98円で売っている。なかなか、100円じゃ買えないからと買い物かごに入れた。お一人様一パックまでと書いてあったが、さりげなく2つかごに入れた。
「やった。最近卵高かったんだよな。こんだけ卵もあることだし、明日のデザートでプリンでもつ食ってやるかな」
それから、1時間ぐらい献立を考えながら買い物を終わらせた。4人分だと、かなり買い物袋が重い。自転車のかごに入れて、ふらふらしながら家に帰った。
「よし、これで全部冷蔵庫に入れたな。これは、今日のうちに準備しとくか」
「何してるの?」
あやめが、寝ぼけて翔太に話しかけてきた。
「ん? あー明日愛美が4人で女子会するからって、昼のご飯作る事になったんだ」
「そうなんだ。私、結構寝てた?」
「いや、3時間ぐらいだよ。」
「そんなに! ねぇ、私もなんか手伝おうか? 簡単な事だったら手伝えるから」
「ありがとう。気持ちだけ受け取っとくよ! あやめは明日までしっかり体を休めといて」
「分かった、あやすみ」
「おやすみ」
翔太は小さい声で言った。そして、急いで軽い準備を済ませた。準備が終わる頃には12時が過ぎていた。台所の電気を消して、そのまま寝室に行き眠りについた。
※
「ピロピロピロ!ピロピロピロ!」
太陽がまだ顔を出さない朝5時に、翔太は起きた。ベットから降りると、洗面所に行き顔を洗っう。半分意識の無い中、歯磨きをし始める。歯磨きを終えると、台所へ向った。
「よーし、がんばるか! まずは、昨日の翔太特製低カロリーハンバーグをメインにして、野菜スープとマセドニアンサラダだな。おっと、その前にプリンを作って冷やしとかないと」
翔太は調理を始めた。火加減を気にしながら、野菜を切ったりと大急がしだ。昼のご飯を作っていると、愛美とあやめが起きてきた。
「おはよう翔太! 朝飯まだ?」
面白い事に、二人そろって同じことを言うので翔太は笑ってしまった。
「あぁ、すぐ作るから歯でも磨いて来いよ」
「うん」
そう言うと、二人は洗面所に行った。翔太は、急いで朝ごはんを作って、テーブルに並べた。並べ終えて、また調理に戻ろうとしたとき、
「きゃーーー」
愛美の悲鳴が聞こえた。翔太のいる台所に愛美が走ってきた。その顔は、軽く怖がっているような顔だが、
「ねぇー翔太、わたしゆ△■○,$´・・・・・・」
「分かったから、まず歯磨きを終わらしてからにしろよ」
「ふぐうん。」
愛美は、軽くうなづき洗面所に戻る。翔太は、一緒に戻るあやめを呼び止めた。
「なんで、叫んだんだ。まさか、お前のことが見えたんじゃ」
「それは無いと思うけど、翔太が見えるんだからそれの影響でとか・・・・・・あっ戻ってきた」
「翔太わたし、幽霊見たかもしれない。歯磨きしているとき見えた気がするんだ」
「きっ気のせいだろ。ほら、朝だから寝ぼけるだけかもよ。ほら、それより朝ごはん食べないと冷めちゃうよ」
「えー確かに見えた気がしたんだけどな・・・・・・まっいいか。あれ今何時だっけ?」
「7時45分だけど、どうしたの」
「本当に! どうしよう、8時に近くの喫茶店で待ち合わせなんだった」
「時間内じゃん。朝ごはんは我慢して行くしかないね。はい、野菜ジュース」
「お腹空いてるのに!! じゃ、急いで着替えて行ってくる。じゃっ」
「行ってらっしゃい」
「じゃ、朝ごはん食べますか」
「お腹減ったよ。食べよ食べよ。それにしても、目玉焼きのベーコンって手抜きじゃない翔太」
「仕方ないだろ、昼の事もあるし。昼ご飯を楽しみにしとけよ」
「へーい、いただきまーす」
翔太とあやめは、愛美が食べなかった分も二人で分けて食べた。翔太は先に食べ終わると、昼飯の続きをやり始めた。一人でやっていると、あやめも手伝うといって台所に立つ。慣れない包丁さばきで、野菜を切っているが手を切らないかと心配になる。そうして、大体の調理が済むと、手伝ってくれたご褒美手作りプリンをあげた。
「えっ! いいのいただきまーす。うーん、美味しい。一昨日食べたプリンより美味しいよ」
「まっまーね。そこまで言われると嬉しいね。昼間ではあと一時間あるし、あやめの子供についてでも話し合うか? 昨日、見たことも聞きたいし」
「そうだね」
「じゃーまず、昨日の遊園地で何を見たのか教えてもらおうか。」
「うん。昨日倒れたときに見たのは、昔の記憶だったんだけど分かったことが3つあったんだ。まず、あの遊園地に行った事があること、それに遊園地に近いぼろアパートに住んでいたこと、旦那さんの名前が晃志郎ってことだけね」
「いや、結構大事な事だよ。その、遊園地に近いぼろアパートに行けば分かるかもしれないな」
すると、急にあやめが立ち上がり言った。
「ねぇーもしかして、ボロイアパートってあそこじゃない。昨日、遊園地に行くときに迷って入っちゃった場所あったじゃん」
「あそこか!」
「あそこなら、ここから近いし」
翔太は、ボロアパートの場所を調べた。調べた内容によると、あのあたりはここらでは有名な無法地帯で、その割りにほかのところに比べると賃金がかなり安いらしい。他にもと調べているうちに、1時間が過ぎた。その時、愛美からメールが来た。
「そろそろ、そちに着くからね! 朝ご飯の分しかっり食べないと」
まだ、少し気にしている様子だ」
「そろそろ準備するか。あやめ手伝ってくれる?」
「いいよ、食器は私が並べとくから」
あやめは、笑顔で答えた。
「よし、こんなもんだろ」
「ピンポーン」
家のベルが鳴った。愛美は、3人の女性をを招き入れると翔太に紹介をした。
「翔太ただいま」
「おかえり。えーと・・・・・・」
「翔太から見て、左から紗枝に飛鳥に祥子」
「はじめまして。今日は急にスイマセン。どうしても、翔太さんの料理が食べたかったもので」
紗枝さんという女性は、3人の仲でも特に清楚で礼儀が成っていた。
「いえ、それじゃー料理が冷めないうちに食べてください」
「美味しそう。もしかして、これ全部翔太さんが作ったんですか?」
「うん、あと食後のデザートもありますからお楽しみにしてください」
そう言うと、4人はテーブルに座り料理を食べ始めた。
「美味しいです。 ほんとに手作りなんてすごいですね」
「ありがとうございます。じゃー僕は、自分の部屋にいるので食べ終わったら呼んでください」
「はい」
最後目で律儀な紗枝さんだった。翔太の部屋にいるあやめは、一人寂しくしていると思いきや、ベットの上でお菓子を食べている。翔汰は呆れた様子で言った。
「ベットの上で食べるなよ」
「ごめんごめん。それにしても、紗枝って人きれいだったね」
「確かに・・・・・・はっ」
「ちっ違うからな!」
「ふふふ、奥さんに言っちゃおうかな?」
「おまえなーーー」
と、話している。翔太を呼びに行こうと愛美が寝室へと近づいている事も知らずに。愛美は、翔太が独り言を話しているので少し気味が悪かった。
「翔太! 食べ終わったよ・・・・・・。それより誰と話してたの?」
「えっ、誰って。独り言だよ独り言」
「だといいけど・・・・・・」
と、疑いの目で翔太を見る。
「片付けるから、またどこか行ってくればいいんじゃない。今日はいい天気だし」
「その事なんだけど・・・・・・私たち今日から2泊3日の旅行に行こうと思うんだけど、だめかな?」
「いいよ。楽しんできなよ、俺もやりたい事あるしちょうど言いや」
「やりたい事、もしかして浮気とか?」
「違うよ。健が相談に乗ってほしいとか言ってたし」
「健くんが、めずらしいね」
「あいつもあいつでいろいろ悩んでるらしくてさ、とにかく楽しんでくればいいよ」
「じゃ、準備が終わり次第いってくるね」
「うん」
そう言うと、愛美は戻った。翔太とあやめもアパートに行く準備を整えた。食器は帰ってからすればいいやと思いすぐに家を出た。自転車に乗って、アパートまで急いだ。人が住んでいないと思いきや、以外にも人がいる。ここらで、それらしきアパートが無いか聞きこみにかかった。近くに居たおばさんに聞いた。
「すいません、ここら辺にひまわりの書いてあるアパートとか知りませんか?」
少し、気味悪がられた。
「ひまわりの? そんなのあったかしら・・・・・・。あっそういえば、昔そんなえの書いてあるアパートが会った気がする。」
「本当ですか?」
「えぇ、でも今はだいぶ昔に取り壊したはずだけど、そのアパートがどうかしたの?」
「いえ、父の昔住んでいた家を見たくて、ありがとうございました」
「見つかるといいわね」
と、おばさんは去っていった。心当たりを探していると、一人の少年が公園で遊んでいた。
「ねぇ君? 何してるの」
「えっ、僕の事が見えるの? それにとなりのおばさんも幽霊だよね」
「おば、私こう見えても20だから。僕、目が悪いのかな?」
「ううん。僕、両方とも視力Aだよ。おばさん・・・・・・」
「愛美おさえて、まだ子供なんだから。それより、君名前は?」
「僕、僕の名前は日向。西野日向だよ。よろしく! ねぇ、僕のお父さん探してくれない」
急な出来事だった。愛美のこと物ことを探すつもりが、違う子供の父親を捜すこととなった。話を整理するために、翔太はブランコに乗り話を聞いた。愛美は、おばさんといわれて拗ねている。ある程度の話を聞くと、翔太は決心した。
「よし、ある程度分かった。探してやるよ、君の父親。」
「ちょっと、私のことはどうなるのよ」
「大丈夫! 今回は、あいつのも手伝ってもらう」
「あいつって誰よ」
「俺の弟だ!」
「弟って、さっき言ってた健って人のこと? いいの、驚いたりしないの」
「大丈夫だ、あいつは俺よりも霊感が強くて、幼稚園の頃から見えているらしく幽霊なんて、見慣れすぎて人間と区別がつかないとかで、今度相談祈ってと言われてるほどだ」
「逆に幽霊のことで悩んでいるのに、幽霊の事でお願いする何でとんだ兄だな」
「とにかく、健の所に行こう」
翔太は、日向君を連れて健の家へと言った。家自体は、一軒家で特に目立ったことの無い普通の家である。家の間につくと、あからさまに玄関にはお札が何枚か貼られている。翔太は気にせず、ベルを鳴らす。
「ピンポーンピンポーン」
「・・・・・・・・・」
「出ないじゃん。居ないんじゃないの翔太?」
「いや、あいつの場合は、」
翔太はそう言うと、携帯電話で健に電話をかけた。すると、電話に出た。
「翔だよね」
「あたりまえじゃん。ねぇ、お願いごとがあるんだけど・・・・・・」
「嫌だ」
「いや、まだ何にも言ってないし」
「翔の急な頼みのときはなんかあるに決まってる」
弟に、見破られている兄だった。
「頼むよ。お前の、相談ついでにないいだろ」
「ちょっと、待ってて」
健は、電話を切ると玄関へと向った。嫌々と玄関の鍵を開けて、顔だけ出して外を覗いた。翔太を見て安心して横に居る二人に目が言った途端、
「バタン・・・・・・」
「えっ何で閉めるの?」
「だってそれ幽霊じゃん。だからいったんだよ、翔の急なお願いはいつも幽霊ごとだ」
「いそいでるんだ、頼むよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「分かった、でも僕に50センチ以上近づかないでね」
「はいはい、じゃ、入ろうか? お邪魔しまーす。久しぶりだな、健の家に来たのは何年ぶりかな?」
「2ヶ月ぶり、最近だし。で、今回は何のよう翔」
「あぁ、今日はこいつの事で来た。名前は西野日向て言うんだけど、こいつの父親を探したくてね。居そうなところを探してほしい。」
「5分頂戴。そrえまで、座っといてよ」
健は、PCを開くと色々な伝を辿って探し始めた。ついでに、あやめのひまわりの家の場所も探してもらう事にした。健が、こんな一軒家に一人で住んでいるのかというと、一人だと周りに迷惑を欠けないのと馬鹿にされないことがある。今は、親ともう一人の姉からの仕送りで暮らしている。外に出ると、霊力は強いせいか幽霊がよって来るのでろくに仕事が出来ないのもある。
「えっと、翔これなんじゃない?」
「確かにまわりだけど、あやめこのアパートであってるか?」
「どれどれ、多分これだと思う」
「で、日向の場所は?」
健は、ニヤリとするともう一つのページを見せた。
「不思議なことで、その子も同じアパートなんだよね。これは、運命だね」
「よし、さっさと行こう。そして、今回はお前にも来てもらう。いつも、家の中じゃ体にも悪いし、たまには人と触れ合わないと」
「はっ、俺絶対やだからね。なんで、幽霊嫌いをしってて連れて行く普通?」
「いいじゃん。俺一人じゃ心細いし」
「それが、本性かい。俺絶対行かないから、早く出てってよね」
健は、自分の書斎へと戻った。翔太も、仕方なしに場所を示した紙を持って外へと出ようとした。そこで、あやめが翔太を引き止めた。
「翔太! ちょっと待ってて、私頼んでくる」
「頼むって、無理だよ。人間でも無理なのに、幽霊が行ってもあいつおれよりも怖がりなんだよ」
「何とかしてみる。5分頂戴」
「幽霊と話すのもいいか、あやめの場合幽霊化人間か分かりにくいからな。分かった、5分だけだぞ! それと、無理にさそわなこと。無理に誘うと、今度こと一生家から出なくなるかもしれないし、絶対にトラウマになるから」
「わかった」
あやめは、健の部屋に行った。翔太と日向は、またリビングに入りあやめを待った。健の部屋の前に来ると、札の量が玄関の数倍はある。
「こんなに、貼っても効かないなんて、安物ね」
「誰・・・・・・・・?」
「あっごめん、私翔汰の横に居た幽霊だけど、入ってもいいかな」
「だめ、何のよう。行っとくけど、幽霊に脅されても僕行かないからね」
「それもあるけど、少し話がしたくて。なんで、そんなに幽霊のことを嫌うのかを」
「いいけど、翔には言わないでよ」
「うん」
「最初見たときが、幼稚園生のときだった。この頃から見えてると、幽霊と思うよりほとんど人の姿をしているから怖くは無かったんだ。それよりも、自分が見えているのに周りには見えてないから、いつも虐められてたんだ」
健は、次々に昔の話をし始めた。
「そうだったんだ。ごめん、何も知らないのに・・・・・・」
「なんで、あんたが謝るんだよ」
「ごめん、なんとなくね」
「まぁそれで、小学生の頃にはなるべく見えても人には言わないようにしてた。幽霊自体を怖がり始めたのは、翔が恐怖DVDを見せるようになったからかな。幽霊が、人を襲うところなんか何度も見せられたんだ」
あやめが言った。
「それって、翔太が原因ってこと。あの馬鹿、自分が引きこもりにした犯人じゃん」
「それが、幽霊嫌いの原因かな。じゃ、次はおばさんの話を聞こうかな?」
「おば、私の何で」
「だって面白そうだから。もしかして、翔の彼女とか」
「彼女なわけ無いでしょ。私はただ・・・・・・」
あやめは、翔太との出会いの馴れ初めを健に話した。途中、笑う声もしたが最後まで聞いてくれた。しばらくして、健の部屋の扉が開いた。
「面白そうだから、一緒に行ってもいいよ」
「本当! でもなんで、幽霊怖いんじゃないの」
「あんたと話してると、幽霊も人間も変わらないと思ったんだ。それだけだよ」
「やったー、じゃ行こう。すぐ行こう」
「うわっ、ちょっと・・・・・・」
あやめは、健の腕を引っ張りリビングへと連れて行った。翔太と日向は、ソファーで居眠りをしてる。あやめは、翔太の鼻を摘んで呼吸を止めた。すると、すぐに起き上がった。
「なんだよ、ん? おう、健なに来てくれるの」
「うん、一様今回だけね。この幽霊に免じて行ってあげる」
「すごいじゃんあやめ、じゃ、皆で行こう。歩いて」
「歩くの? ここから2~3キロあるんだよ。それに、最近外とか出てないから体力ないし」
「つべこべ言わず・・・・・・」
翔太たちは、歩いて向う事となった。久しぶりの外に、怖がりぎみの健をあやめが励ましながら行く。ひまわりの書いてあるアパートは、先ほど来た公園に近いので、一旦ここで休憩する事にした。
「結構歩くときついな。健、この辺りなんだろ?」
「うん、ここからすぐだよ。早く行こう・・・・・・あれ、あやめとか言う幽霊は何処言ったの?」
「えっ、日向あやめ見なかったか」
「さっき、変な男の幽霊と一緒にどっかいったよ。なんか、あやめの家のことを知っているとか何とか行ってたっけな」
「どっちに行った日向」
「たぶん、あっちの方に行った」
「分かった、俺はあっちの方に行くから、健は日向と適当なところ探してくれ」
「えっあ、行っちゃった。どうする、日向君先にひまわりのアパートのところにでも行く?」
「そうだね,アパートは何処にあるの?」
「あっちの方にあるはず・・・・・・」
「あっちか、行こう」
その時、日向が健の手を掴もうとすると、健は日向の手を避けた。
「ごめん、まだ幽霊に触るのは無理かな・・・・・・」
「そっか」
日向は残念そうに、手を握るのをやめた。アパートのあるほうへ歩いていくと、取り壊したはずのアパートが、取り壊す途中で半分は残っていた。健たちは、立ち入り禁止のテープを乗り越えて中へと入っていった。
「ここまで来るのに、たった一人も幽霊に会わないなんて奇跡に近いな」
「確かに、ここは昔から僕以外の幽霊なんて見たこと無いから、不思議だね!」
「それで、君の家は何号室か分かる」
「えーと、564室だったよ。でも、半分近くは取り壊されてるけど、僕の家まだ残ってるのかな?」
「大丈夫だと思うよ。残っているほうに、560-570までの家のポストが下のほうにあったからあると思うよ」
健は、日向のことを励ますように行った。
「この辺りに、あるはずなんだけど・・・・・・在った。564号室、ここか日向君」
「えーとうん、ここだよ! よかったまだ残ってたんだ」
「よかったな。とりあえず入ろう」
「ただいま」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
誰も居ない家に、ただいまという日向を見て自分には家族が居るのに、もう随分と家に帰っていないことに後悔する健。
「けっ結構いい家なんだな。それに、広いし何人家族だったんだ日向」
「それより、あれ大丈夫なのかな?」
「何が」
「あれ、あやめのおばちゃんだよね」
日向の指差すほうに、目を向けると隣にある学校の廃墟の窓からあやめと一人の男の幽霊が見える。あやめは、何かで拘束されているように見えた。急いで、翔太に連絡した。
「翔、翔大変だよ。近くに学校の廃墟がみえる?」
「うん見えるよ」
「そこに、あやめとか言う幽霊が男に拘束されてるよ」
「わかった、学校の何階だ?」
「3階だよ、僕たちは先に行ってるから早く来てね」
「無理すんなよ。俺が来るまで近くで隠れていろ」
翔太は電話を切った。
「俺たちも行こう、早くしないと大変な事になるかも」
健たちは、アパートを降りると隣の学校の廃墟に入っていった。普段人がいそうなところに限って人がいないと逆に怖い。恐る恐る街談を上っていく、日向はこういうことに関しては慣れているらしい。3階に着くと、長い廊下に出た。
「日向、3階のどの辺りの教室の中だった」
「真ん中ぐらいの場所だったよ」
「よし、近くまで行ってみよう」
あやめがいる教室に少しづつ近づいていく。ちょうど、あやめの居る教室の隣の教室まで来た。翔太に、隠れてろといわれたので隠れた。すると、あやめの声が聞こえてきた。
「何すんのよ、ていうかあなた誰ですか? こんな事していいと思ってんの」
男はニヤニヤと答える。」
「ひっひ、なんでこんな事をするのかって、簡単な事じゃねぇーか。お前さんみたいな幽霊は、俺たちの大好物だからさ」
「大好物?」
「そう、俺は人間から見ると悪霊といわれる存在だ。だから、こうして普通の幽霊を見つけては捕まえて取り込むのさ」
「そんな・・・・・・」
隣で効いている二人も、早く勝田が来ないかと焦る。
「どうしんの、あのおばさん殺されちゃうよ。もう死んでるけど」
「でも、翔が俺が来るまで行くなって・・・・・・」
「そんなの言い訳じゃん。ほら、早くしないと・・・・・・」
男は、あやめに近づきいつ取り込もうかと模索している。そして、あやめの方を両手で押さえ込んで、口を開け何かを取り込もうとしたとき、
「やめろ・・・・・・」
「んぁ? 何のようだいお前。こんなところで何をしてるのかな?」
「健! 何で来たのよ。あんた幽霊嫌いなくせに」
「仕方ないじゃん。あやめさんが危ないのに」
「なに、二人だけの空気作っちゃてんの? 仕方ない、生きた人間もそれはそれで美味しいし。着た君が悪いんだからね」
男は、健に近づいてくる。ゆっくりと確実に近づいてくる。日向は悪霊の幽霊を見た。それは、昔、生き別れたお父さんだった。どうなっているのか分からなくなった。
「お父さん? お父さんだよね」
男の幽霊の動きが止まった。
「日向、もしかして日向なのか?」
「そうだよ、父さん。お母さんも心配してたんだよ」
「あいつ・・・・・・・・・」
男は思いとど待ったと思いきや、男は急に急変し激しい口調で話し始めた。
「心配、? あいつのせいで俺は俺は・・・・・・うおぉぉぉ」
急にわめいた瞬間、強い突風が3人を襲う。
「うわぁっ・・・・・・!」
健は壁にたたきつけられた。
「あいつはあいつは、俺が居ない間に浮気をしていたんだ。最初のうちは気づかなかったけど、俺が帰りがいつもより早くなって帰ってくると、玄関に他の男の靴があったんだよ。それで、なんだか、どうでもよくなってふらついている内に車に引かれたんだ」
「馬鹿じゃないの、それはそれこれはこれよ。日向君には何にも関係の無い事でしょ。日向くんにとって、お父さんはあなた一人なのよ。なのに・・・・・・」
あやめは怒った。
「お父さん、あの時お母さんは。確かに男の人といたけど、それはお母さんのお兄さんだったんだ。」
「えっ! お義兄さん」
「そうだよ、あの時お母さんはじいちゃんの具合が悪いから、たまには帰って来いって話してたんだよ。お父さん、ただの勘違いだったんだよ。」
「そんな、俺は俺はなんてことをしたんだ」
男は、地面に膝をつき今までの事を悔やんだ。
「お父さんが死んでから、お母さんおかしくなって車を運転中に事故にあって死んだんだ」
男は、日向のところに来て頭を下げた。
「ごめんよ、日向。俺が、そんな勘違いをしてなきゃ・・・・・・」
「いいよ、気づいてくれた。それだけで十分だよ、それに幽霊ならまだしも、悪霊のお父さんなんていやだもん」
「そうだね、とんだお父さんだ」
「お父さん、もう成仏してお母さんのところに行ってあげてよ」
「うん、そうするよ。みなさん、多大なるご迷惑すいませんでした」
「いえ、最初はむかついたけど、許してあげる。早く行って上げてよ。奥さんのところに」
「はい、ではこれで・・・・・・」
あやめがそう言うと、男の体が光り始めた。そして、そのまま天へと上っていく。男は最後に、日向に一言言った。
「日向、お父さんは先に母さんのところに行ってくる。お前は、成仏したいときにすればいい」
「うん、僕もう少しこの世にいる。じゃあねお父さん」
「あぁ、いってきます」
そう言うと、男の姿は無くなり光も消えた。
「なぁ日向、俺のところに来ないか、この世に居るまでなら一緒に居てやるよ。心配だし」
「本当! じゃ、お願いします」
「うん」
「あの、いい感じのところごめんだけど、このロープほどいてくれない?」
「あっ、ごめん」
健はローぽを解いた。あやめに、日向の家が見つかったというと、よかったねよ言ってくれた。翔太が遅いので、学校の下に下りると、翔太が走ってきた。
「遅いわよ! なんで、健くんより遅いのよ」
「ごめん、もう一つの学校に行ってた。それより、大丈夫だったのか?」
「なんとかね。日向君もお父さんに会えたしね」
「うん」
「そうだったんだ、よかったね」
「翔、日向君の家見つかったよ」
「本当か? 何処にあったんだ、ひまわりの書いてあるアパートは」
「隣の建物だよ」
健が言った。健は、日向の家のところまでを案内した。
「ここだよ翔」
「この場所か。中には入ったのか?」
「うん少しだけどね」
「あやめの、部屋は残ってないかもな。ごめんあやめ、くたびれ損だったかも」
「いいよ、日向君の願いがかなっただけよしとしとかないと・・・・・・」
「あやめ、あやめ・・・・・・」
あやめは、遊園地のときのように急に倒れた。健と日向は心配したが、翔太に理由を聞いて安心した。あやめが目を覚まさないので、そのまま健の家に帰ることにした。
その時、あやめはまた頭の中に昔の記憶が蘇ってきた。そこは、山の中複数の人が登山の格好をしていた。遊園地のときに見た、男の人もいる。
「結構、人が多いねあやめ。こんなに来るなんて、さすがは有名な高尾山だ」
「大丈夫なの? こんなにいたら、いつ帰り着くかわかんないよ」
「いいじゃん、楽しく行こうよ!昨日の海での疲れが残ってるけど、若いから大丈夫だろ!」
「もう、仕方ないな~。私が誘ったから、文句は言えないけど」
あやめは、晃志郎の後に着いていった。しばらく進むと、3つの分かれ道があった。一つは、安全なコースでもう一つは、上級者向けのコースらしい。もう一つに関しては、道が崩れていて人がいけないらしい。
「やっぱり、安全コースが多いな。どうするあやめ、上級者コースなら人は少ないけど」
「もちろん、早いほうがいいじゃん。上級者コースに行こう」
「はいはい・・・・・・」
あやめの記憶が、また薄れていく。光がだんだん闇へと消えていく。
「ちょっと、もっと見せてよ」
あやめの野言う事など気にせずに記憶は闇へとなくなった。目を覚ますと、健のリビングにいた。
「やっと、目が覚めた。今回はこの前より長かったな。どうだった?」
「うん、また少し分かったよ。家に帰ったら話すよ、もう疲れた」
「そういうことで、健ありがとう。随分と世話になった、おかげて助かったよ」
健は照れくさそうに言った。
「ううん。今回は翔のおかげで、幽霊嫌いもましになったしこっちこそありがとう。それに、俺仕事やろうと思うんだ」
「仕事? なんの」
「探偵でもやろうかなって、それも幽霊たちと一緒に。幽霊なら、人がいけないところにもいけるし、人からは見えないしね」
「まぁおもしろそうだな。まぁ、無理の無い程度がんばれよ」
「うん、わかってる。じゃあね」
「おう、さいなら」
翔太とあやめは、日向を健に任せて家を出た。
人は、知らないうちに勘違いをしてしまうこともある。けど、そんな時こそ慎重に考えていかないといけないのかもしれない。