第二話 俺の友人の秘密。
俺の名前は生涯真摯。紳士的でちょっぴりシャイな人から好まれる良いお兄さんだ。
先日下半身と左腕(左腕は最近分かった。分かってしまった)がサイボーグ化されてしまったが、何とか世間から隠しとおせているし、ごく普通に生活できている。
これも常日頃自分の精神を強化していた賜物だろう。
今日の天気は快晴。
カーテンを開くと、サンサンとした朝日が窓ガラスから差し込み、俺の部屋を明るく照らしている。
俺の部屋は本棚とタンス、ベッド、小さな丸テーブルとテーブルと同じ材質の椅子。棚の上に置いてるテレビにその隣にゲーム機が一個と質素な部屋だが割と俺はエンジョイしている。
まあ、俺の生活事情なんて割とどうでもいい。
そんなことより今日は友人とカフェで待ち合わせをしているのだから、さっさと向かわなくてはな。
俺はすぐに出かける支度を済ませるとすぐに黒の中折れ帽を被り、黒の革靴を履いて外へ出た。
数分後。カフェテリアに早めに到着した俺は、外に設置されてあるテーブルに座り、ウェイトレスにコーヒーを注文したあと彼が来るのを待った。
「やあ、生涯。待たせてごめんよ」
俺の目の前に来て笑いながら謝罪してきた人物は、待ち合わせをしていた友人の『綺麗優』だ。
彼は太陽の光に反射してキラキラ光る金髪に海よりも深い碧色の目。肌は日焼けを一切感じさせない病的なまでの白で、女のような華奢な細い体。一つ一つのパーツが綺麗に作られた人形のようなイケメンである。
日本人では確実にありえないような容姿だが、確か彼は自分でどっかのヨーロッパの国のハーフの母親から生まれた子供が父の子供だと昔長ったらしく言っていたな。
「いや、俺も今さっき来たからそこまで待っていないよ」
「それは良かった」
「立ちながら話すのはキツイだろう、座ったらどうかな?」
「それもそうだね」
彼は俺に同意すると、俺と対面になる椅子へ座った。
「ところで生涯からお誘いがあるなんて珍しいじゃないか、何があったんだい?」
彼はにこやかに微笑みながら俺へ質問した。
基本的に俺はいつも綺麗から誘われる。
彼から頼みごとを聞いたりくだらないことを駄弁ったりするのだがいつものことだが、俺が誘うということはご近所でスズメバチの巣が発見されるぐらいの確率で珍しいのだ。
「綺麗、少しお前の知恵を貸してくれ。いや、本当に……」
「あ、あぁ」
「つい最近な、俺は大型トラックに轢かれて病院へ入院する事になったんだが……」
っと俺は暗い表情で話していると突然、可愛らしい女の子が歌っている携帯の着信音が鳴り、俺の会話は中断された。
ちなみに、この携帯の着信音は目の前に居る彼のモノだ。断じて俺では無い。
「あ、すまない。少し携帯に出るから席を外すよ」
「あぁ、分かった」
俺は、席を外してどこかへ去る彼を見送ると、注文したコーヒーが俺のテーブルに来たのでそれを飲みつつ彼が来るのを待つことにした。
十分後。
「待たせてすまない」
「飲み干したコーヒーの代金を奢ってくれるなら許してあげるよ」
「それはありがたいね、喜んで奢ってあげよう」
彼はそうノリに乗って言い、「HAHAHA」っとフランクに笑った。ここら辺の彼の仕草等は本当に外国人っぽい。
「それにしても彼女には困ったものだなぁ」
「彼女? 先程の電話の相手か?」
「そうそう」
「もしかして彼女かい?」
まあ、彼も俺と同じ二十一にもなるのだから、彼女の一人や二人は居るだろう。
そう思って聞いたが、彼は少し困ったような顔で乾いた笑いを発しながら答えた。
「ははは、違うよ。それに僕が彼女なんて出来ると思う? 無いよ」
その発想が無いよ。
何故彼女が出来ないのか不思議なくらいありえない。
絶対言い寄られてるだろ、お前。
顔良し性格良し、身体は……女っぽくて華奢だが、逆に中性的な感じで今時期だとかなり女子受けしやすいと思うのだがな。
「ちょっとした僕の友人で、仕事仲間なんだ」
「へぇ」
「彼女丁度近くに居るみたいだから、こっちに来るんだって。生涯にも紹介するよ」
「一体どんな子か楽しみだ」
「きっと一目見たら驚くよ……うん」
「ほぅ、そいつは期待だな」
一目見て驚くぐらいきっと美人なのだろうな。
数分後。
「黒ちゃんこんにちわ」
「ういっすー」
「頼むから嘘だと言ってくれ、特に神様」
何故よりにもよって前回の医者がまた登場するんだ! しかも、あいつ女の子だったのか!
それにしてもどうやってあいつは綺麗と知り合ったんだ? っていうか、いつ会ったんだ?
「どうだい、驚いただろ?(可愛いという意味で)」
「あ、あぁ……色々衝撃だったぜ……」
彼の言うとおり確かに驚かされた(悪い意味で)。
「おぉ! お前はあの時の患者では無いか!」
「えぇえぇそうですとも、あの時の患者ですよチクショウ」
「あれ、黒ちゃんと生涯はもしかして知り合い?」
綺麗がお互い話し合っているのを見て、少し驚いているようだ。
それはそうだろう、いつの間にか自分の知人と友人が知り合っていたらどのような経緯で知ったのか不思議でたまらないだろう。
俺もそうだったからな。
「うむ、わたしが事故って死にかけそうになっていた彼を助けた」
「あぁ、そういえばトラックに轢かれたって言っていたね」
「友人の危機に割と驚かないお前に俺は悲しみを覚える」
「大丈夫、生涯はダイ・○ードの主人公並に悪運が強いし身体もタフだから」
確かに俺は昔から若干人より身体が頑丈だが、心はガラスのハートだ。
少しは心配してくれても良いじゃないか! チクショウ、チクショウ!
まあ、思うだけで口にはしませんがね。
紳士はどんな状況でも表向き冷静で無くてはならないからな。
「ところでジョージア・ワシントンよ」
「うん?」
「ん?」
「大統領のお前に少し頼みたい事がある」
この子は一体何を言っているんだ?
ジョージア・ワシントンって確かアメリカの大統領だよな? え?
「最近奴らが活発化してうざい。特殊部隊貸して」
「ちょっと待て? 特殊部隊とか何の話をしているんだ? っというより黒……さん、ここにはジョージア・ワシントンとかいう大統領なんて高尚で高貴な人物は居ませんよ?」
「お前の目の前に居る」
そう言って、彼女はダルそうに綺麗のほうへ指をさした。
「ファァァァアアアアア!!?」