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《アイ》  作者: 百里芳
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 あれ以来――草はらで別れてから一週間、僕は一度も結と会っていない。。

 電話で声を聞くこと、もちろんない。もしかしたら、結から連絡が来るかもしれないと思って携帯端末をずっと握りしめているけれど、メールの一つも着やしない。自分から連絡を取れば良いんだろうけど、メール作成画面を開くだけで、心臓がうごうごと不快に揺れて、僕は体が動かせなくなってしまう。

 思い返せばこの十年間、結と三日と離れた事は無かった。

 高校の修学旅行の時も空いた時間を見つけては結に電話をかけていたし、大学の受験勉強をするときもいつでも結が隣に居た。というか、僕の学力は結に勉強を教えることで支えられていた。他人に教えるにはまず自分が理解できなければならないと言う意見には、強く実感を持ってうなずくことが出来る。

 僕は、友達も少なくないし、充実した人生を送っていると思っていた。けれどもこうして結と離れてみると、自分が本当に空っぽな人間だったと思い知らされる。趣味と呼べるものは無いし、こうして暇でも気軽に連絡を取り合える相手はいない。高校でも大学でもクラスメイトとの関係は悪くないけれど、それはプラスマイナスゼロみたいなものだ。部活も委員会も、カラオケも合コンも、何もかもを結を理由に断り続けてきた。そもそも僕は、周りの人間から居ても居なくても同じだと思われているんだろう。何せそもそも交流する機会が休み時間のお喋りしか無いんだから、居なくなっても支障は出ないし、気が付かれない。

 結は僕の全てだ。嘘偽りなく、大袈裟でもなく、こう信じていた。

 でも本当は、結の一部が僕なんじゃないだろうかとこの一週間で思うようになった。結という母艦から切り離されて、単独ではなんにも出来ない個体。それが僕。愛する恋人との別離を、半身を引き裂かれる、なんて表現することがあるけれど、僕の場合は身体の九割くらい持って行かれた気分だ。

 逆に身体の一部が増えた、「目」を移植された結はどんな気分なんだろう――なんて、また結のことを考えてしまう。

 ――WPRDのせいだ。あんな変な機械を埋め込まなきゃ、僕と結はずっと幸せに暮らしていけたのに。あんなもの、結の体に埋め込むべきじゃなかったんだ。僕の心の中に淀んでいた不定形の感情が、一気に「WPRDへの恨み」という気持ちへ固まる。

 可視光線外の光も捉える? 壁の向こうも見える? なんでそんな事する必要があるんだ。そもそもあの機械は何のために開発されたんだ。視覚障害の治療のためなら、もっと別な方法があっただろう。

 僕はずっと握りしめていた携帯端末へ向かって「WPRD」とつぶやく。端末はその音波を即座に音声認識し、関連情報を検索した。

 WPRD――|広周光子受信デバイス《Wide-renge Photon Receiving Dvice》は、もともと脳科学分野の実験のために生まれたらしい。人体が本来想定されている情報――たとえば音だったり、温度だったり――以外の情報を受信した時、脳がどのように活性化するか。人間の脳の新たな能力を開発出来ないか。そんな有るかも分からないニンゲンのカノウセイを実証するためにWPRDの開発はすすめられた。

 こんなふざけた装置の開発、誰も反対する奴はいなかったのか、と思って調べていくと、確かに倫理的観点、人体への安全性の観点から反対を受けた歴史もあったらしい。しかし、その事について詳しく述べている文章には、「WPRDへの恐怖心は、遺伝子組み換え作物や、原子力発電への過度の恐れと似たようなものであり、適切に使用すれば問題なし」と分かったような分からない様な事が書いてあった。現代の法律に照らし合わせても、WPRDの使用に制限はかかっていない。

 現在の反対派は、この装置を装着することを禁じている宗教くらいだろうか。もっとも、逆に蛇を神として崇めている一部の信仰者は、赤外線が見れるようになることを「神と同じ視点を得る」ことだとして、逆に装着を推奨しているなんてこともあるみたいだけど。

 どうやったら結はWPRDを外してくれるだろうか。目が見えるようになってあんなに喜んでいる結に、なんて伝えればいいのだろうか。

 こんなことをぐるぐる考えていると、夜も眠れなくなって、しかも夜にはアルバイトが入っていたりして、でも昼眠れるかというと、そんなことはなくて。

 仕方が無いので、バイト先の店長に無理を言って、シフトを変えてもらった。深夜の仕事を、昼間に変更してもらったのだ。もともと、結と会う時間を確保するために深夜にしていたのだ。結と会うことが無いなら、昼間に仕事して夜眠ろうとする方がはるかに健全だろう。

 僕は重たい体を無理やり動かし、バイト先のコンビニへ向かう準備を始めた。



 お疲れさまでーす、と呟きながら、バックヤードに入る。一緒のシフトに入っている涼太さんが、雑誌を読みながらくつろいでいた。

「おう、新。おつー」

 涼太さんが雑誌から目を切らずに答えてきた。

 手にしている雑誌は『月刊 家庭菜園の友8月号 キュウリ、ゴーヤ、スイカ――夏の瓜科特集』だった。涼太さんの意外な趣味発覚。

「涼太さん、家庭菜園なんてやるですね」

「ああ、ちょっとな、」と言いながら涼太さんが顔を上げる。「……って、新。お前、酷い顔してるぞ」

 涼太さんが少しだけ驚いた顔をしている。笑顔以外の涼太さんの表情は珍しい。

「そうですか? そんなことは無いと思うんですけど」

 家を出る前に、顔を洗って鏡でチェックしたときはいつもと変わらない顔だったはずだ。違いは少しクマが出来ていることくらいだったろうか。

「そんな、この世の苦しみを一身に引き受けましたー、みたいな表情でレジに立ってみろ。店長がすっ飛んで来るぞ」

「……そんな顔、してます?」

「ああ、してる。何かあったのか? もしかして結ちゃんにフラれた、とか。……当たりかよ。新、お前、もうちょっと表情筋を制御しろよ。内心だだ漏れだぜ」

「別に、フラれたんじゃ……。それに結と僕は、付き合ってた訳じゃないですし」

「恋人同士でもない奴らが、腕を組んで仲良さげに歩くのか」

「……結は目が見えな、かったんですよ。だから僕が介助していた。ただそれだけです」

「『見えなかった』ってことは、今は見えるのか?」

「ええ、WPRDなんていう大層な機械を装着したら――」

 僕はWPRDと、それから結についてざっと説明した。別に教えてあげる義理も無かったのだけれども、涼太さんの「へーそうなのか、知らなかった」という少し驚いた顔を見たくなった。

「……ああ、あれか」

 涼太さんはWPRDを知っていたらしい。僕は自分の目論見が上手く行かなかった事に少しだけふてくされた気分になって、半ば自棄で腹にたまった言葉を吐きだした。

「だからもう、結には、僕が必要ないんです」

 僕の言葉を聞いた涼太さんは、たっぷり5秒間かけて、じわじわ不機嫌な顔になっていった。最近の涼太さんはなんだかやけに表情豊かだ。

「……お前、まだそんなこと言ってんのか」

 いつもなら、良い事も悪い事も笑って受け流す涼太さんが、生々しい、苛立ちを隠さない声で言った。普段は他人を魅了する深くて豊かな低声も、いまは僕を威圧する以外の効果はなかった。

 涼太さんは手に持っていた『月刊 家庭菜園の友8月号』を手近なテーブルに置くと、すっと立ち上がって僕の近くへ来た。何故かもう、涼太さんはいつもの顔に戻っていた。

「……なあ、新。お前、『月暈』って知ってるか?」

 涼太さんは僕に、近くにあった椅子に座るよう促してから、自身もその隣の席に腰を下ろした。

「ツキガサ、ですか? ……きのこの名前か何かですか」

「ちげーよ。月暈ってのは、月に雲がかかっている時なんかに、月の周りに光の輪が出来る現象のことだ。月の光が空気中の氷の粒を通過するときに、それがプリズムの代わりになって光が輪っかの形になったり、それに色が付いたりして見える。月が明るい夜に、月の周りに変な色の雲がかかってるの、見たことないか?」

 そう言えば月の周りに、変に虹色に光る雲を見たことがある。見るたびに不吉な感じがするので、僕はあまり好きじゃない。

「あります、けど。……それがどうかしました?」

 涼太さんはちょっと目を細めて、視線を宙に動かしてから、静かに話し始めた。

「元カノと一緒に、夜歩いてた時の話なんだけどさ。その晩は月が真ん丸で、明るかった。その月に、キレーに月暈がかかってたんだ。それも、白とか虹色じゃなくてさ、珍しい事に綺麗なピンクだった、らしいんだけど」

 僕は、涼太さんの「らしい」という言い回しに少しの違和感を覚えながらも、無言で話しの続きを促した。

「でさ、元カノが月を指差して『わ―みてみて、きれい!』なんていうから、俺も月を見上げたんだよ」

 涼太さんの声真似が上手すぎる。でもそれを茶化すことが出来なかった。涼太さんの顔はあくまで真剣そのものだ。

「俺はその月を見て、言っちゃったんだよ。『へー、綺麗なエメラルドグリーンだな』って。そう言った時の元カノの顔、得体のしれない化け物を見るみたいなスゲー恐い目してたな」

 なにがおかしいのか涼太さんは、ははっと小さく声を出して笑った。

「……ピンク色の月暈だったんですよね。なんでエメラルドグリーンなんですか」

「俺さ、色弱なんだよ。緑色と赤色の区別がつかない奴」

 高校の頃、生物の授業で習った気がする。

「そうなん、ですか」

「ああ。で、それがきっかけで大喧嘩。『ピンクがエメラルドグリーンなんて、変だよ』って、スゲー冷たい目で見られたなぁ。良いじゃねえか別に、俺はそういう風にしか見えない目なんだからって思ったけど、アイツは許せなかったみたいだ。同じ風に見えないなんて気持ち悪い、ってな感じで」

 回りくどく説教されているみたいで気分が悪い。自分の眉間にしわがよるのを感じる。ていうか、元カノさんの台詞を、女声で忠実に再現するのを本当にやめてほしい。涼太さんは、ちょっと前までの不機嫌顔が嘘みたいにニヤニヤしている。自分の失恋話のなにが面白いのだろうか。

「……なにが言いたいんですか。僕と結とでは見えているものが違うから、喧嘩しても仕方がないっていうんですか」

「いや、別に」

 僕が真剣に悩んでいるのに、涼太さんはどういうつもりなんだろう。頭に血が上って来た。視野が狭くなり、くらくらする。でも相手は一応年上だから、出来るだけ冷静に、落ちついて話す。

「それとも、見えているものが違うって理由で喧嘩するのは下らないからやめろ、って言いたいんですか」

「そういうつもりでもない。第一、見えているものが違うと喧嘩するっていうんなら、目が見えるようになる前の結ちゃんと新は喧嘩しっぱなしだったはずだぜ。『見えているものが違う』どころか、片方は何も見えていないんだからな」

 涼太さんは、本当に意味不明なことに、最高に楽しそうだ。獲物を追い詰めて遊ぶネコみたいな目をしている。

「……じゃあ、なんでそんな話を僕にするんです?」

「新が女々しく、うだうだしているから、俺も愚痴ろうと思って。だって、ありえないだろ、なぁ!? 月の見え方ひとつで別れるとか、マジ意味わかんねーっ! 『同じ月の美しさを共有できないなんて、私あなたと、もうやっていく自信ない……』って、ロマンチストにもほどがあるだろ。俺も散々フったりフラれたりしたけど、こんなん初めてだぜ」

「涼太さん、さっきから気になってたんですけど、なんでそんなに女性の声真似上手いんですか?」

「挙句、『最近はWPRDっていうすごい機械もあるんだって。それを付ければ涼太君の目もきっと良くなるよ』ときた。別に俺の色弱は病気じゃないし、困ったこともほとんどないっつーの!」

 だからWPRDについて知ってたのか。

 涼太さんは此処まで捲し立てると、一息ついてからすっと真顔に戻った。

「新、そもそもお前、結ちゃんと喧嘩してるの?」

「……普通は仲違いしているのを『喧嘩してる』って呼ぶんじゃないですか」

 僕は別に、結と喧嘩したい訳じゃない。

「じゃ、なんで仲違いしたんだ?」

「それは……、WPRDが……」

「だーかーらー、WPRDは関係ないだろ! 『見えてるものが違う』から仲違いするんだとしたら、お前と結ちゃんは、そもそも仲良くなんかなれなかったはずだろ。結ちゃん目が見えて無かったんだから。新は、WPRDを付けた結ちゃんの、何が許せなかったんだ?」

「僕は……」

 ……結の、何が気に食わなかったんだろう。

 結の目が見えるようになったらいいな、ずっとそう考えてきた。そうしたら、僕が見ているもの、美しいと思うもの、楽しいと思うもの、全部結に知ってもらえると思っていたからだ。

 でも結は、僕と同じものを見るどころか、僕が見えないものまで見えるようになってしまった。僕は、それが許せなかったんだろうか。

 でもそうだとしたら、目が見えなかった結は、目が見える僕を、どんな気持ちで眺めていたのだろう。サトリの妖怪を見るように、気持ち悪いと思っていたのだろうか。

 ――いや、そんなことがあるはずない。結は嫌いな人間とずっと一緒に居られるような人じゃない。それに結は演技が下手くそなんだ。僕を内心嫌っていながら、それを隠し通せるはずがない。僕が一番よく知っている。

 僕は、結の何が気に食わなかったんだろう。

 僕は、何にいら立っていたんだろう。

 僕は――

「……所で新、おまえ結ちゃんと付き合ってる訳じゃない、って言ったな」

 ふいに涼太さんから放たれた一言で、僕は強制的に思考の海から引き戻された。

「ええ、そうですけど」

「じゃあ、お前今、誰とも付き合っていない、ってことか」

「……そうですけど」

 涼太さんの話す口調が真剣なものへと変わっている。僕の脳みそは、急な話題変更についていくことが出来ず、反射的に返事をしてしまう。

「じゃあ、新はいまフリーってことか。……俺もさ、いま独り身なんだよ。下らない理由で彼女と別れちまったからな」

 涼太さんの目が怪しく光っている。

 僕の目はWPRDではないはずなのに、涼太さんの全身から怪しいオーラが出ているのが見える。そんな気がした。僕の脳みそはフルスロットルで警戒信号を送っているけれども、僕の体は硬直してしまって動くことができなかった。

「なぁ、新。俺のストライクゾーン広いんだぜ、って教えたよな」

 やばい。

「俺なら、お前にそんな悲しい顔、させないぜ」

 涼太さんの、低い声がねっとりと僕に絡みついてくる。左隣に座る涼太さんからの見えない圧力が大きくなるのを感じる。物理的な距離も近づいている気がする。

「新」

 左耳に向けて、僕の名前がささやかれる。粘着質に僕の体を取り巻いていたはずの低声が、今度はまっすぐに僕の耳を貫いて脳まで届いた。低周波で僕の脳はぐずぐずに溶けてしまいそうだった。

「なあ、新」

「い、いや、僕、そう言う趣味は無いんで! 涼太さんにはお世話に、なっていたり、するんだったりするんですけど。ちょっとそう言うのは、だめ? かなーって!!」

 やばい、なんとかこの状況を打破しなきゃ、色々やばい。

「じゃあ、結ちゃんにするわー。10年来の幼馴染と喧嘩して傷心の結ちゃんを慰めて、落とす。遠目に見ただけだったけど、結ちゃん美人だし」

 さっきまでの妖艶な雰囲気とは一転、涼太さんが爽やかな声で宣言する。涼太さんのニヤケ顔をみて、からかわれたんだと悟る。

「だ、ダメです!! 結は、結とは……ダメです!」

「なんで駄目なんだよ。別に恋人でもない新が口出すことじゃないだろ」

「でも……! ほら、涼太さんフリーターじゃないですか。そんな収入の安定しない人に結は任せられないなー!」

「お前は父親か。……それに俺のフリーター業は、趣味だ。他に収入があるから大丈夫だよ」

 なんていう趣味だ! でも涼太さんなら……、と納得してしまう不思議。

「歳の差が!」

「結ちゃん17、だっけ? 今時10歳くらいの歳の差、珍しくないぜ」

「見た目が!」

「俺の外見、どう思う?」

「カッコいいです!」

「だろ?」

 くそ、ダメだ!! 隙が無い!!

「じゃっ、お前に止める理由は無いな。バイト終わったら早速アプローチに行くわ」

「だ、ダメです! それに結が涼太さんになびくとも限らないじゃないですか!」

「新。お前は知らないかもしれないが――」

 涼太さんが、すっと、笑った。青天の三日月をそのまま笑顔に落とし込んだような、美しく凄みのある笑みだった。

「――俺は、自分から告白して失敗したことは、これまで一度もない」

 そんなの、ありかよ。いくら、色男と美男子とハンサムとイケメンとイイ男とナイスガイをたして6を掛けた様な涼太さんでもそんな事ありえて溜まるものか。

「それでも、ダメです!」

「なんでだよ。俺が結ちゃんと付き合うことに、何か問題でもあるのか」

「僕が、結の事好きだから、駄目です!」

 一瞬の静寂。

 涼太さんはこれまで人生で一度も見せたことが無いでくらい間抜けな顔で、口を半開きにさせている。

 僕の脳みそは、僕の唇が紡いだ言葉を、いまだ理解できていない。

 それほど広くないはずのバックヤードの壁が、ものすごく遠くにある様に見える。

 僕が発した言葉が壁に跳ね返り、僕の耳に届く。

 僕は、僕の言葉をやっと理解する。

 バックヤードの中心で愛を叫んだ男、ここにあり。

 ――そんな状況だった。

「ぷっ、ふふ。あーっはっはっはーっ!! そうか、好きか! じゃあ仕方ないな!」

 涼太さんがやけに響く良い声で笑っている。僕の頭はじーんと痺れて鉛みたいになってしまっている。僕の顔は真っ赤になっているに違いない。顔や耳が暑くて暑くてたまらない。

 おーい暇ならそろそろ交代してくれー、という店長の声が聞こえる。

 涼太さんは笑いすぎて涙が出ている目元を擦りながら立ちあがり、おい行くぞ、と僕の背中を叩いた。僕も慌てて頭を切り替えて立ち上がる。バックヤードの出口に向かいながら、涼太さんがちらりとこちらを振り返って、言った。

「ちょっとかましな表情になったぜ」

 そして、サムズアップして、満面の笑み。

 涼太さん、慰めてくれてたのか。……本当に、慰めてくれてたのか? からかわれていただけのような気もする。不器用な慰め、というか斜め上の方向に器用な慰めだったけど、僕の心は大分軽くなっていた。バイト中に表情の暗さで店長に怒られることはなさそうだ。

 余談だけど、バイト中に涼太さんに聞いた話では、そもそも自分から告白したことは無いそうだ。ゆえに失敗率ゼロ。……あんなに何人もの女性と付き合っておきながら自分から告白したことが無いのも凄いと思うけど。

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