079 さらに食べごろ二人追加
「ドットレーに任せてきました」
「たくっしょうがねぇよな。何が見たいんだか?」
「多分その胸だと思いますよ」
更に二人入ってきた。ミシャラダとキスイだ。
ミシャラダは黒髪でキスイは赤毛だ。
ミシャラダは要点だけ掴めば巴の妹といえるが、顔立ちは西洋人のそれである。黒髪というよりブルネットというほうが近いか?
「大中小って感じだな」
キスイは大雑把な感想を述べた。当然、巴・ミシャラダ・ガレットという感じだ。髪以外に共通点は・・・控えめな胸か?
胸つながりで言えば、キスイは異端児だ。
単純にでかい。アリューシャも大きいがそれは、身体の線が細いのが原因だろう。キスイも巨大というよりも張り異常で、エース専用高機動型といえる。
ツンと上向きで、ボールが入っているように見える。
高機動型というのはよく動くのだ。
襟ぐりの広い服で前に屈んださいに、臍が見えたらしい。プレイヤーの中では伝説として語り継がれている。
ここで殆どの者に、胸のコンプレックスはある。巴は偽乳だ。
臍より見えちゃいけないものが見えてしまう。そんな失態は犯さない。
アリューシャはアリューシャで、そんな隙間は存在しない。
「巴さんはいいよね」巴は偽乳だ。
ミシャラダはそう言って溜息をついた。
「ふぅうん」
・・・トロイ・・・
「ところで質問。鶏と卵どっちが先に生まれたと思う?」
唐突にトロイが変なことを聞いた。
「チューリングテストのつもり?」
チューリングテストは人間のふりをした機械を判別するテストだ。
「だってさ。このゲーム産毛が生えてるよ。テクスチャなら摘めないしこんな事にもならないよ」
腕を湯船から出し逆なですると、濡れた産毛が鱗のように光る。
「どんなゲームエンジンだよって話。演算だけでラグるって」
「何で今になって?」
トロイの意見はお説ごもっともである。トロイは同人漫画を書いている腐女子だ。絵心と審美眼には一家言を持つ。信じられないアリューシャ達の美貌をに思わずガン見していると不思議に思う。
不可能だ。
AIというには人間くさ過ぎるし、どんなテクノロジーなのか?概念だけでも理解したい。そんな欲求に従ったまでだ。
そして、そのAIはどう認識しているのか?
マンガや何かであればこの時点で論理矛盾でエラーが発生する。では、チューリングテストで人間としか思えないと出たら・・・
中に役者がいようと勤務時間的な意味で不可能だ。
「鶏でしょ?神様がお作りになったのは卵じゃなかったはずです」
――進化論が存在しなかった。
ミシャラダの言葉にトロイは『もういいの忘れて・・・』と力なく答えた。
「でもさ。ゲームって言われても今一ピンと来ないんだよねぇ」
これを言ったのがキスイだ。
「どう言う事?」
「あたし等は普通に生きたんだ。人生をね。あたしは30くらいかな。戦争に参加して死んじゃった」
「キスイ!」とミシャラダが嗜める。
「いいだろ?隠し事は嫌いなんだ。隠す理由にも納得いかねぇし・・・」
「あ、あのキスイ様もぷれいやぁだったので?」ガレットが当然の疑問を投げかけた。
「んにゃ違うよ。ある日ガルドの声がしたんだ。協力してくれって。で、ガルドってああいう奴だろ?いいよって答えたら、ウエイトレスになってた」
キスイの言葉はトロイの想像を遥かに超えていた。自分だったらごめんだ。
「だから、エーアイ?と言われても・・・ちょっとした呪いを受けたような感じで、私達はほろん?と呼ばれる特殊な存在らしくて、同時に自分が何人も居るのはおかしな気分ですが・・・慣れましたよ」
胸に抱えたガレットの頭をなでながらアリューシャはそう答えた。
「そうなのですか?」
頭の上で?マークを大量に出しながらガレットはそう聞いた。
「そうよ。だから貴女の大好きな戮丸と次郎坊は同じ人なの」
「まじかよ!信じらんねぇ!」
「・・・うそだと言って下さいアリューシャ様」コレはミシャラダ。
「説明しづらいけど言うなら魂ね。状況に合わせて身体を着替えてるのよ」
衝撃の事実。ガレットはフルフルと震えている。数々の蛮行。次郎にはきつく口止めをしていたのに・・・
いわゆるひとつのバレテーラ。
「・・・あの、ガレットにはその記憶が無いの?」とトロイ。
「記憶と言うより経験自体が無いの。ガレットはこの世界で生まれた命よ」
言葉の意味を計りかねるガレットに代わってアリューシャが答えた。
「・・・命って・・・」
「ご期待に添えたでしょうか?私は私です。それ以上の何者でもない。納得いく人生を送って、ここで不思議な第二の人生を歩んでいます。私にわかるのはそこまでです」
そう言ってアリューシャは笑った。指先はガレットを弄ぶ、猫でも抱いているかのように。ガレットの表情でアリューシャはなかなかのテクがあることがわかる。
「そんなことより現状ね。ナハトは私が抑えます。悪い人ではないのよ」
ナハトはエルフ救済を謳って精霊雨を立ち上げた。最強種族エルフには重大な欠陥があった。必要経験値が他の種族・職業に対し異常にかかる点と、成長限界が低い点だ。人間の限界レベルは50に対し、エルフは25で打ち止め。ドワーフは40と他種族に比べ格段に弱い。当然、仲間から戦力外通告を受ける。ドワーフはまだ使えるが、エルフは話にならないのだ。
そんな、エルフを纏め上げ一勢力にまでのし上げたのがナハト・ムジークだ。
上級職に転じれば一律50になる。ただ、なれる者は限られている。その事で本人は転職を拒み続けたカリスマだ。
勢力的にはアリューシャとは敵対関係にある。後見人が敵対勢力なのだ。
「大丈夫?」
感情的にはそこまで敵対関係ではないらしい。ただ、仕事となれば利敵行為は出来ないといった感じだ。ガチガチにやり合ってるアリューシャにはその手口と人柄技量がわかる。皮肉な話だが信頼が置けると言ってもいい。
そして、ディクセンが陥っている窮状と、戦況分析【ディクセン猟友会】と名乗る集団に、集落が壊滅されていること。猟友会の切り札【クラウドジャイアント】と【アサルトドラゴン】。そして、その切り札が戮丸によって潰された。
猟友会は切り札を失い。暴走寸前の状態だ。見境無く集落を襲うだろう。
これに対して、大吟醸たちが【猟友会】に参加しようとしている。
そして、旅団・・・アリューシャほどの情報網を持たないがメクラと言う訳ではない。現状は把握しているはず、だが、その行動は不可解だ。
不愉快と言ってもいい。メンバーに情報封鎖を命じ、戮丸の行動を阻害した。シバルリ支援と名目に中級者をディクセンに集め、その面々をシバルリ駐留中の精鋭と交換した。
それを見逃したディクセンもディクセンだが、旅団の行動はどう見ても軍事行動だ。ディクセン封鎖もめくらましと取れる。
そして、暗躍するサンドクラウン。何か仕掛けているらしいが、旅団の不確かな動きに、サンドクラウンの無駄な動き。最も危険視したいダグワッツの動向が読めない。
「サンドクラウンは何を考えているのでしょう?」
「戦後の立ち位置を考慮した行動ね」
「銀のやろう・・・」
「多分彼は蚊帳の外ね。戮丸と戦おうっていうなら良い度胸ね」
「そんなに戮丸は凄いのですか?」
持ち主は自分の持ち物の評価が気になるようだ。
「良いですかガレット。貴女が言わずして騎士の正義はありません。私が敬愛する姫君は叫び続けました。国一番の騎士だと、その騎士がガルドです。彼はその言葉に答え全てを捻じ伏せて、国を作りました。それは蛮行です。しかし、姫がそれを望みました。それゆえに蛮行は正義になったのです」
アリューシャの言葉はガレットにはわからない。
「ガルドの戦いはガルドの物でした。ただ、人を守る為。不義は許せなかった。全てをなげうって戦いました。愛するものや人の死体を積み上げて、どんな汚名に臆する事無く。何度もくじけそうになったと聞きます。涙は涸れたと聞きます。彼の字に【庶民代表】というユニークなものがあります。それは庶民のために騎士と軍隊を相手に戦った一人の戦士に送られたもの。その優しさと強さを姫が誇ったからこそ彼は騎士でいられたのです」
「その彼をして絶対に敵わないと言わしめた騎士が居ます。その騎士にガルドが似ているというのです。ガルドはああ見えて誇り高い騎士です。・・・意味は判りますね」
「将軍のことだろ?どっちかっていうとガルドの旦那に似ていると思うんだけどね。戮丸は」
「二人は似てたじゃないですか。私もガルドの・・・隊長に旦那と呼ばれた頃のあの人に似ていると思いますけど・・・ガルドさんは将軍に負けてるじゃないですか。隊長あの時ガクガク震えてたんですよ」
「あーファルドも目が血走ってたな」
「戮丸はガルドには絶対勝てないって言ってたけど・・・」
「でも、必要なら何とかするでしょ?だって彼は戮丸で次郎坊なのですよ?ね」
アリューシャの言葉には妙な説得力があった。
あと残りは・・・陣営が多すぎてどう書いたいいものか?