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《アイ》  作者: 百里芳
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3

結局、僕と結が町に繰り出したのは、退院してから3日経ってからだった。

 入院中の荷物の整理だの、各種手続きだの、リハビリだのと、なんだかんだと忙しかった。そう結は少しくたびれた顔で僕に教えてくれた。

 特に時間がかかっているのは学校関係の手続きだと結は言う。結は夏休み後の新学期から、一時的に転校することが決まっている。それまでの盲学校から、一般の高校へ。籍を移してしまうのではなく、術後の経過観察しながらの「留学」という扱いなんだそうだ。

 今日の僕らの予定は、思いつくままにぶらぶらしながら結の高校の制服を取りに行く事だ。

 制服を扱っているデパートは街の中心にあるから、郊外に出ずに町中を中心に周って行こうと思う。僕はそう結に告げた。

「うん、今日は全部あーちゃんに任せるね! エスコート、よろしくね!」

 こんなにはしゃいでいる結を見るのは、いつ以来だろう。

「ああ、僕に任せろ! ……とは言ったものの、なんも決めてなかったな。どこが良いかな……」

 後半の僕の独りごとを、聴覚に頼って生きてきた結が聞き逃すはずが無かった。

「えーっ!? あーちゃん、今日のデートプラン、決めてないの? 男の子は、ちゃんとデートプランを練って、女の子をお姫様扱いしなきゃならないんだって、この前あーちゃんが読んでくれた賀古ミライ先生の『王子様(プリンス)は女の子の夢をみるか』第3巻に書いてあったじゃない!」

 なんという記憶力だ。なんという脳の無駄遣い。

 賀古ミライ作『王子様(プリンス)は女の子の夢をみるか』(青海社)は、女子中高生に人気のファンタジックSFラブコメディ漫画だ。女子向け漫画月刊誌に連載されており、現在11巻まで単行本が発行されている。結のお気に入りの漫画の一つなのだが、これを読み聞かせてやるのはなかなか恥ずかしい。美男美女のラブコメをひとりで演じ分けるのも大変だし、歯の浮くような台詞を言うだけで、心が擦り減っていくのが分かる。ちなみに略称は「王夢(プリゆめ)」。

「そもそも今日のコレは、デートなのか。制服を取りにいくついでに色々見て周ろうとか、そんな感じなのかと思ってた」

「えっ、デートじゃないの? デートじゃないんだぁ……」

 うじうじ、と結はわざとらしく落ち込んでいる。彼女の演技力が向上する日は来るのだろうか。

「ごめんごめん、冗談だよ。デートで良いよ」

「なんか、投げやり……。あーちゃんの意地悪」

「好きな子には意地悪したくなっちゃうんだ。仕方ないよね」

「知ってる、確かそれツンデレって言うんだよね! この前あーちゃんが読んでくれた金子利典先生の『2万メートルの心の距離』の下巻に書いてあった奴だよね!」

 なんという人生の浪費。

 金子利典著『2万メートルの心の距離』(丸山文庫)は、女子高生に人気のミステリック・ラブ・ファンタジー小説だ。耽美的で甘い描写が女性に人気である。結のお気に入りの小説の一つなのだが、これを読み聞かせてやるのはなかなか大変だ。上品ではあるもののエロティック一歩手前の描写を朗読するのは恥ずかしいし、そもそも読むには長すぎて疲れる。

「いや、僕はツンデレじゃないよ。いつだって結にデレデレだよ。好きすぎてちょっと困るぐらい」

「えっ、あ、うん。わたしも……それ。でれでれ、かも」

 結の目が見えるようになっても、こんな軽口の言い合いはまったく変わらない。それが分かっただけで、僕は嬉しくなってしまう。心臓の底を優しく撫でられたみたいに、胸の奥にくすぐったさを感じた。

 


 3歩進んで5歩下がる様な楽しい掛け合いをしながら、とりあえず駅ビルを散策することに決めた。人が多い所に行くのは少し不安だからあーちゃんといるときに慣れておきたい、と結が言うからだ。

 結は見るもの見るもの、何でも楽しんでいるようだった。

 ウインドウショッピングにしても、そもそもガラス自体が面白いらしい。マネキンを見て「どうしよう、あの人ずっと動いてないし息もしてないよ。それに体温も低い……あーちゃん、どうしよう」と涙目になっていた。

 人生で初めてショートケーキを見て、「すごい! 白い!……でもわたし的にケーキはオレンジ色のイメージだったんだけどなぁ」としきりにつぶやいていた。その後地下スーパーマーケットの青果コーナーに行って果物のオレンジを見せたら「……これはわたし的にはピンクと呼びたい色だよ」と訳のわからないことを言っていた。

 アパレルショップをひやかしたときは、「あの服見てくるー」と走って行ったは良いが、その服を手にとってはすぐに戻し、手にとっては戻しを繰り返し、とぼとぼ戻ってきた。曰く「……手触りが残念」。結なりにこだわりがあるみたいだ。

 さんざん見て周って、あっという間に2時間がたった。最初ハイテンションだった結も、ややおとなしくなりつつある。WPRDは、慣れないうちは装着者への負担が大きいらしい。

「結、そろそろお昼にしようか」

「うん、そうだね。……わたしちょっと疲れちゃった」

「クイーンバーガーと、ハッピークラウンどっちがいい?」

 前者は比較的安価なファストフード、後者は味にこだわりがあるがやや高価なファストフード店だ。僕と結が外食をする時は、基本的にいつもファストフードである。予算の都合もさることながら、箸や皿を使う必要が無いため結が食事がしやすいという利点もあった。

「あーちゃん。わたし、ハンバーガー以外の物が、食べてみたい」

「えっ、でも……。そうか、そうだよね。見えるようになったんだし、他の物にも挑戦してみようか」



 駅ビルの最上階、レストラン街へ向かう。

 9階にはレストランがずらりと並んでいて、優柔不断な僕は何時も迷ってしまう。右手には洋食屋、その奥には中華、さらに奥にはイタリアン。いろんな種類のお店からその時の気分によって選ぶことが出来るのが、レストラン街の魅力だと思う。

 店の前のガラスケースには、精巧に作られた食品サンプルが並んでいる。食品サンプルは良い。見ていてえ飽きないし、制作者の工夫や熱意が伝わってくる気がする。僕はサンプルを見ているだけでも、ああ美味しそうだななんて思ってしまって、それだけでお腹いっぱいな気分だ。

「さあ、結。どこがいい? ここ一フロアに和洋中全部あるから、どんなものでも大丈夫だよ」

「……あーちゃん。このガラスの向こうに置いてある、なんか変な樹脂の塊、なに?」

 そうか、結は食品サンプルを見たことが無いのか。

「ああ、これは……『食品サンプル』って呼ばれているもので、そのお店で提供されているメニューをこんな風に模型で展示してあるんだ。文字や写真のメニューだけじゃ伝わり難い盛り付けとかサイズとかが、これだと一目で分かるよね。それに、最近の食品サンプルは良く出来ていて、本当の食べ物みたいでしょ! ほらこの麻婆豆腐のとろみの具合とか……!」

 中華料理店のガラスケースに展示してあるサンプルの麻婆豆腐を指差す。いかにもプラスチック製でございやす、という安っぽい食品サンプルとは違い、この麻婆豆腐(偽)は良く出来ている。豆腐の柔らかさから、餡のとろみ、油のテカリまできちんと再現されている。きっとこれを作った職人は熟練か、そうでなければ相当の麻婆豆腐フェチと見た。

「……これ、わたしが見たことある麻婆豆腐と全然違う」

 結がなにやら難しい顔をしながら言った。

「まあ、ちょっとした色とか具材の大きさとかは調理の方法によって変わっちゃうと思うけど」

「そうかなぁ……。シルエットはともかく、色は全然違うし、温度もこんなふうじゃない。……あーちゃんには、これが本当に麻婆豆腐そっくりに見えるの?」

 そう言う結の口調は猜疑心に満ちていた。ねえねえ新種のカブトムシ発見したんだ見て見て、と言いながらコガネムシを見せて周る人を眺めているような、そんな「かわいそうな人を見る目」で僕のほうへ視線を送っていた。

「……僕にはそう見えるんだ―」

 僕に出来るのは、そう言ってから、話しを逸らすことだけだった。



 食品サンプルの話題に触れてしまわないように注意していたせいか、僕らの口はいつもより重かった。サンプルを見ずに文字のメニューだけ見て、これはどうあれはどうと、しばらくの間うろうろしていた。

 少し歩いて、結局選んだのはおそば屋さんだ。何でも以前落語の「時そば」を聞いてそれ以来ずっとおそばが食べたいと思っていたらしい。

 お昼の時間を少し過ぎていたからか、店内は空いていた。空いているお席へどうぞ、と促されたので、お店の奥の方の、他の客からは死角になる場所を選んだ。

「ねえ、あーちゃん。隣じゃなくて、その、向かいに座ってくれないかな。隣だとあーちゃんの顔が見えなくて……ちょっと寂しい」

 いつもの流れで隣に座ろうとしたら、柔らかく拒否された。

 恐らく彼女に他意は無い。本当に僕の顔を見たいと思ってくれているのだろう。

 なんとなく照れくさくなって僕の顔は熱くなる。でも僕の首から下には、なぜか冷たい液体金属を流し込まれたかの様な悪寒が走った。背筋には汗が伝っているだけなのに、何匹もの蟻に這われている様にぞわぞわした。左腕は、肉がそがれて骨だけになった気がした。

 でも僕は、そんなことおくびにも出さずに、心とは裏腹に、物分かりよく、「そっか」と一言絞り出して、結が左斜め前に見える席に座った。席に座るとすぐ、ほうじ茶が運ばれてきた。結はそれを見て「まだ熱い色してる……今飲むとやけどする……」とぶつぶつ言っていた。僕はそれを目の端で眺めながらお品書きへと手を伸ばす。

 結は目が見えるようになったものの、文字はまだ読めない。文字自体は一応覚えている様だが、小さい文字や長い文章を読むのには時間がかかってしまうらしい。

「結、なに食べる?」

「コロッケそば!」

「いや、そんなものは無い」

「え、ないの?」

「存在はするけど、こう言うおそば屋さんにはないかな。駅の立ち食いそばとかに行かなきゃ」

「じゃあ……どんなのがあるの?」

「基本は冷たいのか、温かいのか。それに、かき揚げとか油揚げとかをトッピングする感じかな。あとサイドメニューで稲荷寿司とか小さな丼ものとかがあるみたい」

「うーん、じゃあ、あったかいの」

「じゃ、僕は冷たいにしようかな」

 すみませーん、と店員さんに声をかけてかけそばとざるそば、そして稲荷寿司を一皿注文する。僕がざるそばと稲荷寿司を選んだのは、結がかけそばを食べられなかった時の保険だ。彼女が初めてみるそばを、それも熱々のかけそばを上手に箸でたぐれるかどうか不安だった。

 注文を終えてしまうと急に手持無沙汰になって、ほうじ茶に手を伸ばす。茶碗に口をつけようとした時、結が声をかけてきた。

「あーちゃん、そのお茶まだ熱いよ。多分85度くらいあると思う。やけどしちゃうかもよ」

 結の言葉を聞いて、僕はお茶碗を持った姿勢のまま固まった。

「……そうか、そんなことまで分かるのか」

「多分、多分だよ。家でポットから85度のお湯を出した時の感じと似てるの」

 ――危ないから気をつけて、と言うのはどっちかというと僕の仕事だったはずなのに。

 結も成長してしまったんだなと、嬉しい様で、寂しい様な、頭の芯がしびれてしまって、あんまり深く考えたくなくなってしまった。。脳みその痺れを、ただ一言「ジーンとした」という陳腐な慣用句に押し込た。ふいに結に一歩先に行かれてしまったという、喜びと切なさが入り混じった複雑な感情を僕は出来る限り、ポジティブな感情でくるんで飲み込んだ。何か忘れ物をしている様な引っかかりが残ったけど、僕はそれを無視した。

「そっか。ありがとう、気を付けるね」

 礼を言うと、結は頬をいっぱいまで引き上げて、にっこりと笑った。ほとんど見たことが無いくらいの顔全体の笑顔だった。

 僕も、それに微妙な会釈を返してから、茶碗に息を吹きかけるのに集中するふりをした。

 僕と結の間に、沈黙の時間が訪れる。

 結はきょろきょろと物珍しそうに店内を見回し始めた。僕はどうしていいかわからなくて、だんだん冷めていくお茶をまだ吹き続けている。

 結の目が見えなかった時は、むしろ穏やかで温かかった沈黙の時間が、少しだけ苦痛だった。

 いつもなら僕に寄り掛かってくる結の体温を感じて、結のささやかな呼吸の音に集中して。おそらく結も、僕から発せられる小さな音とか体温とか匂いとかそう言ったものを感じながら、僕らは無言の時間を過ごしてきた。言葉は無くても、二人の間に交わされているものがあった。

 今はどうだろうか。僕は手に持った茶碗の熱だけを感じている。結は、安っぽい和風の内装も、人工皮張りのソファーも、くるくる働いている店員さんも、何もかもが興味深いのか、それらをじっと観察している。おそらく、僕との間に会話が無い事さえ気がついていないだろう。そう考えると、みぞおち辺りがイライラして、口の中には薄めた血液のような変な唾液が溢れてきた。

 その後、運ばれてきたそばを二人で食べた。

 結の箸遣いは、決して綺麗ではなかったが、僕が予想していたよりはあるかに上手だった。

 結はWPRDを使って、舌をやけどすることなく、一生懸命かけそばを食べていた。僕は僕で、別に食べたかった訳でもないかけそばと稲荷寿司をもくもくと食んでいただけだ。時々結が「上手くすすれないよ。ねえどうやってやるの」とか「そばの色って思ったより気持ち悪いね。味は美味しいけど」とか話題を振ってくれたけど、生返事しか出来なかった。思えば結からこんなにたくさん話題を振ってくるなんて、今まではなかった。結の外で起きている出来事を僕が言語化して結に伝えるばかりで、結から会話を始めるのはそう多くないパターンだ。でも、そんなことにすら僕は気付けなかった。



 昼食を食べる前は、少し疲れているように見えた結も、お腹がいっぱいになったら元気を取り戻したみたいだ。おそば屋さんから一足先に飛び出すと、あーちゃん、はやくいこうよー、と僕を急かしてくる。なんだか散歩に行きたい犬みたいで微笑ましい。

 そんな風に僕が和やかな気持ちでいると、結が転んだ。何も無い所で転んだ。

「結、大丈夫?」

 結のそばまで早足で駆け寄って、左手を差し出す。

「いてて……。このデパートの床、なんだか紛らわしいね。段差がある様に見えるよ」

 結は、恨めしそうに床の一部をにらみながら、独りで、立ち上がった。

「いや、そんな風には見えないけどな」

 宙を切った左手を誤魔化す様にチノパンの太もも辺りでぬぐいながら、結に訪ねる。

「どこら辺が段差に見えるの? 結」

「あの、模様が付いている所。黒、だよね? あそこの辺りが、周りの床とも少し温度が違うし、反射する色も全然違ってるし。もーっ……」

 デパートの床は、大理石風のベージュのパネルが敷き詰められており、規則的に小さな黒いパネルが配置されている。僕には単なる幾何学的な、平面的な模様にしか見えない。

「気を付けなよ。いくらWPRDが凄いからと言って、今の世の中はWPRDに適応するように作られている訳じゃないんだから」

 まだ納得言っていない様子の結の右手を、左手でつなぐ。結は、この社会に、視覚の社会に生まれたばかりの赤ちゃんだ。やっぱり僕がきちんとリードしてやらないと、駄目なんだ。



 膝をしたたかに打ちつけた結は、足を引きずる様にしてゆっくり歩いている。僕はそれを支えながら同じようにゆっくり歩く。

 結は少し頭が冷えたのか、先ほどよりもやや落ち着いた感じだった。それでも、まだまだ色々な所を見て回りたい、あーちゃんどっかに連れて行って、とねだってきた。僕もそうしてやりたいのにはやまやまだったが、退院したての結を長い時間連れまわすのには気がひけたし、実際結も結構疲労が溜まっているはずだ。

「今日はこのくらいにして、制服を取りに行ったら帰ろう。結も、もう疲れたでしょ?」

「確かに、ちょっと疲れてきたけど……」

「どっちにしたって一日で行きたい所全部に行くのは無理だよ。また明日にしよう。明日はどこに行きたい?」

 こう尋ねると、結は一瞬無表情になってから、なんだか情けない顔をした。 

「ごめんね、あーちゃん。明日は、その、お父さんとお母さんと、久しぶりにお出かけするんだ」

 結は眉を下げたまま、精一杯笑っている。

 ――そう言えば、この表情久しぶりに見たな。結は両親の話をするとき、嬉しい様な、それでいて嬉しくない様な中途半端な顔をする。最近、結の両親について触れることが無かったから、この寂しい笑顔を見る機会も無かった。

「そっか」僕は出来るだけ、素っ気なく答える。「それなら仕方ないね。明後日は……リハビリだし、明々後日は学校の書類提出日だっけ。次に遊べるのはいつになるかなあ」

 僕は、結が、えー、やだ、そんなに後なの? とだだをこねるんじゃないかと期待した。けれども結は、なんだか年上のお姉さんのように少し寂しげに微笑んでから、そっかぁ仕方ないね、とつぶやいただけだった。

「そうだ、今度星を見に行こうよ。結、あんまり夜で歩いたこと無かっただろ? 星空、結も目が見えるようになってから何度も見ているだろうけど、そんなの比べ物にならないくらい綺麗に見える場所、僕知ってるんだ! いつがいい? 今夜でもいいんだけど」

 僕は、少し焦って早口でまくしたてた。滑舌の練習に用いる『外郎売』のセリフ回しもこんなに熱を込めて読んだことは無い。

「今夜はちょっと……。まだ、昼と夜の視覚の差に慣れていなくって、ちょっとずつ慣らしているんだけど……、その、ごめんね」

「……、そうだよね。ちょっと僕、先走っちゃったよ」

 あはは、笑って見せた。こんな暑くてじめじめした日なのに、どこまでも乾いた笑いだった。



 それから、僕と結はほとんど会話することもなく、制服を扱っている服屋へと向かった。たまにちらりと結の顔をのぞき見たけど、人形みたいに無表情で、何を考えているか分からなかった。いつもなら左側から伝わってくる結のぬくもりも、この外気の暑さにマスキングされてしまっている。僕らは二人で居るのに、ひとりひとりだった。周りを忙しなく歩いている群衆とおなじ、偶然居合わせた二人が、お互いに興味もなく、偶然に並行に歩いている、そんな気がした。


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